第2話 伯爵家での生活。
正直、こんな長旅は初めて。
領から出たのも、、、お隣の領主様の結婚式に呼ばれたお父様にくっついてお出かけして以来かしら、、、、、
乗合馬車を乗り継いで、お手紙に書いてある住所にやっとの思いでたどり着くと、、、、大きな門、、、巨大な屋敷、、、
ここ?・・・・・なんかの間違いじゃないかしら?
お相手は、もんの凄く年上の、、、、多分、ロリ、、、いえ、幼い娘が好きなおじい様?と伺っております。父も母も泣いておりましたが、何より、私、学院で勉強できるというのが嬉しくてたまりません。自領にいる時は、何もかも諦めておりましたので。
おじいさまの残してくれたかび臭い書物は読みつくしてしまいましたし、教会で教えてくれることには新鮮さが何一つございませんでしたので。
「頼もう!!!」
門をたたくと、ヤギのようなおひげの執事さんが、走って迎えに来てくださいました。ヤギさん、と、心の中でつぶやきます。
「クリスティーナ様で?お迎えの馬車を出しておりましたのに、行き違いがあったようで、申し訳ございません。」
ヤギさんは、良い人みたいだ。
お直ししたおばあさまのドレスにも、少なすぎる荷物にも動じていないご様子。
「お疲れでございましょう、、、屋敷の案内などは、明日以降にするとして、、今日はお部屋でくつろがれてくださいね。食事も運ばせます。今日からここが、クリスティーナ様のお家でございますからね。」
そう言って、案内してくれた部屋は、、、薄いピンク色で可愛らしく飾り付けられたもんの凄く広い部屋、、、、ここ?私の住んでた自宅と同じくらいの広さがないかしら?
「クリスティーナ様付きの侍女のヒルデでございます。何なりと。」
侍女のヒルデさんは、礼儀正しい。
黒髪を肩先で揃えて、緑色の綺麗な瞳。侍女服がお似合いです。と、いうか、、凄くいい仕立ての侍女服ですね?
ヒルデさんは、、、隙が無い、黒猫、って感じでしょうか?うふふっ。
「まず、お風呂に入って、ゆっくりされませんか?着替えはこちらでご用意させていただきました。」
衣装室????ヒルデさんが開けた扉の先はお風呂なのかと思ったら、、、全てお洋服!靴まで?、、、帽子、小物、、、、びっくりですね!
こうして、私のワルス伯爵家での生活が始まりました。
*****
「は?なんだって?」
「はい。婚約者のクリスティーナ様が本日ご到着でございます。大旦那様に言われて整えておきました、若の隣の部屋に入られました。本日はお疲れでしょうから、ゆっくりしていただいております。ご挨拶は、明日に。」
「は?」
「条件はすべて満たしていらっしゃるということです。嫁いでくる条件は、学院に通う事と、クリスティーナ様の父上の領の援助だったそうです。
派閥には入っていない、社交にも疎い、経済援助は受けておらず、大変な状況だったと大旦那様からお伺いしております。」
「え?」
「若の理想の嫁が見つかって、本当に良かった、と、たいそう御喜びでございました。婚約の書類はもう王城で承諾を頂いております。詳しくはベルノに書類を渡してありますので、ご確認くださいませ。おめでとうございます。」
綺麗にお辞儀をして執事長のアヒムがにっこり笑う。
執務室でベルノから貰った書類には、僕とその令嬢との婚約の承認印が、、、、
「ベルノは会ったの?」
その子の関係書類に目を通しながら聞く。
ゲルト子爵家?どこにあるんだろう?聞いたことないな、、、、
「はい。お部屋に入られるときに、少し。地味な、、、いえ、、、清楚な?身なりをされておられました。」
歳は、、、15?僕は、、、23になるんだけど?ま、、、いいか、、、
「アヒムにきちんとしたお辞儀をしておられましたので、礼儀作法は大丈夫そうですね。」
帳簿の写しをめくる、、、、
いや、、、しかし、、、この経営状態で、よく領地運営してきたな、、、3年続けて不作か、、、免税を受けているな、、、南部なあ、、そう、あの辺一帯は雨が少なくて、厳しかったみたいだな。母親は平民か?
「母親は、イルセル侯爵家の出らしいですよ?家の決めた相手との結婚式前日に失踪して、貴族籍は除籍されています。生家との付き合いも、連絡もとってないです。名前も変えております。子爵とは学院時代の同級生だったみたいです。調べました。」
は?
「条件を提示いたしましたところ、ご本人が即答だったらしいです。若との結婚は、クリスティーナ様が16歳になったらすぐに、ということでした。学院入学後になりますかね?」
まあ、、、どうせ書類上の結婚だ。結婚式もする気はない。子供を作る気もない。
まあそれで父上の気が済むなら、無駄な時間が取られなくていい。
ただ、、、父上の思ったようになるとは限らないけどね。