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神々の無責任な後始末  作者: compo
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王子

「これは…。」


僕はキクスイ王国第一王子ミカエル。

父(王)の命を受け、王都に来ていた帝国の商人と共に東部方面軍駐屯地に向かっている。

キクスイの共は騎士のミライズ・アリスさん。

大臣の元に集約された情報の中に、「あの」人と思われる縁を見つけたので急遽王都に呼び寄せて共を頼んだ。


その縁とは、「カレー」。


あの料理をまた食べたい。そう思い、国内で食べられるか探していたところ、同じ様に探しているアリス騎士を知った訳だ。

「二十代半ばくらいの誠実そうな男性と、まだ10代初めくらいの綺麗な少女。私が鬼に追われ逃げ込んだ小屋にいた方々です。

彼らなら、帝国の姫君をかしづくくらい容易に出来るでしょう。何しろ私に取り憑いた鬼を退治てくれた方ですから。」


鬼を倒した?まさか?でもあの方ならば。


私も彼らに会いたい。


父から親善大使の話が出た時は嬉しかった。

大臣は継承権第一位の王子が他国に出向く事を良しとはしなかったが、父上が王家の人間として見識を深める場と思ったそうだ。

その申し込みを、王都と通商に来ている商人に信書として渡そうとしているところで立候補した。

本人が直接頼みに行く事で、僕達の本気が伝わる。恐らくは迷惑に思われるだろうけど、あの人は喜んで迎え入れてくれる。


そんな確信が何故か僕にはあった。


キクスイと帝国の間には、高山とは言わないがそれなりに険しい山脈が横たわっている。

でも、あの方達は空を飛んで、軽々とその障害を飛び越えた。

だけど、僕達は昔ながらの山越えをしなければならない。

そう思っていたのに、僕の目の前にあるものは、綺麗な水が側溝に流れて壁や天井が白く光るトンネルだった。


「殿下。騎士様。安全の為にちょっと馬車から降りて頂けますか?」


商人の指示に従い僕達は馬車から降りる。

僕達が乗ってきた馬車には車輪が8つ付いている事に今気がついた。

地面に置かれた鉄の棒に車輪を乗せると、僕達はまた乗車を許される。

その間、馬達は側溝を流れる綺麗な水で喉を潤していた。

帝国、いや森の基地から供給される水は美味しい。それは、復興作業に追われる王都の民の共通認識だった。だから僕もすくって飲んでみた。アリス騎士が少し慌てたが、商人達も当たり前に飲んでいる。

美味しい。あの水だった。


そこから先は早かった。

馬車とは思えない速度でトンネルを駆け抜けていく。なのに揺れる事もなく、また馬も決して無理をしている様子もなく、まさに鼻唄交じりで飛ばしていく。


「鉄道馬車という乗り物です。摩擦係数が何とか、私達にゃよくわからない仕組みで、通常の馬車より早く馬も疲労しないで走れる我が軍の主要な乗り物です。」

「これはひょっとしてあの人が?」

「うちの姫さまが嫁入りした先の旦那が作ってくれたモノです。今では森の中を縦横に走っています。」


やはりあの方だ。

あの方は「考える」って事を教えてくれた。

「当たり前」が何故当たり前なのか「考え」れば、新しい文明と文化に繋がると教えてくれた。


ただの旅人だと名乗ったとの、アリス騎士の話では何故帝国にいるのかわからないけど、帝国でも自分の考えを形にしているんだ。

是非是非、私は大使として役割を全うし、出来れば帝国に駐留してあの方に教えを請いたい。

顔がにやけ出していたが、アリス騎士は咎めようとはしなかった。

何故なら彼女の顔もまた、会ってから初めて見る楽しそうな顔を隠そうとしなかったからだ。


あっという間にトンネルを駆け抜けると、そこは森のな、か?なのかな。

いや、森の中なんだけど、地震前の王都貴族街より高く立派な建物が並んでいる。 


夕陽が空を染めているから森の中は暗い筈なのに、道の両側には長い棒が立ち並び、その天辺で火が燃えて森の中を照らしている。

いや、火では無いな。何故なら白いし瞬かない。これもまたあの方なのか?


「これは…」

商人が絶句していた。

昨日の朝、駐屯地を出立した時とは景色が全く違うらしい。


「また閣下か。」

また、らしい。


この森の主街道らしい通りには馬車鉄道とは別にもう一本、鉄の道が敷かれていて、当地の兵がギッタンバッコンと手摺を交互に押し落とすだけで進む、何かが大量の荷車を引いている。

馬車では不可能な量の荷物をたった2人で移動させている。あり得ない。

これもあの方の「考え」なのだろうか?


やがて馬車は一つの建物の前で止まった。

半地下の背の低い建物だった。


「ここがうちの司令部。…だったんだが。」

「人気ありませんね。」

「おいおい。」

商人が通りがかりの兵に話かける。

「こりゃ一体何がどうなってんだ?」

「おや、これは少尉。お疲れ様です。」

「お、おう。」

そっか、ここにいる人全員軍人だった。

「例によって姫さまの旦那さんの仕業だよ。少し戻ったところに広場があるだろ。あそこが新しい軍司令部だ。そこに行けば新しい部屋割りがわかるから、早いとこ引越しを済ませておいた方がいいよ。どうも此処も建物を壊して何かを建てるみたいだし。」

「あのお方はちょっと目を離すと何始めるか分からんな。」

「でもさ、ハズレはないよ。新しい部屋に行ってみな。既に引越した兵は全員驚き終わった。もうこんな小屋で暮らせないよ。」

「だろうね。」


「あ、あの?」

「失礼しました殿下。私も少し混乱しておりまして、まさか一日経ったら街が出来ているとか考えも及びませんで。」

「いや、私達も充分に混乱しています。見た事もないものしか、この森には有りませんから。一番わからないのがアレです。」

僕が指差した先には、一枚の扉だけが立っていた。

「あゝ、アレは

商人少尉が説明をしようとした、まさにその時。扉が開いて1人の軍人が出てきた。

え?なんで?

僕とアリス騎士は卒倒した。

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