第1話 旅立ちの日。
私は子爵家令嬢。と、言っても、自領はどん底貧乏だった。
これといった産業もなく、細々と農作物を作っている領民、、度重なる天候不順による不作、、、、、税金を上げるわけにもいかず、私たち家族は自らも畑を耕し、、、、自給自足。不作による国からの救済金は、小麦と薪を買って、領民に配ってしまったし。
ドレス?おばあさまのドレスをお直しして、、、刺しゅうを入れたり、替え襟を付けたり、フリルをあしらったり、、、
社交界?ってなんですか?
弟がまだ小さいので、何とかしたかったのですが、、、、もう、領地を返上して、平民になったほうが自由が利くのでは?と。経済的に余裕のある方がこの領地を治めて下されば、領民は助かるのでは?、、、真面目に家族会議をしていた時に、そのお手紙が届きました。
私を嫁に???
しかも、領地の再建のお手伝いと、、、、私を学院に出してくださるの???
「行きます。」
何か?、、、躊躇することがありますでしょうか?
そうして私は王都に向かって旅に出ました。いや、すみません、嫁に行くことにしました。
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「またか!ウィル!何が気に入らない!」
僕の執務室で、父が仁王立ちになっている。机の上に、あふれんばかりのご令嬢方の絵姿がぶちまけられる。
「聞いてやろう。お前はどんな女だったら結婚するんだ?好いた女が庶民なのか?その女をどっかの家の養女にしてから貰ってもいいんだぞ?方法なんかいくらでもある。跡取りさえ作れればいいんだ!この、歴史あるワルス家を終わらせる気か?」
跡取りさえ、、、、ねえ、、、
そうやって、愛のかけらもない結婚をして、家庭を顧みず、、母親は子離れできず、、、それこそ、養子でも取って跡を継がせたほうがよほどいいんじゃない?
「そうですねえ、、、父上、、、僕の仕事柄、どこの派閥にも入っていない、どこからも資金援助を受けていない、ここ20年くらいは社交から遠ざかっている、、、そんな家門の娘がいれば、いいですよ?結婚でも何でもしましょう。子供ができるかどうかは、神のみぞ知る、ですがね?」
「は?」
「いますかねえ、、、しかも、僕のこの容姿ですよ?先方からお断りされることもありますよね?」
書類に視線を戻す。毎回毎回、、、戯言を聞いている暇はない。
連れて来れるなら、連れて来てみろ。