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第13話 あと1年8か月。

「まず、お父様を尊敬しております。お母様の斜めに構えた着眼点も尊敬しております。あのお二方は、愛し合っておられます。そして確かに、私はあのお二人に可愛がってもらっております。それは否定いたしませんわ。」


「へえええ、、、、それで?」


カエルはふんぞり返っている。お腹のベストがはじけそう。旦那様とは違って、、、なんか、見苦しいわねえ、、、旦那様はかわいいのにね。何が違うのかしら?


「まず、私が伯爵家に入って、、、、ここ30年分の帳簿を見せて頂きました。


お父様が伯爵家をお継ぎになった頃は、領地は羊を飼い、小麦の栽培をし、まあ、普通の、ごくごく普通の領地でした。

お父様は多分、爵位を得る少し前ぐらいに、お母様にお会いになったのでしょう。公爵家の御令嬢でした。正直、娶っても今まで通りの生活は送らせてあげられない状況でした。というか、、、お嫁に欲しいと公爵家に言いだせる状況ではありませんでした。歴史はありますが、、、、財力の点で。


そこで、お父様は領地の改革に出ます。羊の数を増やし、牧場を広げ、羊毛を出荷していたのを見直して、加工まで手掛けます。この頃、領地は担保に入っておりました。大変な賭けです。下手をしたら、領地も爵位も失うほどの。

糸を作り、織物まで領内で出来るようにし、借金を払いながらも3年でめどを立てました。時間がなかったんですねえ、、、、お母様が結婚適齢期だったので。」


一気に話して、紅茶を飲む。はあ、、、

カエルさんは、、、びっくり眼だ。


「ようやく、念願かなってお母様を迎えましたが、なにせ、使う金額が桁違いでした。細々と暮らしていたお父様は覚悟していたとはいえ、資金が回らなくなります。かといって、領民に重税を課したりしないところが尊敬するところです。

領民を雇い入れ、公社方式にして、さらに牧場を広げます。並行して、自家での織物を出荷する傍ら、自領で製品化も始めます。縫製工場を作り、ここでも領民を雇っています。そして、、、、」


「そして?」


「あまりの忙しさに走り回っていたお父様は、お母様との不仲説が社交界で流れていることなど、まったく気づかなかったのです。だって、、、愛ゆえでしたから。

お母様も良く存じ上げていらして、、、、寂しい思いはしたようですが、社交に出て、お父様の製品の宣伝をされていたようです。そうやって、出来上がったんです。ワルス家の歴史。」


「へえ、、、《《お父様》》、に聞いたのかい?」


「いえ。帳簿に書いてありましたので。数字は正直ですから。」


「・・・・・」


「では、家に来て良いと許可も頂きましたので、明日からでもお邪魔しても?」


げっ、と、背後で声がする。ウィリーさん、つぶれたカエルみたいな声ねえ、、、うふふっ、、


「え?な、、、何をしに?」


カエルの侯爵様は引き気味でいらっしゃいますね。


「いつも通り流通させているとおっしゃいましたよね?でも、届くべきところに届いていない。その不思議を確認に。見せられないような帳簿なんですか?」


「は?、、、、、いや、うちの財務方はしっかりしているから。不正はない。」


「では、よろしいじゃございませんか。では、明日から。」



:::::


うちに来て良いよ、、、ってのは、全く意味が違う気がしたが、、、まあ、確かに言った。次の日からクリスは港町にあるゲルマー商会に通い詰めた。


アカデミアはレポートで単位を取るらしい。


こいつ、、、思い込んだら一直線だな、、、もちろん、俺とルルも来ている。もう一人、、、クリスの旦那の秘書のベルノ、ってのが駆り出されてきた。見慣れない男が若奥様に同行していたのが気に入らないのか、ぶっきらぼうだ。ルルに愚痴をこぼしている。小声だが、、、聞こえるぞ?


「なあ、ヒルデ、、なんでこの人も一緒なわけ?意味わかんないんだけど。」

「成り行き?」

「は?どんな成り行きだよ?相変わらず、、、胡散臭そうに見えるね、、、」

「・・・そうね、、、それは否定しない。」


まあ、、、いい。旅は道連れ?みたいな?面白そうだし。

仕事が入っていない時は付いてきた。


クリスとベルノで、黙々と帳簿を確認していく。

何年の、裏付けを見せて、とか、、、これの元帳を持ってきて、とか、、、先方さんの財務方もたじたじだ。

だいたい、、、、公的な監査も入るんだから、そうそう不正が見つかるもんじゃない。


丸一か月かけて、10年分見たらしい。


「それで?何が見えた?お嬢さん?」


「何度も言いますが、私は結婚しておりますので、お嬢さんではないんですよ?」


と、笑いながらクリスが話し出した。


「まず、、、かなりきちんと商売をなさっておりますね。《《おりましたね》》、が、正解ですか。3年前から、デル男爵家に資金援助なさっていますね。それで、、、そこの娘さんを息子さんの婚約者に?」

「いや、私の後妻だ。」

「ああ、そうでございましたか。、、、大層大事にされていらっしゃるようで、、、お金は使いたい放題みたいですね。ドレスの購入額がハンパないですね。しかも、赤いドレスがお好きなようで。赤が大好きな方ですね?」

「ああ、、赤が似合うんだ。金は私の財布からだ。文句は言われないぞ。」

「そう、侯爵殿の財布から出た分は、何の問題もございませんでした。たいへん大きな金額ですが。問題は、、、、その頃から並行して息子さんの出費も大きいんですよね?ご存じでしたか?」

「あれは、うちの跡取りだ。それなりの金は持たせている。当然だろう?」


「では、、、次です。」

「・・・・・」


「侯爵殿がおっしゃった通り、入ってきた絹製品は、きちんと納入先に納品されておりました。受け取りのサインもございました。」

「そうだろう?」

「取引先は、10年間でほとんど変わりません。扱い量の変化はもちろんありますが。」

「ああ、、そうだな。」

「違和感がございましたので、全ての受け取りサインを確認いたしました。」

「は?」

「3年前から、、、残念ですが、そっくりなサインが出てきます。それは少しづつ多くなりまして、、、昨年分はほぼ半分が、、、偽造されたサインでした。」

「は?どういうことだ?」


「これは、私の憶測ですが、、、横流し?でしょうね。」

「は?だれが?何のために?いや、、しかし、、、入金はされているぞ?」

「そう、、、きちんと卸値で入金されています。しかし、物はない。卸値を戻しても利益が出るとしたら?あなたなら、、、どこに売りますか?」


「ま、、、、、待て、、、、いや、、、まさか、、、、」


「ご子息の隣国への出国状況を調べさせていただきました。船便が着いて、1週間ほどすると、出国されております。領地からは近いですからね、、、」

「いや、、、近くないぞ?」

「ああ、失礼しました。デル男爵家の領から、ですね。」

「はあ?」

「そうして、、、ここをご覧ください。何度も、ルビーの裸石の加工を依頼されています。ちなみに、、、、ルビーを購入された記録はございません。つまり、、、」

「・・・・つまり?」

「ご子息はせっせと絹製品の横流しをし、隣国へ無許可の輸出、あの国は華国と交易をしておりませんので、さぞや高く売れることでしょう。そして、商会には卸値を入金し、差額で隣国でルビーを買い求め、せっせと、、、、赤の好きな方に貢いだのでしょうね。」


「・・・・え?いや、、、どこまで行っても、お前の憶測だろう?」


「いえ。帳簿に書いてございますので。数字は正直です。嘘で塗り固めようとしても、ですね?」








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