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神々の無責任な後始末  作者: compo
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貝とキノコのバター焼き

昼を迎えて雨は小降りになったが、うちの女神は、居眠りしているチビの隣で寝転がり、その居眠り姿をうっとりと眺めている。

一応、多分、もしかしたら、君を天界に帰す旅を私達はしている筈なのだが、当の女神にそんな気は更々無さそうだ。どうしてこうなった?


私にだってしなければならない事は沢山あるのだろうけど、とりあえず今は飯だ。

よく食べ、よく寝て、よく戯れる。

そんな一生懸命な不真面目さも私達だ。

昨日、牡蠣鍋でミズーリが豆腐が美味しいと呻いていたのが参考になったのでアレを作ろう。


中華鍋で挽肉、豆板醤、甜麺醤、ニンニクを炒めて、中華スープを注ぐ。一煮立ちしたらサイコロ状の木綿豆腐を入れて、水溶き片栗粉でトロミをつける。豆板醤と甜麺醤を用意する事が一番面倒くさい、作り出せばあっという間の簡単な麻婆豆腐の出来上がり。

付け合わせは、ほうれん草のお浸しと玉子スープ。少し辛めに作ったので冷たい烏龍茶をたっぷりと。


知らないうちに復活したミズーリが席に着いていた。チビには半生ドッグフードを出してあげる。

「辛い。美味しい。辛い。美味しい。辛い。美味しい。辛い。美味しい。」 

賑やかな子だ。この子は私には感情を一切隠す事をしない。全部素直にぶつけてくる。

「うひやあひ。」

騒がし過ぎて心配になったかチビに足を舐められたミズーリが間抜けな声を上げる。

「どうしよう。チビにまで開発されちゃったらどうしよう。」

こういう人が家族だからチビも早く慣れなさい。

ワン


さて、雨が小降りになったら、傘をさして王都に向けて出発だ。

チビは家に収納しておくつもりだったが、ミズーリが抱っこして連れて行くと駄々をこねたので、飽きるまで出しっぱなしにしておく事にした。

思春期だったり、愛妻だったり、お子様だったり、この子の年齢設定が最近さっぱり分からないぞ。

二人並ぶといっぱいになる農道は、普段から踏み固められているから問題はないが、傍の農業用水はかなり暴れている。深さがわからないのでミズーリの肩をしっかり抱いてゆっくり歩く。チビはさっさと甘え寝に入っている。

地図と見比べた結果、王都まであと4日弱と言ったところ。そりゃ2日ものんびりと観光してたし、おまけに訳の分からない人外の人沢山に絡まれてたし。


「来たわ。」

人外だけじゃ無く正真正銘の人間にも絡まれる様だ。

「雨降りなのに元気よね。殺気満タンよ。」

「チビ。ハウス。」

ワン

チビは私の胸に飛び付くと消えていった。

ケージに戻って、楽しみにしていたお芋さんをかじりだすのだろう。

さてと。殺気持ちで私達の敵であるなら好きにさせてもらうかな。

「動きに統一感が無いなぁ、兵隊じゃなくてゴロツキの方かな。」

天狗のおじさんの方か。

「数はざっと400人。」

「こないだの正規兵より多いんだ。」

「メンツ潰されて組織のメンバー全員投入ってとこかしらね。」

殺気だけプンプン漂わせ出るけど、姿は私には肉眼ではまだ何も見えないんだよ。ミズーリが言うには1キロは離れているそうだ。

そりゃそんなに離れていたら組織的行動もまだ取らないだろう。よくこちらがココに居るって分かったな。

「のんびり金山観光してるし、スパイが居れば連絡行くでしょ。」

まぁね。でもま、敵ならちゃっちゃと片付けよう。

見えないうちに処分しちゃえばストレスにならないし。

「どうすんの?」

「こうする。」

右手をチョップではなく単に手のひらを外向きで振った。邪魔なものを掻き分けてどかす仕草。ヒョイ。

「アララ、結構な数の人が消えちゃったよ。トール?何したの?」

突風が吹き飛ばしました、という体で。

「邪魔だからどいて貰った。消えたんじゃなく、どこかに飛んでった。」

「……どこに?」

「……さあ?」

味方の半分が突然蒸発したせいで、天狗のおじさんがパニックに陥っていると万能さんが教えてくれた。ならばもう一振り。

「そして誰もいなくなった。」

アガサは私も赤い文庫は読破しましたよ。

そんな事より、もっと大切な事をしよう。

「チビ出ておいで。散歩しよう。」

ワン

チビはお芋さんを咥えたまま出てくる。

「待って待って。今更ながら何が何だかさっぱり分からない。何やったの?」

私達にしては本当に今更ですが、簡単に言えば万能さんの力で400人を1キロ手前から突き飛ばしました。裏拳で。というか手の甲で。

万能さん曰く、障害物に当たるまで一直線に身体を水平にして飛んでるって。

アメリカのカートゥーンみたいだ。

この先に丘があるから、そこまでそのまま第一宇宙速度で飛んでいくだろうってさ。

「誰かに当たったらどうすんの?」

「一面見渡す限り、雨が降ってる畑だし。まぁ多分。」

大丈夫。全員無事に丘に到着してぷっ刺さってる(何とは言わない)と、万能さんが確認しました。

さすがのミズーリも呆れっぱなしですけど、チビを手渡したら大人しくなった。

チョロい。

ワン(チョロい)。


歩いているうち雨が止んだので、傘と本格的にミズーリの腕の中で寝てしまったチビを万能さんにしまう。

ミズーリが少し惜しそうにしていたが、何あとでいくらでも遊べるから、眠い時は寝させなさい。

「何か」が沢山突き刺さっている丘をスルーし、本日のキャンプ地を探しながら歩く。

丘の方は万能さんに始末を任せようか。あの丘、多分地元の農家が里山として使ってそうだし。


はい、任されました。


…あなた最近明らかに意思、意識あるよね。

人家はたまにあるが、あまり近寄らないよう畑の畦に避難したりと道のりはちっとも進まない。進める気も特に無い。

「トール。」

何ですか?

「なんか疲れた。」

え?

「私、女神だし通常は肉体的疲労って感じないんだけど。なんか疲れた。」

ふむ。足が痛いとか、身体が重いとか自覚症状がありませんか?

「生まれてから今まで疲れた事が無いから分からない。」

万能さん…何故か無反応。

つまり、そっちのパターンか。

ならばさっさとキャンプ地を決めないと駄目だな。

しかし、ここだと畑の真ん中で家を展開する敷地がないし。空中に浮かべば良いけれど。

……思ってみるものだな。浮かんだよ、家が。なんならと中に入ったあと、更に高く浮かべてみる。固定しなさいと万能さんから指示が来たので、飛行船にアンカーを垂らすイメージで完了。

早速チビが尻尾を全力で振って私達を出迎えてくれた。

ミズーリには先に風呂へ行けとバスタオルを首にかけてあげると、素直に浴室に向かった。

女神の身体にどうかは分からないが、通常はぬるめのお湯にのんびり浸かり血行を良くする事で疲労回復効果がある。

あ、そうだ。

ミズーリ、ちょっと済まん。

「いやん。」

元気そうだ。というか、まだ脱衣所で脱いでないじゃないか。

慌てて隠すんじゃなく、慌てて脱ぎだすのは女の子としてあちこち間違えてるそ。

「やっと一緒に入ってくれるの?」

「ちょいとな。」

湯に漢方系生薬を溶かし、湯船にも細工。

ジェットバスにしてみた。シャワーもヘッドを変えて打たせ湯機能をつけてみた。

「とりあえず色々やってみた。晩御飯には夕べのでリクエスト通り、貝とキノコのバター焼きを作る。今は何も考えずグデっとしてなさい。」

「一緒に入ってくんないの?」

くんない。チビも遊ぼうと鳴いてるし。


部屋に戻るとまた少し拡張する。で、広げた部屋の隅にマッサージチェアを据え付ける。

それも、お値段お幾ら万円するか確かめもしなかった、家電量販店て味わったあの天国椅子だ。肩・背中だけでなく両手両足のストレッチまでしてくれる優れもの。

この世界には来て疲労と肩凝りには縁がなくなったとはいえ、気持ちいいものは気持ちいいのだ。

早速体験。ああ気持ちいい、眠くなる。うにうにうにうに。身体がうにになって居るとミズーリがお風呂から上がって来た。長風呂だった事があれこれやって正解だったと分かる。

まだ晩御飯前なのでパジャマではなく部屋着だ。

「ミズーリさん、ちょっとこちらへいらっしゃい。」

「?。」

トテトテと近寄ってくる女神さん。

「私はこれから一つ変な事をする。嫌なら断って構わない。いいね。」

私が変な椅子に座っている件が不思議そうだったが、基本ミズーリは私の言う事を拒まない。

「ミズーリ、足を見せてくれないか。」

「どうぞ。」

勢いよくズボンを脱いで下半身ぱんつ一丁になる女神。裾からたくし上げるという選択肢はなかったらしい。そんな女神の太腿に私はそっと触れる。

「ひゃん。」

ミズーリは悲鳴をあげるが、私の顔を見てふざける事は自重してくれた。

でも私は容赦なく宣告する。

「ミズーリ。足が太くなってる。」

「なななななななななんですってぇ!」

騎士アリスに続き、「な」の人がここにも一人。それはともかく、下半身ぱんつ一丁で私に掴み掛かる前に話を聞きなさい。あと、ズボン履いて。

「やだ。なんならぱんつも下げる。」

下半身すっぽんぽん女神が我が家の名物になっても困るので、ぱんつ一丁のままマッサージチェアに座らせてみた。たちまち溶け始める。チョロい。でも女の子がぱんつ一丁でマッサージチェアに飲み込まれるという絵面。


「毎日歩いているから筋肉がついちゃったって事なの?」

「いや、さっき脱衣所で君が脱ぎ始めた時に見えたんだけど。」

「見せたの!どうだ!」

「ハイハイ。」

「むうむう。」

ちょっと可愛い。

「足にね、脂肪が付いているんだ。」

「トールのせいよ。トールのご飯が美味し過ぎるからよ。責任とって。今すぐ結婚して。」

勿論放置。

「贅肉と言う意味の脂肪ではないよ。女性として身体に丸みを帯び始めてきてるんだ。」

「そうなの?だって別におっぱいもそのままだし、毛も生えてないし。」

ミズーリさん、言い方。

「つまり、若干ではあるが前回と同じく身体の成長が見受けられる。」

「!!!。」

私に抱きつこうとしたみたいだが、マッサージチェアから動けないミズーリは

身体の動く場所を使って喜びを表現する。

「それにしてもトール。よく分かったわね。私でも気が付かなかったのに。」

それはねミズーリ。君がしょっちゅう私に裸を見せていたからですよ。あと、毎晩私に足を絡ませてきますしね。

「ミズーリ。それで君の成長についで一つの共通点が見つかった。」

「それは何?」

それは、

「私達が人を沢山殺す事です。」


ミズーリの身体に変調があったのは3回。

私へ宣誓してくれた時は別カウントとしよう。

アレは天界からの強制介入があった事をミズーリが認識出来ているそうだし。

2回目はミズーリがエドワード正規軍を全滅させた時。少し背が伸びた。

3回目は私が天狗のおじさんを大量殺戮した今日。少し肉付きが良くなった。

まだ2回しか経験していないから確定とは出来ないが、一応整理しておく。

あと万能さんの関わりの有無も関係ありそうだ。

「なるほど、人を殺せば殺す程、私のおっぱいが膨らむという訳ね。」

死を司る女神が物騒な事を言い始めた。

なのでマッサージチェアのバイブレーション機能を最強にしてみた。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ。」

女神が恥ずかしい声が出して悶え始めたのを放置して晩御飯の準備に取り掛かろう。


鉄板をデデンと出して、食材を並べる。

キノコは椎茸、エノキダケ、エリンギ茸、シメジ。貝は牡蠣、蛤、アサリ、ホタテの剥き身。

野菜は青ネギ、にんじん、玉ねぎを。

カロリーたっぷりついで、汁物はベーコンのコンソメスープ。

うん、豪華だ。バターもたっぷり準備。

醤油、七味、塩胡椒はお好みで。

鉄板焼きだし今日の晩酌はビール一択!。

鉄板が温まって来た頃、マッサージチェアの魔力より食欲が上回った女神が脱出して来た。席に座る前にチビにフードをあげるあたり、まだ正気を保っているようだ。

バターを敷いて食材をヘラで炒めている私のコップに冷たいビールを注いでくれる。

ミズーリさん愛妻モード発動。

バターが冷えないよう鉄板の温度を下げて直接鉄板から箸で頂きます。

「美味しいの。どうしよう美味しいの。こんなに美味しいなら脂肪くらいどんと来いだわ。ごめんなさいトール。貴方の妻がぷくぷく太ってしまうわ。」

女神が太るという事は無い筈だが。

あとぷくぷくって形容が少し図々しい。


ミズーリが愛妻モードで食事の後片付けに入ったので、私は入浴モードに移行しよう。

チビがついてくるのは、水浴び(水遊び)が大好きだから。やたらと広い浴室だし、ビニールプールでも出してあげよう。

ついでに打たせ湯シャワーを湯船にも設置。

上から打たせ湯、腰にはジェット水流。

お湯は生薬入り疲労回復特別仕様。

うちの風呂はそこらのスーパー銭湯より上だな。万能さん特製なだけはある。

ぬるま湯プールに鼻先をつけて遊ぶチビも楽しそうで何より。というより、チビは私と同じ事をするのが大好きな犬なのだ。


部屋に戻るとマッサージチェアでパジャマ姿のミズーリが溶けていた。

チビを足元に放してあげると、マッサージの快感とチビを可愛がりたい欲求に身悶えし始める。面白い。

「トール。貴方ってサディストなのね。」

「ミズーリにだけ、そうかも知れない。」 

「どうしよう。私にだけって言葉にキュンとなってる私がいるわ。私にマゾの素養があるのかしら。」

私の思惑をきちんと分かっているチビが、弛緩し切ったミズーリのつま先をペロペロ舐め始めた。女神が絶句してしまったので、ほったらかしてみよう。

万能さんに交渉して、あまり健康に影響を及ばさないアルコールをという事で梅酒を出してもらう。

ゆったりのんびりリラックスしていると、チビを抱いたミズーリが涙目で抗議しに来たので、チビごとお姫様抱っこしてベッドに連れて行く。なんにせよ、そんな体調の時はさっさと休んだ方が良い。

ミズーリはたちまち抗議する気もなくなった様で、私の腕の中で真っ赤になっている。

いや別に何もしませんよ。寝るだけですよ。

「今晩こそはと期待したのに。期待したのに。」

いいから寝なさい。サービスで髪の毛を撫でてあげるから。

「髪の毛に性感帯が有れば幸せなのになぁ。」

変わらないね、君は。



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