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神々の無責任な後始末  作者: compo
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出鱈目な日々

翌日早朝。

朝靄の中、馬くんの引くチャリオットを線路の上で走らせています。


眠いですぜご主人


万能さん特製の馬くんも寝るんだ。

そこはそれ。そっと竹の子の水煮を出しただけで。


任しておくんなせえ!


ほら、元気になった。


うちの馬鹿娘達も眠い眠いとブー垂れてたけど(そもそもあのベッドを使っている限り安眠保証・目覚めは絶対快適なんだから甘ったれてるだけだよ)、朝ごはんに万能さんが出してくれたヴァイスヴルストなるよくわからないドイツ的ソーセージのホットドッグと、フィッシュ&チップスという、材料が英独戦争を起こしそうな料理を出してあげると3人して素直にチャリオットの中で賑やかに食べ始めた。

「ウマウマですわ。」

「(美味しいの)」


私はと言うと、夕べ敷いた鉄道馬車の具合を確かめながら、地図上で開墾した土地を一つ一つ確認していく仕事です。うん、みんな綺麗に耕されているな。上等上等。


開墾地の端に農業用倉庫を建てて、それぞれ農具と種を仕舞っておきます。


ここは大根と蕪、ここはネギと玉葱、ここはニラとほうれん草。


別に分け方に意味はありません。白い根菜。ネギ、青物とそれっぽく分けただけです。

それぞれの相性とかあるかもしれないけど、どうせ私とツリーさんの祝福付きです。なんとかなります。だからここは大麦小麦。

なんかよくわからないけど、麦って踏めばいいんでしょ。落穂拾いでしょ。


あ、豆も欲しいな。餡子作りの小豆、日本人の万能食材・大豆。忘れちゃいけない。

と6箇所を巡り、そして最後のここは。


「池になってますわね。」


姫さんが呆れた口調で言うがこれも狙い。

私の指示に従い、ツリーさんが縦横に飛ぶだけであら不思議、畦の完成です。

水堀から田に流れた水は、一面を潤してから地下へ濾されて戻っていきます。かけ流しです。

「田んぼになりましたわね。」

姫さんが呆れた口調で言うが今更。

ここにはコシヒカリとコガネモチ(もち米)の苗代と農具を置いておきましょう。


これで今日の仕事は終わり、あとはカピタンさんから連絡が来るまで自由です。


「こんな所で自由って言われてもねぇ。ここどこ?」


森の南の外れ。近年に人が入った痕跡のある場所では一番南かな。


「こんな所で何をしたらいいのよ。」 


おやおや、ミズーリさん。今日はご機嫌斜めですね。


「そうでもないけど、あの日だからちょっとね。」 


来てるの?


「始まったの!(天界の女神時代も無かったから)初めてだわ。」


あらあら、お赤飯ですか。


『逆に言えば人の子供が産める証拠よ。あ・な・た♡』

頭に直接話しかけて来ないで下さい。

君、時々女神に戻りますね。

『戻るも何も私は最初からずっと女神じゃ』

最近、馬鹿姉妹の長姉の印象しかなかったものですから。妹(姫さん)を揶揄って、ご飯食べてるだけだし。

「う"。否定出来ないわ。」


あと、色々な用品は男の私達には良く分かりませんから、前世の既製品をそのまま取り寄せますから、恥ずかしがらずにいつでも言ってくださいね。

なんかとても衝撃的な事件が起こった様な気がしますが、何はともあれとある場所に来ました。

ここで馬くんとはさようなら。


姫さんと馬くんが別れを惜しんで首を抱き締めています。

そういえば、昨日から割と長く居ましたね。馬くん。 

で、ここが何処かと言うと、分かりやすく山がここから始まる割と傾斜が急な崖。その裾から水が流れ出しています。水は涼やかなせせらぎを作り川を作り出しています。


「ほえー。」

ややや、姫さんがまたおかしくなってる。

「旦那様おかしくもなりますわ。なんですのこれ。」

「川。」

「川はわかっております。こんなところから川が流れているとか初耳ですわ。いくら人が来ない場所とはいえ、川が有れば軍の資料にあるはずです。」

「でしょうね。だって夕べ作ったばかりだもん。」

「あの、普通川というものは夕べ作れないものですよ。」

何を今更。最近、何回今更って言ったかな。


「ほら水路はあちこちに作ったけど、機能的でも人口的過ぎてつまらなかったんだよね。で、ツリーさんと相談して自然の川っぽくしてみた。」

「はあ、あの私が分からないのは、何故川など作る必要があったかと言う事です。」

「あゝ、ミクは水害を懸念したのね。」

「こんな森の中でもごく稀に嵐が来ます。」

つい最近の嵐を起こしたのは私達ですけど。

「川があれは氾濫します。東部方面軍駐屯地は半地下の施設です。水害は怖いんです。」

そりゃまぁ、今までのこの森には排水機能がなかったからね。地面に染み込むまでほったらかしだった訳で。


「姫さん、この川は大雨の時の排水路にもなるんですよ。この川の終点に貯水池を作ってあります。その貯水池からは地底湖まで排水管が通っていて、この川と貯水池の水量は常に一定に保たれています。」

そろそろ姫さんから???が大量に湧き出しました。ここは押し切りますよ。


「つまり、どんなに大雨が降ろうとこの川は溢れる事がありません。私が、いえ私と森の精霊が保証します。」


それに半地下の駐屯地なんか破棄させますからね。


私の説明に合わせる様に、ツリーさんが私の前に降下してくると、姫さんの顔に小さな手を当てニッコリ笑い2回頷きます。

それだけで姫さんの顔は真っ赤になりエクスタシーに達した様です。


「それに、ね。」

姫さんの手を取ると、少し下流に歩きます。

そこには鹿の親子が水を飲み、寛いでいます。

私と森の精霊の姿に、鹿の親子は全く警戒心を出さず安心しきっています。


「この森の動物達も、清潔で美味しい水がいつでも飲めると喜んでいるんですよ。」


実はこれ完全に後付け。本当は私が単に川を作ってみたかったから作っただけ。

ところがツリーさんを通じて森の意思(さっき初めて聞いたけどツリーさんの親分みたいな存在らしい)にお礼を言われた。


動物達にとって水辺が少ないこの森は、決して楽園ではなかったそうだ。肉食獣がいないのも、肉食獣が生息出来ないというだけらしい。間引きの必要性も認めてくれたし、なんかよかったみたいだ。

ついでに鳥に魚を運んで来させると約束してくれた。小魚からだけど、新しい生態系が出来ようとしている。


やる事なす事どんどん加速している気がする。どんどん出鱈目にもなってる気もする。

「と言う訳で、この川の重要性が分かりましたか?」

「旦那様、小鹿が可愛いです。あの小鹿のお水なんですね。ならばどんどんやっちゃいましょう。」

そういえば、姫さんには「可愛いは正義」が一番でした。

んじゃ、この川を降って貯水池まで名所散歩と行きましょう。

ただし、総延長60キロくらいあるので。

いよいよここで物理法則全てをひっくり返す出鱈目の極みを行きますよ。


青い猫型ロボットがよく使ってた、瞬時に移動できる携帯扉です。


「無いわぁトールさん。これはいくらなんでもちょっと無いわぁ。」


今日だけですよ。こんなもん普段使いしてたら、多分私達の旅は永久に終わらないですから。

万能さんが作れるって言うから作ってみたんだけど。今頃天界じゃ神様が頭抱えているかもね。


渓谷と言っても、山から適当な岩を持って来て40メートル程並べた人口の岩場に川を流してみただけ。

それでもちゃんと渓谷に見えるから面白い。

元々川は浅く作ってあるので、木道を川の端に作ってみた。

娘達は、はしゃいで木道を渡っている。

木道の終点はここ。人口の滝である。

って言っても、元々傾斜の乏しい森の中なので、落差は1メートルもありません。

水量も少ないので滝壺もありません。

その内、水遊びでも出来るようになりますよ。

川の終点は貯水池に通じさせである。


ところが、う〜ん少しイメージと違うな。

どちらかと言うと、農業用溜池くらいにしか考えていなかったのに。

ほら、北海道や長野の山中にある幻想的な青や緑の池。あれみたいな出来上がりになっている。

木々の奥で靄ってる澄み切った池。

出来過ぎですね。


「旦那様のやる事には驚くのも馬鹿馬鹿しいですが、今日のは少しロマンチックですわ。どうやったらこんな風景が作れるのかしら。」

それは生前の私の記憶でしょうね。

テレビや雑誌の旅特集で、プロのカメラマンが撮影した美しい幻想的な画像を散々見てましたから。

それが全部フィードバックしたんでしょ。

ツリーさんが喜びの空中ダンスを踊っているので、多分これで良かったんでしょう。

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