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神々の無責任な後始末  作者: compo
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旅立ち

「朝ごはんは食べなくて良いのか?」

「良いんじゃ。一応用事があっての南下だから、一晩泊まるのも少しイレギュラーなんじゃよ。」


早朝、まだ日が昇る前にサリーさんは飛び立ちました。

因みに娘達はまだ寝ています。個人の起きたいと言う意志にはベッドは反応しますし、主たる私にも伝わるのです。


「これを持って行きなさい。」

サリーさんへのお弁当にあらかじめ作っておいた我が家特性石窯パンです。

中身はアンパン、クリームパン、ピーナッツバターパン。日持ちする菓子パンばかり。

菓子パンはカロリーが高いから、旅のお弁当には最適なんです。

捨てて良いからと、適当に作ったアルミ水筒に砂糖たっぷりのミルクティーを入れて肩掛け鞄を渡しました。


「…我が主様…」


サリーさんは私をぎゅっと抱きしめると、人の唇を強引に奪われた。

(この世界に来て初めてのちゅーだった)

「また逢おうぞ。」

そう言うと、彼女はまた光り輝き始めた。

「儂の初めては全部我が主に捧げてよう。とりあえず我が初めての接吻を捧げたぞ。次逢う時は我が処女を捧げるによって、我が主様は皇女でよく鍛えておくが良かろう。あれは良き“ほと“の持ち主じゃぞ。」


とんでもない爆弾発言をしやがったが、高笑いを残して幻の神獣姿に戻ったサリーさんはまだ薄暗い南の空に消えていった。

さらば我がメサイヤ。

また、逢おう。いってらっしゃい。


サリーさんが去った後、今日の準備・新官舎の概要を頭で考えながら朝ごはんを作ります。

薄力粉とドライイースト・胡麻油と塩で練った皮を沢山作り、餡に豚肉・餡子を詰めて

肉まん・あんまんを1人2個ずつ。更に焼売も蒸籠で蒸して3段式に。

あとはおかわり分を蒸籠の外に積み上げておきます。

食べたいならご自由に。

烏龍茶はホット・アイスの両方を準備して、さて昨夜の続きをしますかね。

コーヒーを新しく淹れ終える頃、やっと森の鳥達が囀り始めます。

たまには早起きして、1人の時間を楽しむのも良いですね。


「おはようございます旦那様。あれ?サリーさんは?」


今朝一番は姫さんでした。

彼女ならばもう、旅立ちましたよ。

私達との交流の為に一晩泊まりましたけど、彼女には彼女の用事がありますから。


「そうですか。きちんとお見送りしたかったのに、残念です。」


彼女も少し後ろ髪を引かれる想いだったみたいですね。私がきちんとお見送りしてあるから、彼女が帰ってきたら「おかえり」を必ず言うんですよ。


「勿論ですわ、旦那様。最初少し怖かったのですが、あんなに気持ちの良いお方とは、お話ししてやっと気が付きましたの。また、お話したいですわ。絶対に。」


大丈夫ですよ。彼女はもう、私達の家族ですから。

朝ごはんが出来てますから、みんな顔を洗ってらっしゃい。チビ、ちゃんとみんなを洗面所まで連れて行って下さい。

「ワン」(任された)

娘達は3人並んで洗面所に消えて行った。

大欠伸を3人同時にしながら。


「てんしん♪やむちゃ♪うーろんちゃ♪。」

ミズーリが謎の歌を歌いながら、あんまんにかぶりついてます。

姫さんは肉まんと肉焼売に辛子をつけすぎて、涙を流しながら辛子をつける事を止めません。この娘、割と辛味が大好きな様で、

「んーんー。辛いですわ痛いですわ。」

と言いながら、真っ黄色になるまで辛子をつけている。

ツリーさんは、アレの真似はしないように。

「(辛子は植物由来の香辛料、大丈夫!)」

あゝあゝ、自分の腕より大きくつけちゃって。

「(!!¿¿¿¿!!)」

ハイハイ、冷たい烏龍茶を飲みなさい。


「朝から点心というのも、たまにはいいわね。」

辛子酢や辛子醤油を適度につけて楽しんでいたミズーリはご機嫌ですが。

「痛いの。痛いの。」

「(痛いの痛いの)」


床で悶えている君達はなんですか。

帝国皇女たる者が、人にお尻を突き出してヘコヘコしてるんじゃありません!

特にツリーさん。見事なタラコ唇になってますが、君マンガ?


「(強調してみました)」


この子はどんどん人間ぽくなっていくなあ。


今日の予定は新官舎の建設。

予定地はツリーさんと相談の上、キクスイへのトンネルへ繋げたアスファルト道の両側にRC構造4階建(エレベーターが無いので、このくらいまででしょう)のワンルーム及びファミリー向け3LDKマンションをずらりと並べます。

長い団地帯のほぼ中間点には、司令部となる建物と厨房を建て、単線だった森林鉄道は複線化して、更にトロッコを増設。

馬がいなくとも人力で移動が可能になります。


今ある半地下の駐屯地は、引っ越し完了後、解体して馬車の車庫や武器庫として再利用。

生えていた木は、植生に問題がない場所をツリーさんと検討の上移動。

これを、馬くんの引く馬車で現地を確認しながら地図に書き込みます。


これで、今晩深夜に勝手に団地がニョキニョキ生えてくる訳です。筍みたいに。

そういえば、筍の水煮が無くなったな。

今日の午後は暇だけど、筍は朝じゃないと美味しくないからなぁ。


「RC構造マンションって、昨日の牛飼い小屋と一緒で、うちより立派なんですけど。」


その文句は昨日姫さんからも聞きました。

普段は何処で暮らしているのかわからないツリーさん以外の2人から文句を言われるとは。

 

「なら直しますか?1人一部屋で、冷暖房と厨房、風呂トイレ完備に。」

『それは嫌』

何も3人声を揃えて否定する事ないのに。

どうしたいんですか?


「んー。いずれサリーも一緒に住むんでしょ。少し拡げた方が良いと思うの。」

「馬さんの馬房室も欲しいですわ。」


それはまぁそうですけど。君達の部屋は要らないんですか?

『要らない』


そうですか。今更ながらプライベートをね

「私と旦那様の間にプライベートもないですわ。」

「むしろ、私達のプライベートを見なさい。プライベートなところを見なさい。隠さないから。」


いや、ミズーリ?隠すべき所は隠しなさい。

「ほれほれ。」

いくら馬車の中とはいえ脱がないの。

「惚れ惚れ。」

しません。

「掘れ掘れ。」

姫さん?貴女何言ってるかわかります?

「覚悟の上ですわ。」

あのねぇ。

「(何か私もふざけないと)」

あゝ、私の心の安寧の、森の精霊が、馬鹿女神と馬鹿皇女に毒されていく…。

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