麺類みな兄弟
カップヌードルが言った。
「麺類みな兄弟! 世界中の麺よ、仲良くやろう」
ラーメンがうなずいた。
タンメンがチャーメンと肩を並べて万歳をした。
スパゲッティが平和の歌をうたいだす。
うどんはしこを踏むと土俵入りした。
「人間どもは肌の色や生まれた国などといったつまらぬことを理由に差別をする。しかし我々麺類は愚かな人類とは違う! みんな仲間だ! 仲良くやろう!」
「でっ……、でも……。私なんかもお仲間に加えていただいて……よろしいのでしょうか?」
自信なさげにおずおずと、そう言い出したのは、和蕎麦だった。
「私なんか、色も黒いし……。皆さん小麦粉から生まれてらっしゃるのに……私だけ生まれが蕎麦粉だなんて……なんだか申し訳ない」
「いいんだよ」
にっこり笑い、他の麺類が和蕎麦の肩を次々と優しく叩いた。
「君も麺類だよ」
「色は黒っぽいけど、立派な麺類さ」
「中にはほぼ小麦粉みたいな君の仲間も多いじゃないか」
ほっとして笑顔になった和蕎麦の隣から、糸こんにゃくと春雨とところてんが心配そうに聞く。
「ぼ……、ぼくたちは……?」
「君たちも兄弟だ」
カップヌードルがあかるく笑った。
「君たちを麺類と思わない消費者も多いが、僕らは立派な兄弟だと思ってるよ。だって細長くて、ちゅるるってしてるじゃないか」
「あのう……。では、僕たちも、兄弟ですよね?」
後ろのほうから手を挙げてそう聞いたのは、ビーフンとベトナムフォーだった。
カップヌードルは彼らを厳しい目で睨みつけると、言い切った。
「貴様らを麺類とは認めぬッ! 米粉より作られし貴様らはむしろ我らの敵ッ!」
他の麺類たちも声を荒らげて口々に言う。
「米は炊かれて白米になっとけ!」
「リゾットが麺類か!? 違うだろう!?」
「オートミールのほうがおまえらに比べたらよっぽど麺類だと思うわ!」
「米粉、帰れ!」
「かーえーれ! かーえーれ!」
ビーフンとベトナムフォーは思い知った。
『麺類みな兄弟』だなんて、口先だけの嘘だ。綺麗事だ。
米粉だったら何がいけないというんだ。盛岡冷麺も韓国冷麺も見た目は似たようなもんじゃないか。
そう思ったが、黙っていた。
マイノリティーは弱いものなのだ。