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第12話 あと1年9か月。

年が明ける頃、、、驚くぐらい絹糸の値段が上がった。倍。いや、倍以上。少しづつ上がってはいたが、、、


少し遅れて、木綿糸も値上がりした。まあ、絹糸が買えなかったらそうなるわよね?


「どうしましょうか?クリスさん、、、」


羊っぽい取りまとめ役のアンナさんが、困り顔で聞く。

ある程度は買いだめはしてあるので、刺繍糸はあと1か月くらいは持つと思われるが、、、

「困りましたわね、、、、」


小間物屋の御主人に交渉してみたけど、そもそも流通量が減っているみたい。


「じゃあ、私、卸問屋に出掛けて聞いてまいりますね。」


ヒルデさんが不安がって、お隣のウィリーさんを用心棒?にすべく、叩き起こしてきたみたいです。今日のウィリーさんは明るいはちみつ色の髪。見てて飽きませんね。

叩き起こされて、少し機嫌が悪いようです。すみません、、、


卸問屋さんの住所を聞いて3人で出掛けると、門が閉まっています。多分、、私たちと同じ考えの方たちが集まって、門をたたいております。困りましたね、、、

ここは、王都中心に主に絹糸や絹の反物などを大きく扱う問屋さんらしいですね。


しばらく様子を見て見ると、関係者らしい人が出て来ました。


「本当に、在庫そのものがもう無いんです。そもそも、発注していた分が入ってこないんです。」


取り囲んだ人たちは、小間物屋の御主人と同じく、お店をやっていたり、仕立て屋さんだったり、、、生活に直結する方々、、、

今回は特に、流通量が減ったことに過剰に反応した方々が、買い占めに走ったのも、要因の一つのようですが、、、入ってこない、と言われると、、、、困りましたね?


「我が国での絹製品の輸入の窓口は、ゲルマー商会です。こんな言い方はいかがかと思いますが、、、勇気がある方は、ゲルマー商会に掛け合ってみてください。」


そこまで言うと、係の人が引っ込んでしまった。

先ほどまで威勢よく騒ぎ立てていた人たちが、一人、また一人と帰って行く。


「?あらまあ、じゃあ、行ってみましょうか、その、ゲルマー商会。どこにあるのかしら?」

ヒルデに話しかけていると、帰り足の商人が、驚いた顔で言う。


「やめておけ。相手は、御貴族様だ。しかも、侯爵様だぞ?俺たち平民が物申したら、殺されても文句は言えない。無理だなあ、、、相手が悪い。」

「まあ、、、、そうでしたの!」

「ああ、ゲルト侯爵っていう金持ち爺さんだ。華国からの荷の窓口になっててな、、、強欲でケチだが、商売は固くやってたから、、、何か理由があるんだろうけど。」

「なるほど。」


良質な絹糸や絹織物は、華国から船便で届く。

その、窓口の商会かあ、、、、


「じゃあ、、まず、行ってみましょうか?」

「お前!今の話聞いてた?相手は侯爵家だってよ?どうする気だ?」

「いえ、、どうもこうも、、、お話を聞いてみないと解りませんよね?行きましょ?」

「は?」

口をあんぐりと開けるウィリーさん、、、、かわいいですね、、、猫が変な匂いを嗅いだ時、あんな顔をしますね。うふふっ、、



:::::


お父様に頼んで、お父様のお名前で面会を申し出るお手紙を出して頂きました。

出掛けるのは、また3人ですがね。

今日は、きちんとした装いで、ヒルデも黒のいつもの侍女服。ウィリーさんには侍従の制服を着ていただき、、、、この方、そのようなお洋服もお持ちなようで、、、驚きましたが、、、

お父様の馬車もお借りして、いざ、出陣でございますわ。


王都を東に向かった、港の近くにゲルマー商会はあるみたいです。船便を管理するから、なるほど、港の近くは理にかなっておりますね。


「頼もう!」


背筋を伸ばして、有無を言わせず開門させました。


ワルス伯爵家は、伯爵位ではございますが、歴史と王族からの信頼があり、、、まあ、大概の無理は利くから、と、お父様がおっしゃっておりましたが、本当に、すんなりとゲルト侯爵ご本人とお会いすることが出来ました。


商談用の豪奢な応接室に通され、とんでもなく高価そうな茶器に、香りの高い華国の紅茶、、、、本当に聞いてはきましたが《《使うタイプ》》のお金持ちですね。


「それで、、今日はどんなご用件で?」


侯爵様は、、、、なんと言うか、大きなカエルの様な方でした。なんでしたっけ?ヒキガエル?


「まあ、急な申出にご対応、ありがとうございます。」


折角ですので、紅茶を頂きます。美味しいですね。

侯爵様ののどがなった気がしましたが、、、、まあ、、、お飲みになられればいいのに、、


「わたくし、父上の商売とは別に、自分で商売をしておりましてね?」

「はあ、、、」


前のめりで、、、少し怖いですよ?

先ほどから、、、頭の先から足先までねっちょり見られているのも、少し不快です。


「この度の絹糸の高騰に少し困っておりますの。何か、、、理由がおありなんでしょう?華国の蚕の病気?それにより華国での生産自体が滞っている?船が沈没?それとも、海賊に襲われた?」


にっこり笑って、私の手に、、、、手を重ねてきた。背中にヒルデの殺気を感じます。


「商人の皆様にお伺いいたしましたら、貴殿は手堅いご商売をされる方だと、、、なにか、大変な事情がおありなのかと思いまして、、、、それから、申し訳ございませんが、私、結婚しておりますので、この手は困りますわ、、、」


「商品はいつも通り流通させているよ?どこかの仲卸が値を上げようとして出し惜しみしてんじゃないの?ん?」


・・・・乗せられた手をテーブルにたたきつける。軽くですよ?

私の左手の指輪は目に入りませんでしたかね?


「ほほお、、、要は、あなたの商売用に、絹糸や絹製品を優遇しろ、ってことですかね?あなたのお願いなら、、、、聞いてあげてもいいなあ、、、、」


「いえ。違います。」


「あなたのお噂は聞きましたよ?旦那さんに相手にされなくて、なんと義理の父親と、、、むふふ、、、出来てるんでしょ?社交界では有名な話になっていますよ?なかなか、、、したたかなお嬢さんの様だねえ、、、」


「いえ。違います。」


「ほおお、、、否定できる材料をお持ちで?何なら、、、うちに来てもよろしいですよ?かわいがって差し上げますから。」


そうそう、、、おやゆび姫をかどわかそうとしていたカエルが、、、こんな感じでしたねえ、、、、次は、、、おとぎ話シリーズ、もいいかもですね。


「では、その噂を否定いたしますね。」








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