また1人とんでもさん
「ちょっと目を離すと閣下はまた女を引き込んで、ぶつぶつ。さっさと姫閣下をだね。」
夕方、報告に来たカピタンさんがぶつぶつ私を非難して来た。
まるで私が女好きみたいな事を言う。
「だーんーなーさーまー。違うとは言わせませんわ。」
いや、私から口説いた女性も手を出した女性も皆無なんだけど。そんなジト目はしないで。
「大体、この方はどちらの方なんですか?この森の中は一応、軍の所有地でしてね。知らない人においそれとうろちょろされて良い場所ではないのですが。」
あ、カピタンさんもジト目だ。
男のジト目は可愛くないなぁ。
あー。この人、軍とか色々超越しちゃってる人だから。
サリーさん、人間大で元の姿になって下さい。
「え?儂にそんな事出来るの?」
出来ます。(ね、万能さん)
「元の姿とは?」
変わらずジト目のカピタンさん。だから可愛く無いって。
「ほれ。」
部屋の中が一瞬白い光で包まれた後は、金色の霊獣の姿があった。
僅か2回で随分と慣れた様だ。
「………………。姫さま?私にはメサイヤ様に見えるのだけれども、気のせいかな。疲れているのかな?」
「カピタン将軍。旦那様の新しい寵妾ですわ。メサイヤ様が空を飛んでいるところを、旦那様が口説き落としましたの。」
こらこら。とんでもない事を言い出さないで下さい。
「如何にも、儂は伝説の霊獣メサイヤが1人。我が主にサリーという名を賜った、我が主の愛人の1人じゃ。」
メサイヤ姿で喋らないの。空気が振動して窓ガラスがうるさいから。
ほら、カピタンさんが困っている。
「困っているのは、閣下に対してです。森の精霊と共に暮らすだけでも歴史上あり得ない奇跡だというのに、まさか伝説の霊獣様って。
目撃例すら記録の向こう側という、童話の中の存在がああああ。」
カピタンさん?壊れた?
「姫さま!何をやっているのです!早く、早く閣下と、閣下とお!」
「気にするでない。我が主は心が広い殿方じゃ。皆、均等に可愛がり、皆、均等に胤を授けてくれようぞ。一番後発の儂の身体が一番大人じゃから、このおっぱいが細やかな皇女には、儂が孕む前に早く孕めと唆している最中じゃ。」
「た、頼みますぞ閣下。姫さまは私達の大切な娘です。ミズーリ様という正妻がいらっしゃる事も、森の精霊と共に生きられている事も、そして今、幻の霊獣が閣下の寝所に加わられた事も今更もう驚きません。ですから、どうか姫を姫を。」
君達は私をなんだと思っているんですか?
「そういえばミズーリ様のお姿が見えませんが?」
ほら、ベッドに寝てますよ。
知らない内にお酒一瓶盗み呑みしたまま、寝っぱなしです。
あの酔っ払いが。
「だーれが酔っ払いよ。」
あ、起きてる。眠い目を擦りながら上半身をベッドから起こした。
そういえば、我が家は玄関からプライバシーが丸見えだなぁ。報告を受ける専用の応接室でも増築しようかな。
「あれ?何でメサイヤがいるの?」
このへっぽこは、寝呆けていて、あの騒ぎを全く知らない様だ。
「(かくかくしかじか)」
ツリーさんが成り行きを報告してる。
「は、メサイヤが1人。サリーと申します我が王妃。」
「私、王妃?」
「私、姫なのに?」
「帝国皇妃といえど、森の精霊といえど、そしてメサイヤといえど、我が主の妻なら王妃じゃ。というか、こんな方を妻に娶られている我が主こそ何者じゃ?」
「旦那様は旦那様です。今更正体を詮索しても、どうせ多分理解が追いつきません。この森を守って、美味しいご飯をご馳走してくれて、時々私達を可愛がって頂ければ誰でも何でも良いです。」
「何で起きたら我が家で修羅場が始まっているの?」
「ヒソヒソ、カピタンさん、地図上のこの部分に牧場と牛飼いの宿舎を作っておきました。イリスさんが帰隊したら案内して下さい。」
「ヒソヒソ、よろしいのですか。何やら奥方様達が揉めてますが。」
「ヒソヒソ、私は独身ですよ。何やら人外の人が集まってきてますが。」
「ヒソヒソ、ひょっとして閣下って苦労なされているのですか?」
「ヒソヒソ、姫さんも誰も彼も皆んな拾ったら、勝手に着いて来ちゃったんです。」
「ヒソヒソ、普通、帝国皇女だの、森の精霊だの、幻の霊獣だのは捨て猫みたいに道に落ちていないものですが。」
「ヒソヒソ、ミズーリは鬼の前で土下座してたし、姫さんは木に引っかかってたし、ツリーさんは勝手についてきたし、サリーは呼んだら降ってきた。」
「ヒソヒソ、閣下って女難の相でも出ているんですか?」
「ヒソヒソ、かも知れない。」
ヒソヒソ。カピタンさんと報告を交わし、
家族を迎える兵が本日出発した事、イリス将軍の帰隊が明後日になる事などを知りました。ヒソヒソ。
「全くさぁ。今更トールさんの嫁集めはトールさんの趣味だから否定しないけどさぁ。」
いや、全力で否定しますよ。
「集めた嫁にはちゃんと餌を与えなさいよね。とうとう子種目的の女の子まで引き寄せてるし。このハーレム男が!」
そのハーレム男とやらは、先程まで帝国皇女閣下の親を自認する帝国軍将軍様に、つくづくと同情されてましたけど。
「まあまあ我が王妃よ。儂も、そこなる帝国皇女も森の精霊も自分から勝手についてきたんじゃ。我が主をそう攻めるでない。それよりもじゃ。皇女に聞いたところ、正妻たるミズーリ殿がまだ我が主と交わっていないそのな。相違ないかな。」
「…そうよ。私の身体が幼いからと手をつけてくれないのよ!私はいつでも待っているのに!」
話がおかしな方向に流れ出した!どうしよう。
「だからじゃ!我が主。ここは一つ今夜にでも夫婦和合となり、その後は儂ら寵姫達と爛れた淫靡な夜をば…。」
「却下。」
「何故じゃ。儂が言うのもなんだが、皆見目麗しい乙女達じゃぞ。これだけ上玉な乙女を散らす男なぞ王たる王にしか出来ん至高の楽園じゃぞ。」
乙女と言い繕っているが、要はアレだろ。
というか、君らが発情してるだけじゃないか。ほら、ツリーさんも真っ赤になって頷かない。




