ピザ
姫さんに続けとミズーリとツリーさんにのしかかれられて、蛙みたいな声をゲコゲコ上げながら脳内検索をフル回転させて、ケーキから逆算した献立を考える。
ゲコゲコ。
甘いものの前に食べるものか。
洋食系で後を引かない、一食で完結する物が良いなぁ。
という訳で私が選んだ物はピッツァ。
ピザですピザ。
前にも作ったけど、今度は家族も増えたし何枚かいっぺんに焼いて味比べといきますか。
クリスピーは嫌いなので、生地は手作りのモチモチを作ります。
つうても、強力粉と薄力粉で作ってドライイーストで発酵させるだけ、ですけど。
サラミ、シーフード、ピーマンとトマトメインの野菜を具にします。
ツリーさんはなんだかんだ言っても野菜好きなんだよね。最初は肉の争奪戦に小さな身体で突貫して行きますが、一通り食べたら野菜をカジカジ齧っているのが毎食の姿ですから。チーズとピザソースと具を生地に乗せたらオーブンに。
この際だから、金属製の普通のオーブンを石窯に作り替えちゃえ。
うん、これからはパンも生地から作る事にしようっと。
「なんか旦那様がまた暴走してませんか?」
「あの窯で作る料理は美味しいわよ。パン食が明日から変わるんじゃないかな?トールさんって基本、自分が食べたい物しか作らないけど、本気になったら私のほっぺた2個じゃ足りないから。」
「なるほど。」
姫さんとミズーリがお高いのほっぺたをちょんちょん突き合い始めました。
「柔らか〜い(ですわ)」
ハイハイ。
ピザが焼けるまで、いつもの黒い炭酸飲料とコーンサラダを繋ぎに出します。
もう隠しても仕方ないけど要はコーラ。姫さんは「口の中が痛いですわああああ!」と騒ぎながらストローでちゅうちゅう飲むのがお気に入り。シンクの上に作った納戸から早速クルクル回るストローを取り出して、ミズーリは冷凍庫から氷を取り出してます。
ツリーさんは、さすがに炭酸飲料は苦手らしく、自分で冷蔵庫から100%フルーツジュースを取り出すと、全身を使ってコップに注いでます。私がやろうとすると、
「(自分の事は自分でしたい)」
って言われたので。本人の好きな様にさせてます。この辺は共同生活の中で自然にお互いの呼吸を測って始めた共同作業。
やがて、石窯から美味しい匂いが立ち込めて来たのでひょいと出して並べた3品。
これをそれぞれ適当にコロコロで切り分けた物を大皿に乗せて食卓の中央に置きます。
こういう時は小さなツリーさんが、自分様の小さな食卓セットをテーブルの中央近くまで移動させてます。
「頂きます。」
「頂きまわ〜!」
いつものように娘3人で取り合いが始まるので、私は各一切れずつ確保すると、豆から淹れたアイスコーヒーと一緒にのんびりと頂きます。粒コーンとピーマンが好きなんだよなあ。前世でも時々出前頼んでたなあ。
苺のショートケーキをうまうまと食べ終わった娘達は、例の温泉騒ぎをしています。
私はコーヒーをホットに淹れなおして読書タイム。
ここ2〜3日は働き過ぎなので出来る限りリラックスタイムを大切にします。
「いつまでやるのかね?トール君。」
おや、創造神さん。
「いや、良いんだけどね。今日もいきなり大量の亡者を送り込まれてきたもんだから、ミズーリの代わりに入った女神がヒステリーを起こしてな。慌てて逃げ出してきた。」
貴方一応、天界の最高神ですよね。
「本来ならベテラン女神に掛け持ちをやらせる筈だったのがね、実家に帰らせてもらいますって自分担当の世界に引きこもってしまったんだ。」
私のせいですかね。
「いやいや、この世界に関してはトール君のやり方が一番穏便だろう。この世界担当の女神は定時に終業しているし。」
そういえばミズーリは地球担当でしたね。
「地球でちょいと戦争が始まっちゃった。第三次なんとかって奴。」
このオッさんとんでもない事いいだしやがった。
「あゝ、核は使わせないから大丈夫。発射資格のある要人の意識コントロールをさせているから。代わりの女神に(まだ学生だけど)。」
聞こえてますよ。
「という訳で好きにしたまえ。ミズーリがそろそろ出てきそうだから私は帰る。」
ミズーリは貴方の娘みたいなものでしょ?
「身体の成長が一番アレな時でしょう。いくら私でも見たら怒られる。怒らないのはトール君だけだよ。」
知らんがな。
「来た?」
「来た。」
温泉から上がったそうそう、パジャマ姿で冷凍庫からアイスを取り出しているもう1人のダメ神様が確認してくる。神の残り香が、同じ女神として分かるんだとか。
「何しに?」
「表敬訪問というか、本来なら君の受け持ちの世界で世界大戦が始まって代わりのインターンが崩壊寸前とか言う話をしに来た。」
「あらまぁ、大変ねぇ。」
なんで他人事?
「地球みたいに変に文明が発達してる世界は、テキトーにガス抜きさせないとダメなの。…まぁ私もうガス抜きに失敗して強すぎる指導者を作ったら色々とまぁ。」
ファシズムの台頭はお前のせいか!
「その代わり、あれ以降は国と国の全面戦争は起こさせて無いわ。代理戦争までよ。」
なんか色々私の歴史認識が根底から覆る事を言い出しそうだから、この話終わり!
「でもいずれ、ミクに選ばれさせないといけないのよ。わかってる?」
分かってますけどね。森の中でありとあらゆるものに無双しながら、人を育て君や姫さんやツリーさんとチビや馬くんを愛でながら、好きなものを好きなだけ食べているこの瞬間は、とても大切なものなんですよ。
「トールさんは狡いわね。私にも誰にも嘘をつかないから、私だって嘘をつけないじゃない。」
優しい嘘なら大歓迎ですよ。
「そのうち考えとくわ。ね、ツリー?」
チビに跨りながらツリーさんも来た。
「(私はトールさんが私達を一生懸命に守ってくれるから、だからトールさんが好き)」
照れますね。
「ああああ!乙女トークですか?パジャマパーティーですか?私も入れて下さいよお。」
また、ケタタマシイのが乱入してきた。
でもまぁ、木の天辺で引っかかってたのに偉そうだった姿も、翌朝全面降伏して大人しかった姿も全部偽物。
冷凍庫からアイスを取り出すと、私達にジャンプしてきた無邪気な姿こそが、
私達にだけ見せてくれるミク・フォーリナーの本性なんでしょう。家族なんですね。
みんな。




