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神々の無責任な後始末  作者: compo
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ロコモコ丼

ロコモコ丼。


こないだガパオライスを作った時に、こんな料理もありますって「考えたせいで」ミズーリが

「今日はそれで。」とリクエストしてきました。

なんかもう、迂闊に考え事も出来ないな。

共有スペースにダダ漏れじゃないか。


「私とトールさんの間に隠し事があり得ない訳ね。覚悟しなさい。」

そんな人とは結婚したくありません。落ち着かないもん。

「しまった。距離を詰め過ぎたかな。」

知らんがな。


ハンバーグはかつてミズーリも作った経験があるので、ミズーリに仕切らせて三姉妹に好きなだけ作って貰います。

私は、付け合わせの野菜と目玉焼きを作ります。


「ボールに入れた挽肉に塩胡椒と牛乳、パン粉を混ぜて、こねこね。」

「ミズーリ様、このパン粉ってパンなんですか?」

「そうよ。パンを硬くなるまでカビない様に乾かして細かくした物。これを衣にすればコロッケやメンチ・トンカツが出来るし、挽肉のつなぎとして使えば美味しいハンバーグになる訳。牛乳もトール特製だからお肉がまろやかになる訳。で、お肉に粘りが出て来たらこうやって平たく丸めて、両手でぱんぱんと投げながら空気を抜くの。そうしないと焼いてる時にお肉が破裂しちゃうから。美味しい肉汁が全部流れちゃう」

「こ、こうですか?ぱんぱん。」

「そう、ぱんぱん。」

「(ぱんぱん)」


などと4人仲良く晩御飯の支度をしていると、チャイムが鳴りました。


桶でのやりとりがアホっぽくなったので、帰宅早々につけたんですよ。

駐屯地側にもインターホンとして今日これから渡すつもりです。


「はいはい。待って下さいね。」


シンクで手を洗った姫さんが、エプロンで拭き拭き玄関に向かいます。

ドアを開けて迎えたのはカピタンさんだけ。

イリスさんはすっかり来なくなりました。


「本日のご報告に上がりました。」

「まぁまぁ。ご丁寧に、早速お上がり下さいな。」

何か姫さんも母ちゃん化してないか?

「晩御飯を作る事で何かスイッチが入っちゃったんだと思う。あれもあれで多分ミクの素じゃない?」

うちの女神と皇女は母ちゃんだったのか。いや、君の影響が大だと思うけどなぁ。

「ついでだから私達の晩御飯に呼ばれませんか?旦那様?」

あゝ、余裕はあるから1人増えたところで問題は無いけれど、ツリーさんは大丈夫?

「(大丈夫。トールさんのご飯は皆んなで食べる方が美味しい)」


…君も性格変わっていませんか?

もっと人間に対して警戒してる精霊だった筈だよね。

と言う訳で、皇女と女神と森の精霊と転生者と一緒に、軍の最高武官が晩御飯をお呼ばれしました。

この駐屯地に於ける、ある意味最高首脳会議なんですが、相変わらず緊張感のカケラもなく。


「これは肉ですか?でも食感が違います。」

「それは、はんばーくという料理で、お肉を細かく挽いた物を捏ねて纏めた物を焼きました。私も作ったんですよ。」

「姫閣下の手料理ですか。勿体なや勿体なや。」

「これは目玉焼きと言って、鳥の卵を炒めた物です。二つ並んでいると目玉みたいでしょ。」

「初めて頂きました。このお醤油で食べるとなんとも美味で御座いますな。」

「このお野菜のサラダを毎食食べる事で、私達は健康で居られるのです。旦那様のおかげで新鮮なお野菜の栽培が始まっているんです。」

「勿体なや勿体なや。」


…何だこれ。バカ殿と苦労人家老のコントか?


姫さんが鼻高々で自慢シイシイだけど、自分でもハンバーグくらいは作れるんですよと、言いたいのかな。

この子、こんなところはまだお子様だった。

「(でも何か可愛い)」

今のツリーさんの一言で、姫さんの三姉妹内での序列が完全に末娘で確定しました。

この夜、お風呂場でミズーリに揶揄われ、

「私が旦那様の夜伽を直ぐにも受け入れられる、唯一の大人の身体なのにい。」

と反論して三姉妹で喧嘩が始まるのは、それは別の話。あゝ、くだらないくだらない。


「キクスイ王都に到着した者からの速報です。

鬼の死骸は此方の言い値で売却する事に合意しました。結構な額になりますが、閣下の指示、予定通りになります。遊休地を使った農業については、キクスイとの取り分についで折衝が必要ですが、概ね合意。水及び衣類については大いに受け取りたいと。」


まず、第一便は良好か。被災地に無理は厳禁ですよ。


「あくまでもミク閣下と東部方面軍との個人的な取引であり、友好関係を築きたい。

と言う意向はそれは伝わったみたいです。」


分かった。水と絹及び羊毛は引き続きたっぷりと用意する。王都向けは無償譲渡、それ以外の町村は地元商人に任せましょう。ただし、阿漕な商売をする事はミク・フォーリナー及びキクスイ国王の名で厳禁とする。発覚した場合は王家及び皇帝家の名で厳罰に処す。これを約束して貰いましょう。

両国の良心が守られる限り、私は幾らでも提供しますよ。姫さんの名前で書状をばら撒いて徹底させて下さい。


「は!でもあの、そこまでして頂いても我々にお返し出来る物が無いのですが。」


私には出来る。それだけ考えておいてくれれば良いです。


「強いて言えば、」

私は姫さんの肩とツリーさんの頭に手を乗せて言います。

「ミク・フォーリナーが私達と良好な関係を保ち続け、森の精霊の加護と願いが有る限り、私達はここに居て皆んなの希望を叶え続けます。私達はこの2人の為にここにいるんです。」


何か2人が真っ赤になって照れてますが、私からすると事実を淡々と述べているだけなので、彼女達との縁が切れればいつでも森を出て行きます。


「姫閣下姫閣下!閣下のご機嫌を損ねる事は絶対にしないで下さいね。」

あらあら、カピタンさんが姫さんに(いつもの)土下座をし始めました。

「私は全てを旦那様に捧げたいのですが、旦那様が受け取って下さらないんです。」

「何と!姫閣下のお胸は確かになだらかですが、立派な成人でございますぞ。」

「おっぱいの事は言うなカピタン!」


またコントが始まったよ。

なので強引に話を逸らします。」


「あ、そうそう。昼間の畑の水やりは対策を完了してるから。じょうろじゃなくて柄杓で充分な様になってますから。」

馬鹿馬鹿しい口喧嘩を始めた皇女と将軍の頭を引っ叩きます。

2人共涙目で頭を押さえてますが、話を続行。


「今日の地図です。新たに開墾した場所と馬車鉄道を記してあります。軍で募った農業従事者を組織立てて、明日からでも早速開墾に入って下さい。全部段取りは済んでいます。それと、」


次の一言にカピタンさんは歓喜した。


「先日始めた椎茸栽培。もう収穫出来ますよ。」

私から地図とインターホンをもぎ取ると、あっという間に家を走って出て行った東部方面軍将軍筆頭を見送りながら、改めてこの軍大丈夫なの?と心配になりました。

「BBQで無血開城する軍隊に、軍としての資質を心配するだけ無駄だと思う。」

「お恥ずかしいですわ。」

いや姫さん、貴方こそ恥ずかしい軍隊のトップ…いや止めとこう。多分全部私に返ってくる。

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