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そのよん 正しい武器の選び方。しょきゅうへん。

「おっちゃーーーーん!」

「なんじゃらほーーーい!」


 ばちこんっ!

 店に飛び込んだ冒険者あるるむ人形に店のおっちゃんあるるむ人形がカウンターを仕掛けます。


「げふぅっ!?」

「ハリセンこそ至上の武器なりっ!?」


 いや、それを結論にされても困りますから。

 さて、武器を語り始めると超大作になってしまいますので、今回は初級冒険者にオススメする武器の選び方というところで。


「かいしんのいちげきっ!」

「痛いわボケぇっ!

 って、それよりも武器おくれー」


 月をバックに俳句でも語りだしそうなおっちゃんに冒険者がばんばんと机を叩きます。


「武器?

 ぉうぃぇい。うちは武器屋だった。

 で、何が欲しい」

「強い武器っ!」

「おーけー。じゃあこのグレートハルバード(120kg)を」

「持てるかぁっ!」


 おっちゃん持ってますけどね。


「じゃあ、お前何が使えるんにゃよ?」

「知るかー」

「知れよっ!」


 どがんとグレートハルバード(120kg)が机を真っ二つにします。

 確かに強力です。


「ひぃぃ?!」

「で?

 何が使えるんにゃよ?」

「武器なんか持った事無いです」


 及び腰で言う冒険者におっちゃんはやれやれとアメリカンな肩の竦め方をします。


「シロウトか」

「未来の英雄といえー」

「だが、断るっ!」


 断られました。

 言葉ですら一刀両断を貫きます。


「というか、ぺーぺーが偉そうにゃよ?」

「教えてください。

 お願いします」


 凄まじい速度で土下座したので逆におっちゃん引きます。


「ぉぅ。

 んじゃいい武器を紹介しよう」


 そう言ってくるりと後ろの道具箱を漁ります。


「ほい。ロングスピア」

「……箱から?」

「気にしちゃ負けにゃよ」


 ほいと渡します。


「ってか槍?」

「うん、槍。

 初心者向け」

「剣じゃなく?」

「冒険者でしょ?」

「でも槍なんて滅多に使ってるのいないじゃん」

「そりゃどこの英雄譚限定にゃよ」



 さて、ファンタジー世界の冒険者はモンスターと戦う事が前提となる場合が多いです。

 その主人公格は大抵剣を持っていますが、実は冒険者には余りオススメできない武器です。。

 理由は簡単。

 剣とは人と戦うために特化された武器です。

 殺し合いを前提に作られたその武器はまさしく『武器』。

 ですが、それ故に冒険者にオススメできません。

 続きを見てみましょう。



「槍カッコワルイ」

「カッコワルイかどうかはともかく。

 お前さん。

 剣は剣技を使えないとすぐに手首を傷めるぞ?」

「えー?」


 もちろん冒険者LV.0にそんな技能はありません。


「そりゃそうにゃよ。

 なにしろ『刃』で綺麗に打たねばならん。

 これがずれるとあっさり滑って剣の重さで手首を捻るにゃ。

 その点、槍は相手に向かって突き出すだけにゃ。

 単純明快」

「むぅむぅ」

「それに、槍はリーチが長い。

 懐に入り込まないとならない剣より安全にゃ」

「むぅむぅむぅ」

「それに、長い棒ってのは色々使えるにゃよ」

「イロイロ?」

「うむ。

 例えば高い木の上に生った木の実を採る時。

 それから魚を採る時。

 臨時の干し竿にもなるにゃ」

「えー?」


 冒険者、とっても不満げです。


「食料なんてある程度自給しないと冒険なんてやってられないにゃよ。

 それに雨に降られたりしてぬれたままで居ると体温を奪われて最悪凍死しかねないにゃ。

 魚も手で捕まえるのは至難の技にゃしね」

「うーん。でも、槍ヤダ。

 他にないの?」

「んじゃこれだな」


 おっちゃんは振り返って道具箱からバトルアクスを取り出します。


「……箱?」

「だから気にしちゃだめにゃ」


 どんと斧が床に突き刺さります。


「で、何で斧?」

「木を切れるし、これで池の石をぶったたけば魚も獲れるにゃ」

「戦闘はっ!?」

「一撃必殺」


 確かにこんなもん当たった日にはそのままずどんです。

 ただ、当たるかどうかはかなーり謎です。


「にゃーーー。

 戦闘っ!

 あいあむふぁいたー。

 戦闘で活躍したいっ!」

「んじゃ。

 これだな」


 そういいながら出てきたのはメイスです。


「……ダサっ!?」

「これは戦闘用だぞ?」

「えー?」

「んじゃ、そろそろ解説な」




 さて、おっちゃんが紹介した3つの武器は実用的な面から言って実際かなりオススメな武器です。

 更に言えば、これにナイフが加わります。

 理由はおっちゃんが言ったとおりですが、まず他の局面での利用価値があることです。

 冒険をする身では必需品の形態を疎かにできない反面、可能な限り荷物を軽くする必要があります。

 重ければそれだけ疲れますし、走って逃げなければならない局面もあるでしょう。

 そういう意味でも、多種に渡る局面で利用できる物はとても重要なのです。

 また、もう一つ中世ヨーロッパを機軸にしたファンタジー世界では剣をオススメできない理由があります。

 それは金属鎧の存在です。

 こういった世界での剣は斬る武器ではありません。

 ぶっ叩く武器なのです。

 かつて剣は斬る武器でした。

 しかし金属鎧の発達により、斬るどころか刃こぼれを起こすわ、折れるわという宿命に陥った剣は2つの道を歩みます。

 刺すか、叩くか、です。

 刺すの代表例はエペやレイピアです。

 これは鎧の間に差し込み、貫く武器で刀身は限りなく細身となっています。

 必然的に横からの衝撃に弱く、扱い慣れていない者が扱えばあっという間に折れてしまいます。

 コンバットナイフについても同じ分類と言えます。こちらについては手の腱や指先、喉を狙う武器となります。

 一方で刃が通らないならその上からぶっ叩くのを選んだのがロングソードやバスタードソード、クレイモアと言った大型刀剣です。

 馬上武器ですがランスについても金属鎧の上からド突いて落とすための武器になっています。

 重量級の刀剣は型を知らないまま振り回せば隙も大きく、またおっちゃんの言うとおり刃が綺麗に入らないとダメージを著しく減じてしまいます。

 最後にメイスを紹介したのは打撃武器こそ一番的確にダメージを与える武器だからです。

 何処に当たってもその強烈な振動は敵を揺るがすでしょう。



「というわけだ」

「むーん。

 理由はわかったけどー」

「別に剣が使いたきゃ止めやしないけどな。

 それならしっかり下半身と手首を鍛えることにゃね」

「あー、他にないのー?」

「んー、後はクロスボウくらいかにゃぁ」

「弓?」

「弓とは別のくくりにゃね。

 なにしろ弓は剣以上に難しいし」

「そなの?」

「初めて使うとほっぺた抉れたり、掌えぐったりするにゃ」


 弓は引き方を知らないと大変な事になるので、遊びで弓を引いてみるのはやめましょう。


「ひぃぃ」

「その点クロスボウはハンドル回して弦を引いた後、矢を乗っけて狙いを定めるだけだがな」

「おー。

 でも時間かかる?」

「そりゃ仕方ない」

「あ、そっか。

 最初っから引いて用意して2~3個持っておけば」

「そんな事したら弦が伸びきって撃てなくなるにゃよ」


 たまーにそんな事しようとする人が居ますが、できませんのであしからず。


「それに、射撃武器って静止目標に当てるのはわりかし練習すればできるけど、動いてるのに当てるのは何十倍も難しいにゃ。

 味方に当たる可能性もあるしね」

「むむむー」

「というわけで、それでも剣を使いたいならしっかり練習。

 しっくりくるまでは槍とか使ったほうがマシにゃよ?」

「んじゃ槍くださいなー」

「へいまいどー」




 ゲームではそこまで厳密に扱っていませんが。

 ロールプレイをする遊びではそういう所に拘ってみるのはいかがでしょうか。

 間違ってもバスタードソードで林檎の皮は剥けませんのであしからずw


「あれー? 最強武器の説明はしなくていいにゃ?」

「最強?」

「ハリセン」

「いらんわっ!」


 ばちこん。


おしまいししまい。

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