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神々の無責任な後始末  作者: compo
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馬車鉄道

「閣下に従います。」


夕方、報告に来たカピタンさんが、説明の途中涙目でしがみついて来た。

おじさんに抱きつかれても嬉しくないので、わざと悲鳴を上げてウチの女性陣に引き剥がして貰った。

イリスさんは、ただのミルクを飲みながら、美味しいです美味しいですと、床に座り込んで号泣しています。

この人、最初に会った時は、それなりに威厳が有った筈だけどなあ。幼児退行してないか?


「そんな事を言ったらミクだって最初はそれなりに兵っぽかったよね。」

木の天辺に引っかかって威張ったり泣き言吐いたりと騒いでいた姫さんがどうかしましたか?

「しーっ。しーですわ旦那様。」


あーまぁ、とにかく。

カピタンさんは駐屯地にいる人員全員の意思を早急に確認して下さい。

外の世界に家族を残している人も居るでしょうし。

「あの、閣下。逆に家族を呼びたいと申している兵も多数いるんですが。」

「あの、このミルクのおかわりを。」 

武官文官の両巨頭を呼んだ筈ですが。この差はなんなんだろう。


「勿論構いません。構いませんが、あくまでも本人の自由意思を尊重して下さい。と、同時に出て行く事も自由です。帝国に対する叛乱と判断して私達に敵対しようとする意思も、当然の事ですからね。」

「あの、その、我々は勝てますか?」

「私達なら、全帝国人民を瞬殺できますよ。しましょうか?」

「旦那様。それはなりません。民が居て国が成り立つんです。私と旦那様の子供達が治める国を滅ぼす事には反対致しますわ。」

「とまぁ、第四皇女様がこの有り様だから。負ける事はあり得ないと信じ切っていますよ。それに私が目指すところは、あくまでも私の友人達がいつでも美味しいご飯を食べられて笑っていられる環境を作る事です。」


偽善もいいとこですけどね。


「だから、この通り。森の精霊が私達の側に居る訳ですよ。彼女達にも信頼して貰っていると、思いあがっている訳です。」


森の姉妹がぶんぶん首を振って、思いあがっての一言を否定してくれました。ありがとう。


「そこでカピタンさんにお願いがあります。現在駐屯地で勤務している人員。増える人員、減る人員を出来るだけ正確に詳細に名簿にして姫さんまで提出して下さい。(あくまで彼らの上司は姫さんだからね)それと、残留(覚悟)を決めた人の中、下士官数名を明日連れて来て下さい。馬車の運転が出来る人に限ります。」


そうして、駐屯地内の現状、キクスイ遠征隊の状況、大量に残して置いた調味料に厨房班が張り切って居る等の報告を受けて、カピタンさんは退室して行った。ミルクを抱えたイリスさんを蹴飛ばしながら。


では、晩御飯の前にちょびっとだけ一仕事。

地図を開くと、現在地及び今日開拓した農地の間を指でツー。

はい、これで線路が敷けました。

外に出て、出て来い馬くん。


アイアイサーだぜい


線路の上に、改良型チャリオットを乗せると一同を誘います。

では、行きますよ。馬くん。

私が(形の上で)御者を務め、森のお姉さんが隣にツリーさんと腰掛け、車内に馬鹿姉妹が陣取ります。

万能さん特製森林馬車鉄道は、自動的に地面の凸凹を調整出来るので、特に傾斜に当たる事も無く、馬くんの脚ではおよそ20分で到着です。


「旦那様のところの馬さんですから今更驚きませんけれども、ウチの馬達ならこの倍はかかるでしょうね。」

いやあ、鉄道って言う物は摩擦係数も少ないですから、もっと早く着きますよ。

「で、これがトールさんが私達に黙って開墾した土地かあ。何で木が無いの?」

「ミズーリ様、ここは恐らく焼畑の跡です。街の者が時折森を焼いて、農地や狩猟の為の基地を作ろうとしては、失敗を繰り返していたと言う話があります。」


木々の特性を考慮しないから、ただ焼くだけで終わっていたんでしょうけどね。


「でも水路も作ってあるし、土も柔らかく掘り起こしてある。何やったらこうなるのよ。」

端っこに停めて置いた赤い耕耘機を黙って指差します。

「…動力は?」

私。

「あのねぇ。」

内燃機関を作るつもりはないし、私達以外の者がいる時には動かしませんよ。

ここから畑を耕すのは、人力もしくは畜力になります。牛を何処かから連れてこないと。

「本当の屯田兵って訳なのね。」

「あの、ミズーリ様。先程から仰られている屯田兵って何でしょうか。」

「自ら荒野を開拓して人の住める土地を広げる兵隊の事よ。トールさんの下支えが有るにしろ、自分達の食い扶持は自分達で何とかする。こうする事によって土地への愛着や経済や食糧の支援が減らせる訳。駐屯地への卸しで食べてる商人にはとんでもない悪魔の所業な訳。」

「なるほど。」

こらこら、2人とも悪い顔になってますよ。


さて、ここで何を作りましょうか。

森の姉妹には腹案でもありますか?


「(美味しいの)」

「(沢山出来るの)」


ふむ。ならば芋かとうもろこしですかね。

どちらも丈夫で汎用性が高い作物です。

ならば、と。

赤い耕耘機を万能さんに仕舞って、代わりに小さな小屋を建てます。

この中にとうもろこしの種と種芋と肥料と農薬を仕舞っておきます。

…とうもろこしや芋ってこの世界にも有るよな?


ごく原種に近いですが とうもろこし・ジャガイモ・さつまいもは有ります

あまり美味しくありません


あるならいいです。

スイートコーン、男爵、メークイン、紅あずま、紅安納、くらいでいいかな


「これを栽培して貰いましょ。駐屯地の人間を養う程では無いにしろ、利用の仕方は頭の良い人に考えて貰います。」


再び馬車に乗ると、枝線をその場で敷いて竹林に行きます。

着いたのは昨日竹の子を掘ったところ。

さすがに夕方なので、大した収穫も無く2本程穿り返して帰宅します。


さて、晩御飯ですが。

森のお姉さんも食べていきますか?

「(ううん、帰る。夜は夜の役目がある)」

でしたらこれをどうぞ。さっき畑で思いついた茹でもろこしです。甘くて美味しいですよ。塩を振って頂くのも、味が変わって楽しいです。

「(ありがとう)」

森のお姉さんは、とうもろこしを抱えたまま、何度も振り返り、何度も頭を下げて消えていきました。


「トールさん?」

「旦那様?」

「(私も食べたい)」

やれやれ全く、うちの欠食三姉妹は。

ご飯の前に食べるものではありませんよ。

時代や国によっては主食だったんですから。

仕方なく、茹でもろこしを3本出してあげる。3人はちゃんと食卓に座って待っているあたりが確信犯というか。


そうそう、とうもろこしで思いついた。

ヤングコーンってあったな。ヤングコーンと言えばトロミ。

ちょうど竹の子もあるし、中華丼を晩御飯にしましょう。

あ、鶏だけで無く、鶉も飼えないだろうか。

鶉の卵も美味しいよね。 

食材は捻りなく、竹の子・人参・ヤングコーン・キクラゲ・白菜、それに豚コマと鶉の卵です。

白菜・人参・竹の子を食べ易い大きさに切り、豚コマと一緒に胡麻油で炒めます。

そこに、醤油・調理酒・中華スープの素でスープを作り炒めた材料を加えて、鶉の卵を乗せ水溶き片栗粉で閉じ込めて出来上がり。

搾菜を小皿に添えて、中華スープの具は冬瓜とベーコンでサクッと作ります。

美味しい中華丼セットの完成です。


「卵が小さくてうまうまですわ。」

「冬瓜なんて洒落たモノをトールが知ってたなんて、なんかずるいわ。」

「(この黒くて薄いキノコ、森の中でも見たことあるけど、こんなに美味しいの)」

今夜も賑やかな我が家の食卓でした。

みんな身体が小さいのに、よく食うな。


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