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神々の無責任な後始末  作者: compo
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マグロ

今、私の目の前にはなんとマグロが一尾ある。

私が万能さんから取り寄せたものではない。だって大きさとフォルムが丸々クロマグロなのに角があるんだもん。


味と食感はそのままマグロですよ

角は雄だけにある雌争いの武器として発達したものですね

地球のマグロとは別進化を遂げているだけで

毒性も全くありません


そうですか。

万能さんが言うならそうなんでしょう。


このマグロは通りがかりのメサイヤさんが配達してくれたものです。


「そもそもメサイヤは幻の霊獣様であり、そうそう通りがかったりしないものですわ。」


我が家にはその幻の存在がゴロゴロしてますけどね。そう言う姫さんの膝で1人寝てるし。

大体このマグロだって、姫さんがメサイヤちゃんにねだったからあるんです。

レシピとクッキング番組にかぶりつきになる毎晩ですからね。

…もう少しお手柔らかにお願いしたいんですけど。


そうか、メサイヤちゃん達と交易出来れば海産物が容易に入手出来るな。

森の中故、タンパク質・炭水化物は農業・養殖とキクスイ経由しか無いと思っていたけど。


「トールさんがまた悪巧みを考えてる。」

うるさいミズーリ。

私達がこの地を去る時に、森の土塁が取れるとは限らないからなぁ。

万能力を持ったまま国家百年の計を考えるのは楽しい。シミュレーションゲームそのまんまだからね。あとは男女比をなんとかしないとね。

「女の人を森に呼んでも、またお嫁さんが増えるだけじゃないかな。」 

うるさいミズーリ。


声にびっくりして気絶した王子さんは結局医務室に運び込まれて行きました。

カピタンさんだってアレ別に打ち込んでないもん。コツンと当てたら気絶するとか、虚弱体質過ぎるだろうこの世界。


で、今日は司令部跡を解体して(半地下って建物は不健康過ぎて見るのも嫌なのですよ)道場とジムに作り替える予定を立てていたんですが。

マグロ。角付きマグロ。

先ずこれをなんとかせんとね。冷蔵庫に入らないし。 


そう言えば、昔うちの親父が釣りに行って、ボラを一尾仕留めてきちゃったから、大幅な献立変更を迫られたお袋がパニクった事があったなぁ。

でも、急遽作ったボラの味噌煮は美味かった。

あのくらいの主婦力があるお嫁さんが欲しいところだ。

「が、頑張りますわ。」

「任せさない。」

「(な、なんとか)」

何ですか君達。


「よっこらさ。」

さすがにマグロは重たい。普段の食卓を解体台に代用したけど乗せるのも一苦労だ。


「全然苦労してないじゃない。」

そりゃ、ちょっと重力操作しましたから。


「今更ながら、旦那様って…」

はいそこの帝国第四皇女、引かない引かない。

冷凍ではないから出刃包丁で充分ですね。

頭と尻尾を切り落とします。

たんたん。

あれ?柔い?

「「「柔くない!」」」

頭も尻尾も美味しいけど、どうしようかな。

うん、専用の冷凍庫を作ろう。


万能さんが血抜きをしてくれたので、こっちはそのまんま冷凍庫にGO!

おう、瞬時に凍ってる。

ワタは酒と味醂を加えて塩辛にすると、冷蔵庫の熟成庫行きに。これはツリーさんとの晩酌のアテです。

残りはしっかりと炒めてチビのご飯ですかね。え?メサイヤちゃん達も食べたいの?

主食にしてる蒲鉾と言い、メサイヤちゃんは魚好きか。

というか、チビと並んでメサイヤちゃん達がお座りしてんだけど。

…だから、何で姫さんが正座し始めるの?

ミズーリやツリーさんまで。

「ワン!ですわ。」

君らノリが良過ぎ。


出刃包丁を背中からお腹からガッツリと差し込むと、ツーって背骨に沿って走らせます。

普通はゴリゴリ言うんだろうけど、何せ私なので。鯵や鰯のような小魚を下ろすと言うよりも、ペーパーナイフでDMを開封する感じだね。

カマ、トロ、赤身を切り分けると必要な分は冷蔵庫、余りを冷凍庫にぶち込み骨から身をガリガリと削ぎ落とします。


今日は紫蘇とガリとおろし生わさびをたっぷり添えた中落ち丼と、肝のお吸い物のお昼としましょうかね。

玄米茶を万能さんから取り寄せときましょう。

あと、端っこの余り部分は角切りにして味醂醤油で漬けにするとして、骨はどうすっかなぁ。我が家って基本的に生ゴミって出さないからなあ。始末に困るぞ。

高温油で揚げて骨煎餅とか作れるかなぁ。


少し硬いと思いますが メサイヤ達にはご馳走になるでしょう


ふむ。メサイヤちゃん達食べる?

…メサイヤちゃん全員に埋もれました。包丁持ったままだから危ないって。


因みに塩を振ったり醤油で味付けした骨煎餅は姫さんのお気に入りになり、チビやメサイヤちゃん達と取り合いを始めるのでした。 


「チビちゃんこれは辛いから。身体に良くないの。あゝもうあゝもう!ガルルルル。」

もう姫なんだか犬なんだか。

「私は常に旦那様の犬ですから。」

うるさいミク。

「まあ、やっと私の名前を呼んで下さいましたね。」

姫さんがなんかタフになっている件について。

「うふふ、うふふ、うふふ、うふふ。」

怖い怖い怖い怖い。

「私が本当にサイコっちゃう前に美味しく頂いて下さいましね。今が女として一番美味しい旬でございますから。ほうら、この白い肌弾力性ぴちぴちですわよ。」

ミズーリさん、助けてください。


ミズーリさんが助けてくれました。

「そろそろ手を出しなさいとは言わないけど、しばらくミクを独占して良いわよ。サリーやアリスまで増えて少し寂しがってたみたいね。」


普通の人間が私達と一緒にいる事は、結構精神的に負担になるのかな。


「それもあるけど、女だもん。好きな男を独り占めしたいんでしょ。なんなら私とツリーは隣でメサイヤと寝るけど?」

いや、それをやったら君達が居ない事に寂しがる娘だよ。姫さんは。

「甘えん坊よね。」

そんな妹が可愛くて仕方ないんでしょ?

「分かる?困ったものよね。私もいつからこんな甘っちょろい女神に落ちぶれたんだか。」

君は最初から甘っちょろい優しい女神でしたけどね。

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