第15話 あと1年5か月。
春の舞踏会。
去年はあまりの人の多さに酔ってしまいましたが、今回は2回目です。頑張ります。
相変わらず、お父様とお母様に挟まってお出かけです。お母様が作って下さったドレスは、今回は少し大人っぽいです。こう、、胸元が開いていて、、、似合いますでしょうか?
つつがなく終わりたいです。
前回は、目が覚めたら、自分のベットでした。
イルデ様と飲んだシャンパンに酔ったみたいです。ヒルデさんが担いでかえってくれたんですよね?、、、気を付けますね。
「強いお酒で酔わせて、お持ち帰りされてしまう女の子もいるのよ?ヒルデがいたからいいようなものの、、、、そうならないためにも、少しづつ慣らしましょう。」
お母様と、晩御飯の時に、少しワインを飲むようになったので、今回は負けません。
ご挨拶が一通り終わると、ダンスが始まる。
今日、最も注目を浴びているのは当然、挙式間近の王太子殿下とイルデ様。
黒髪の王太子殿下と、銀色の髪のイルデ様、、、、いいなあ、、、幸せそうで。
くるくると回る、、、オルゴールの王子様とお姫様みたいね、、、きれい、、、
「なあに?また旦那さんは仕事なわけ?クリスティーナ?」
「え?ああ、イルデ様、おめでとうございます。お祝いは何がよろしいですか?」
ひと段落した頃、お声を掛けていただきました。
「あ、、あら、、さらっとかわしたわね?ま、いいわ。そうねえ、、、この前の、おやゆび姫と王子様、可愛らしかったわ。あのシリーズのベットカバーなんてどうかしら?」
「え???可愛らしすぎませんか?」
「あはは、、、私たち、そのくらい小さい頃から、婚約者やっているのよ、実は。いろいろ勢力問題があって、公にはしなかったけど。」
「まあ!!!幼なじみ婚!!良いですねえ!!」
「・・・・で?あなたは、、、どうなの?」
「どう、とは?」
「いや、、、、ほら、、、旦那さんとさあ、、、エリックの仕事が忙しいせいでうまくいかないんじゃないか、って、心配してるわよ?」
「あ、、、ご心配いただき、ありがとうございます。尊敬しておりますよ?優しい方です。
あの方の帳簿を見ると、、、例えば、褒賞金とかもらうでしょ?そうすると、半分を自分で。残りの半分を使用人の方に臨時給与で配るんです。側近はもちろんですが、下働きの女中さんや馬のお世話係の人まで。この前も、何かの報奨金を頂いたらしく、私にまで。うふふっ、、良い人でしょ?」
「・・・・まあ、、、あなたがいいならね、、、」
給仕さんを呼んで、シャンパンを頂く。今回は負けませんから!!
「では、改めまして、おめでとうございます、イルデ様。」
「ありがとう。」
シャンパンをちびちび飲みながら、二人で隅っこでお話していると、、、ご令嬢が一人、近づいてきた。
これまた、、、髪がピンクがかって、ドレスも淡いピンク、、、小柄な、守ってあげたい感じの、、、そう!小動物系?
・・・でも、物凄くお酒臭い。手には赤ワイン。少し、顔色が悪い?
「イルデ様?でいらっしゃいますか?」
「ええ。」
「あの、、、どうしても私、、、あなたにお伝えしなければならないことがあって、、、」
「そう?まず、名乗りなさい。」
「ジラ伯爵家のカトリーヌと申します。、、、、実は、、、私のお腹に王太子殿下とのお子がおりまして、、、、」
あ、、、、あら?これは修羅場の予感?
「・・・こんなこと、申し上げにくいんですが、、、私たち、愛し合っているんです、、、お二人のご結婚は政治的なものだと理解しております。この子を産むのをお許しいただけますか?イルデ様だけに、お伝えしておこうかと思いまして、、、」
「「・・・・は?」」
「殿下にはまだお伝えしていないんです。ひっそりと一人で産んで、一人で育てていこうと思っております。ただ、、、あなたには、、、愛する殿下との間にできた子供の存在を、、、、」
「そう?じゃあ、そうしたら?」
「「え??」」
「私生児を産む話でしょ?誰の子だかわからないから、一人で育てる、って話。」
「イ、、、、イルデ様?」
カトリーヌと名乗った女性は、なんだか大げさに泣き出すし、、、
「あ、、あの、、この方、具合が悪いようですので、、、」
と、側にいた執事さんに頼んで、空いている休憩室に案内するよう言うと、王室用の休憩室に通してくれた。イルデ様は椅子に座わり、脚を組むと、、
「ああ、エリック殿下をお呼びしてくださる?」
修羅場、、、、ですね?
呼びに行った執事さんと一緒に、間もなく王太子殿下がいらした。
「どうしたんだい?イルデ?具合が悪いのかい?」
入ってきた殿下は、ピンクのご令嬢のことも、もちろん私のことも、全く目に入っていないよう。慌ててイルデ様に駆け寄りました。跪いて、手を握っている、、、あら。
「エリック?このお嬢さんがね、あなたの子供がお腹にいるから産みたいらしいわよ?私、席を外す?あんたたちで話し合ったら?」
「は?」
「もし、本当のことだったら、約束が違うからこの婚約は破棄ね。
でもね、、もし、嘘だったら、、、解ってる?カトリーヌさん?あなたの家から慰謝料を取れるだけ取るからね?あなた、、、、ジラ伯爵家の養女?後妻?娘じゃないわよね?自分が言ったことの事の大きさがわかってる?決して、、、酔っぱらっていう事じゃないのよ?相手は、、、王族よ?え?」
「本当に、エリック様とのお子です!!!」
「え?そもそも、僕はこのお嬢さんと面識がないんだけど?」
ピンク、、、顔が必死だわねえ、、、、本当なのかしら??
「仮面舞踏会で、愛し合ったじゃないですか!!!あの時のカリーですわ!!殿下は、何度も何度も私を求めて下さって、、、、、、」
仮面舞踏会???離れの女中さんが貸してくださった恋愛小説に出てきましたわ!!本当に開催されてるの???どこで???逆に驚きだわ!!!!
「どう思います?クリスティーナ?」
イルデ様は通常運転みたいだ。冷静だわ。
「え?、、、そうですね、まずお医者様をお呼びしましょう。子供がいるかどうか見て頂いて、お話はそれからですね。ただ、、、お腹に大事な方とのお子がいらっしゃるのに、こんなに離れていてもお酒臭いほどお酒をお飲みになるのは、どうかと思います。ご自制くださいね。」
ピンクのお嬢さんは、息まいていたが、少しおとなしくなった。子供、大事だもんね?通り越して、、、、少し青ざめている?大丈夫かしら?
先ほどの執事さんが、王城の医師と、イルデ様のご両親と、、、、なんと、国王陛下までお連れして戻ってきた。休憩室はかなりの広さだが、、、、ある意味、、息苦しい、、、
「では、、、失礼して、、、」
ピンクのお嬢さんをベットに横たえて、何個か質問をしてから、医師が診察を始めた、、、、