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神々の無責任な後始末  作者: compo
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目が覚めたら

気がついた時はベッドに寝かされていた。

衛生兵と思しき白衣を来た女性が、薬品の整理をしている姿が見えた。

僕が意識を取り戻した事に気がついたアリス騎士がすかさず声をかけて来た。


「殿下。大丈夫ですか?ご自分のお名前言えますか?」

「あ、ああ。大丈夫だ。…情け無い事だ。王族とあろう者が大恥を晒したらしい。」

「いえ、私も失神していたようです。殿下の護衛として失格です。」


「おお、目を覚まされましたな、」

離れたところに腰掛けていた男性が話しかけて来た。

「自分はこの駐屯地の武官筆頭のカピタンであります。タイミング悪い事に丁度扉から出て来たところを見られてしまったようで。…森の兵には当たり前の事ですが、他国の方にはショックでしたか。」

「あの?あの扉はなんですか?」

「あの先には閣下様方のお屋敷があります。…お屋敷と言っても華美なものではなく、ご家族が過ごされる分には充分過ぎるものでして。むしろ、閣下に作って頂いた官舎の方が余程豪華で戸惑っている次第で。」

「閣下というのは、あの飛行船で空を飛ぶ方ですか?」

「さようでございます。例え今殿下が休まれているそのベッド。それも閣下から下賜して頂いたものでして、なんでも“すぷりんぐ"と言うものを導入して寝心地を改善しているものだそうです。」

「…確かに。私は王宮でもこんな柔らかいベッドに寝ていない。」

「それを兵や軍族、その家族全員に下賜したのが我らが閣下です。この駐屯地の最高司令官たるミク・フォーリナー皇女様はいち早く閣下に降伏し事実上の輿入れをされている訳です。」 


「降伏?」


「はい、当初我々に課せられた命令は閣下と御同行のお嬢さんを拉致・殺害せよと言うものでした。しかし初陣の作戦部隊は壊滅、すぐさま第二陣として2千の兵を投入するもほぼ全滅。数少ない生き残りが、陣を率いたミク閣下でした。あの方は恐ろしい方なんです。

翌日、全軍で攻勢をかけましたが、(BBQに負けて)全面降伏に至りました。以降我々は閣下の軍門に降り、その分閣下がもたらしてくれる快適な生活を謳歌しております。」


「何と言うか、私が知る以上の傑物の様ですね。私の共をしてくれているアリスもどうやら閣下様に助けて頂いた事があるようです。」

「まだご本人様にお会い出来ていないので、ご本人かどうかもわからないのですが、私はキクスイで鬼に襲われ必死に逃げ回っていたところを助けて頂いています。またお会い出来るのでは?と殿下の護衛に立候補したわけですが。…情け無い。」

「まぁ、明朝お会い出来る様に先程お約束を取り付けて参りましたから、本日は軍の施設でお休みください。」


「ミク様にご挨拶は出来ないのでしょうか?私はキクスイ王家の使いとしての役割がありまして。」

「先程殿下到着を伝えに行きましたが、姫さまに、筍の灰汁取りで忙しいと言われて断られました。」

「はあ?一国の姫様が料理をしているんですか?しかも筍の灰汁取り?(アリスさん筍の灰汁取りってなんですか?)」

「筍というものは知りませんが、ものを煮込むと灰汁と言われる苦味が出ます。なので常に火の元にいて灰汁を掬い続けねばなりません。」

「そんな事を何故皇女様が?」

「ご本人の希望です。残念ながら閣下が規格外過ぎて帝国皇女なんか何の肩書きにもならない、と仰いまして。ならば1人の女として尽くしたい、との仰せです。掃除もしているらしく、掃除道具をねだっておりました。」

「私もお会いした時間は短いのですが、その時間は私と恐らく今後のキクスイには多大な影響を及ぼす方だとお見受けしました。…会いたいなあ。」

「まあまあ。一晩お休みになれば会えますから。突然な事で引越しもあって大した料理はお出し出来ませんが、閣下のお知り合いとなればカレーとかはいかがですか?」

「「カレー!」」

悲鳴の様な主従の声が室内に響き渡った。


姫さんが湯掻いた筍で筍ごはん・筍とネギのお味噌汁、豆腐ステーキ、杏仁豆腐で晩御飯にします。


土佐煮をツリーさんが拵えミズーリが混ぜて、姫さんがおっかなびっくり豆腐をステーキにして私が作った挽肉あんをかけてる間におさんどん姫さんがお味噌汁の味見に余念なく。

いつの間にやら食事は家族全員の仕事になってます。

盛り付けをしている間に、姫さんがチビ、馬くん、メサイヤちゃんにご飯をあげにいく。

割烹着姿なので、何ともまあ所帯じみた皇女様に成り果てましてね。


で、入浴を終わらせて今は就寝前のリラックスタイムです。


それにしても、パーテーションで玄関から区切ってからこっち、風呂上がりに誰も隠さなくなってるな。

脱衣場はあるし、デカイ鏡に籐椅子、ドライヤーに体重計と一通り揃えてあるのに

みんなとりあえず冷蔵庫から冷たいものを出してから髪を乾かしに戻る始末だ。


…脱衣場にも冷蔵庫置こうかしら。


「脱衣場にあっても、みんなシンクの冷蔵庫まで出てくるわよ。トールさんが脱衣場に入ればみんな大人しく脱衣場で着ると思う。」

いや、そうなったらずっと着ない未来しか見えません。いつから我が家は裸族に占拠されたんですか?

「…私も割と裸族だったから最初から?」

そうでしたね。


裸族Aこと、森の精霊は「10万馬力」のロボットが大活躍する漫画をチビを抱き枕に読んでます。

裸族Cこと帝国第四皇女は、料理レシピのDVDをメモ片手に見入っています。


「筍とお豆腐の献立を教えて下さいまし。」

と強請られたので、万能さんから色々取り寄せたら、魚料理に目が行ってしまいマグロの解体に興味を示してるし。

やらされるんだろうなぁ、いずれ。


で、裸族Bこと死と転生を司る女神は私と一緒にカリキュラムを考案中。

少しずつ兵の家族が戻ってきているので、元駐屯地の荷物がなくなり次第、解体して馬車倉庫及び学校を作ろうと計画しているわけです。


キクスイの王子が来たと、カピタンさんが急報をくれました(何故か気絶してるそうです。飛行船が飛んでるとこ見せたのになぁ)

王家との繋がりがあるから、専用の建物でも作ろうかな、と言ったら。

「私がここにいるのだから、ここが迎賓館ですわ!」

と、割烹着姿の姫さんが談話室に乱入してきてカピタンさんを驚かしていたので、それはそれで。

それは兎も角、菜箸を振り回すんじゃありません。


なんにせよ、明日も賑やかな一日になりそうです。

私が、そろそろ寝ますよ。って声を掛けるまで、パジャマ姿のミズーリは私の書記を務め、いつのまにかスケスケネグリジェを私の知らないうちに万能さんから取り寄せた姫さんはモニターの前で鼻息を荒くして、ツリーさんはチビによっかかって寝てるので、チビが咥えて私の元に届けてくれる。

そんないつもの夜も更けてきましたね。

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