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神々の無責任な後始末  作者: compo
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畜産

翌朝、今日は移動しっぱなしだった昨日と違って、落ち着いて朝ごはんを食べています。


ご飯にちょっと一工夫。ワカメと白胡麻を出汁で炊き込んだワカメご飯。

鱈の西京焼に、折角あるから竹の子のお味噌汁。胡瓜と茄子の浅漬け。

味付け海苔とだし巻き卵。こんなところで良いかな。


西京焼はあらかじめ夕べから一晩白味噌に漬け込んでました。あとは焦がさない様に丁寧に焼きました。西京焼は焼きが大事。


私があまりにも真剣に七輪を見極めていたものだから、娘達も何か緊張して一言も口を聞かなかったくらいです。


おかげで最高の仕上がりに。浅漬けもいつもの漬け具合。美味しく出来ました。

この世界では初めて作った西京焼。しかも娘達が大好きな味噌。更にはワカメご飯。


久しぶりに娘達が発狂状態になって、朝ごはんの取り合いが始まるのでした。

私はサイドテーブルを万能さんからさっさと取り寄せると、席を移してゆっくりと味わいます。

う〜ん。鱈って美味しいなぁ。


ご飯を食べ終えて一休み。ミズーリの後片付けを今朝は姫さんも一緒に手伝っています。

昨日からの母ちゃんモードが切り替わらない様です。(夕べはお風呂で何やら大騒ぎしてましたけど)

ツリーさんは熱いのが苦手で、冷蔵庫で冷やした麦茶を飲んでます。麦から入れた麦茶は一味違いますからね。


洗い物を終えた長女と末娘が同じく冷蔵庫からオレンジ100%ジュースを取り出して一休み。そろそろ今日の指針を話し合おうかな、と思っていたところにチャイムが鳴りました。

「はいはい。」

すっかり母ちゃんが見についた皇女(確かまだハイティーン)が出迎えるます。

ドアを開けると、イリスさんが土下座してました。

「お早う御座います姫閣下。」

そんなイリスさんを蹴飛ばしてカピタンさんが来ました。

「なんですの?これ。」

「…ハンバーグ…」

「はい?」

「姫さま、何故カピタン将軍にはハンバーグをご馳走して私にはご馳走してくれないのですか。ズルいです。ズルいズルい。」

なるほど。

「すみません姫閣下。私が昨晩、軍の食事を摂らなかったせいで追求されまして。」

なるほどなるほど。

「イリスさんってこんなに意地汚い人でしたか。」

「旦那様のせいですけどね。」

姫さん、冷たいですよ。


いや、帝国では色々な人にご馳走しましたけど、ここまで意地汚い人はいませんでしたよ。

何か面倒くさくなったので、白い袋でお馴染みの前世既製品をぶつけてみました。

レンチンしただけの手抜きですが、イリスさんは涙を流しながらウマウマと食べています。


「で、朝から何ですか?食事後のひと時は私達には大切な時間なんですが。何故邪魔をするんですか?」

別に声色は変えていませんが、不愉快さを伝えると帝国三人衆が土下座を始めました。


あと何故かミズーリとツリーさんも。


「しししししししし失礼しましたあ!」

元凶の意識はあったのでしょう。イリスさんが震え上がって謝罪してきます。

「失礼だと思うなら、さっさと帰りなさい。」

「はいいぃ。」

慌てて軍人の2人は帰って行きました。

うちの三馬鹿もいつまでも土下座してんじゃ有りません。

「はいいぃ。」

「はいいぃ。」

「(はいいぃ)」

「どうしましょう。旦那様がお怒りですわ。」

「私もトールさんと旅する様になって長いけど、あんなに怒るの初めてよ。」

いや、ミズーリ。君と旅を始めてまだ精々ひと月だし。そもそもを言うなら、私は誤って君に殺されたし、その後始末を神々に押し付けられた事全てに怒ってますけどね。

時々創造神がご機嫌伺いに来てますし。


「どうしましょう。脱げはよろしいのですか?」

「私も散々脱いだけど、終いには見飽きたって言われたの。ミクだってしょっちゅうご開帳してるでしょ。」

「そんな!私はこれでも帝国皇女です。お姫様です。処女です。なのに私のご開帳に価値が無いと!」

お姫様なのに昨日からおっぱいだの、ご開帳だの、処女だの。はしたないなぁ。

「私の処女に価値が無いとおっしゃるんですか!旦那様!」

おやおや、空気がおかしな方に行きそうです。

「旦那様はいつになったら私の処女を貰ってくれるのですか!旦那様!」

言っちゃったよ。このドスケベ姫。


さてと、そろそろ助けが来る筈ですが。

ほら、チャイムが鳴った。

「なんですか!」

何故か逆上し始めた姫さんがどすどすと歩いて玄関を開けた。八つ当たりされるカピタンさんも可哀想に。

「たまには手を出した方が良いわよ。私は育つまで我慢するから。」

ミズーリさん、余計なお世話です。


さてと、わちゃわちゃしてる帝国軍人達をなんとかしないと。

んじゃ、ツリーさんお願いします。

「(りょーかい)」

ツリーさんは姫さんの肩に座ると、顔をペタペタ触り始めます。それだけで姫さんは大人しくなるのです。姫さん。ハウス!

ふらふらとソファに歩いて行く姫さんを放置して土下座してるカピタンさんに用事を尋ねます。

単にイリスさんの暴走を止めに来ただけだそうです。今朝は災難でしたね。


「申し訳ありません。イリスはしばらく謹慎させます。」

「いや、そこまでする必要は有りません。だったら此方からお願いが有りますが。」

「何でしょうか?」

「家畜となる動物を集めて下さい。牛を育てれば、さっきのハンバーグが作れます。猪や鶏など食肉や労働力となる動物を集めて下さい。柵で囲って牧場を作りたいんですよ。」


イリスさんは文官ですし、そっちの指揮を取って貰いましょう。そうそう、うちのミルクの様な乳も取れますよ。

「早速会議を開いてイリスを派遣致します!」

あっという間にカピタンさんが帰隊して行きました。早い早い。

はい、さようなら。


「畜産を始める訳ね。でも何処で?」

確かに森の中に牧場を作る訳にはいきませんね。牧草が育ちませんし、畜舎に閉じ籠めておく飼育法は健康的では有りませんから。


「取り敢えずは土塁の内側の空間がある。元々は木々の日照確保の為に開けた所だけど、あそこなら隣に水堀があるから牧草作りも、家畜にとっても良い空間ができる筈だ。だが。」

「だが!」

「だが?」

「いかんせん土地が細長い。出来る事ならば家畜達には昼間は自由に走り回って欲しい。」

「旦那様。一つ質問してよろしいですか?」

「はい。ミク・フォーリナーさん。」

「広くなると、また集めるのに大変だと思うんですが。」

「動物達を馬鹿にしてはいけませんよ。彼らは自分の家をきちんと覚えます。夜になったら自分で畜舎に帰って来て、自分専用の寝藁で寝るんです。」

「ほえー。凄いですねぇ。」

「それに彼らは草食もしくは雑食動物です。肉食動物に狩られる側なんですよ。でも畜舎の中は外にいるより遥かに安全で熟睡も出来ます。彼らはちゃんと理解しているんです。」

「でもさぁトールさん。なら何処に牧場を作るの?ツリーも居るし、森の木は極力伐採しない開拓計画なんでしょ。」


何を言っているんですか。ミズーリさん。

土地ならあるでしょう。トンネルの向こうに。

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