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神々の無責任な後始末  作者: compo
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最近、うちの女神が服を着てくれない

エドワード領。エドワードはキクスイ王国王家分家にして、本家の血筋が切れた時に王家を継ぐ、いわゆる徳川御三家みたいな存在だ。

初代カンザザス王の姉の血筋だという。

私達は丘陵の形状からシュヴァルツ領に深く食い込む形になっている領界を超える。

シュヴァルツ家がある街はここからずっと南東にあたる。貫く主街道も南東に傾いているため、あいも変わらず辺境の地を私達は歩いている。つまり丘陵に沿った里道の、そこから更に入った草原を歩いている。

植生に多少変化があるのか、草の背が高い。

そして領界を超えて直ぐ予定通り(予想通り)うちの残念童女が騒ぎ始める

「ごーはーんー。」

私は別に空腹ではないのだけれども。

「ごーはーんー。私をこんな身体にしたのはトールなんだからね。責任とってよね。」

何故だろう。私はご飯を作る他に何もやってない様な気がする。

「ごーはーんー。」

分かりましたよ。面倒くさいからラーメンでも作りますか。

「あと、今日はここら辺をキャンプ地とする。わよ。」

この先中途半端に人が増えてくるから、ここで時間調節した方がいいらしい。

では。寸胴鍋に生麺を投入。今日はシンプルに醤油と鶏脂で。ネギを白髪に切り焼豚、メンマ、ナルトの王道東京ラーメンにする。

一応お茶碗にご飯も付けて、おろし生ニンニクをお好みで。

ミズーリはいつものようにテーブルを叩く事はなかったか、無言で啜り続ける。麺がなくなったらご飯をラーメンどんぶりに入れてレンゲで黙々と、そのまま顔中どんぶりにしてスープを最後の一滴まで味わった。

「深い。」

はい?

「分かんないけど、なんか色々可能性があるの。美味しいんだけど、まだ私にも何か出来る。でも美味しい。分かんない。また食べたい。」

そりゃラーメンだけでとんでもない種類がありますからね。今日のラーメンは単に私の好みってだけですし。

なんかぶつぶつ言い始めたので、女神はそのままにして新しい道具を万能さんから出した。

ドローンである。丘を並走する何かを調べるものを考えるうちに思い付いた。

ただし私には経験がないので、操縦と画面は直接脳に反映させてみた。出来た。

少しだけ離れた丘麓に大きな木があり、その下は草も少なく良さそうだ。

ラーメンどんぶり見つめてぶつぶつ言ってるミズーリを、万能さんがテーブルセットごとキャンプ地に運び、バンガローを展開する。

テーブルセットごと、椅子に腰掛けている女神がふわふわ浮いているシュールな光景。

思い付いたのでバンガローを少し広げ、テーブルセットをミズーリごと屋内に据える。もう一つテーブルセットを作って外に置く。まだ陽は高い。何をしようか。いいのかこんな調子で。

「いいのよ。」

そうですか。

そうもいかない気がする。ミズーリはそろそろ考える事を放棄したみたいだし,大雑把な指針だけでも私が立てておこう。

まずは地図かな。地図地図。

万能さんが出してくれたのは「天界地理院謹製5万分の1エドワード北部5」と「天界地理院謹製マップル・キクスイ王国」。

何やってんだ神様。


地図を眺めていると陽が傾いてくる。とはいえ晩御飯にはまだ時間がある。ならばバンガローを充実させてみよう。まずは絨毯だ。

折角タダで出来るのだから、毛の長いふわっふわの奴。

「うひゃあ。」

勝手に出したので、バンガローの中から女神の間抜けな声が響いてくるけど放置。

それから流しだね。普段は私がペットボトルから出しているけど、本格的にバンガローを持ち歩くわけだから(珍妙な表現3回目)、バンガローを展開している時はミズーリにも手軽に使って貰おう。あれはあれで私に頼み事する時は遠慮しているのだ。あと、トイレ。洗浄機付きの奴。ミズーリは女神で食べた物を排泄する必要はないみたいだけど、私は流石にノグソはもう勘弁なので。というか何故今まで作らなかった?実は開放感が新鮮だったんだよ。

ごちゃごちゃ作成に精を出していたらミズーリが思い詰めた顔で外に出てきた。

「トール。ラーメンの種類って他にどんなものがあるの?」

昼からひとりでずっと考えていたのか。

「醤油、塩、味噌、豚骨。派生系としてカレーもあるな。」

「全部作って。」

「飽きるから嫌だ。」

ラーメン大好きミズーリさん。

「なら味噌。朝食べたお味噌汁が美味しかったから味噌ラーメン!」

あの味噌とは味噌が違うのだけど、万能さんにお任せします。

「あとご飯。何あれ。お汁に入れたご飯が美味しいの。」

ヤバい。女神様がどんどん安っぽくなっていく。あと語尾が「の」になってる。低脳化が始まる。

「いや、ラーメンライスは確かに美味いが健康に良い取り合わせではないんだ。」

初めて知ったみたいで私の中の万能さんが動揺している。

「なので別メニューを添えます。」

と言っても味噌ラーメンだからなぁ。炒飯と餃子くらいしか思いつかないけど。

「全部食べたいの。」

はいはい。


ラーメンは昼作ったからイメージも簡単だ。スープをどうしようと思ったけど、万能さんが北の大地から取り寄せてくれた。あ、この店知ってる。

具はもやし、白菜、豚コマとシンプルに。

同時に餃子作り。と言っても餃子の皮に、ニラ・豚挽肉・ニンニクと、昼間には食べられない口がくっさい餡を一個見本で包んだら万能さんが続けてくれた。勝手に完成して炒められていく餃子。

では私的に今日のメイン、炒飯に参ります。

中華鍋を出してもらい、葱油をざっと掛け回すと玉葱を飴色になるまで炒めます。具は焼豚、ナルトをサイコロに刻んだもの(ナルトが町中華風)。ご飯が充分に炒まったら塩、醤油で味を整え胡麻油で香り付け。実は何気に野菜たっぷり和式中華セットの完成です。

ミズーリの感嘆の声と涙、テーブルをバンバン叩く音はいつまでも止まりませんでした。


後片付けを終えてバンガローに戻ってみるとミズーリが床で溶けている。

「この絨毯、気持ちいいの。気持ちいいの。」

そりゃまともに買うと高級車が買える値段の絨毯ですから。あと低脳化が始まってますよ。

低脳童女は放置してテーブルに改めて地図を広げる。

「明日中にはこの辺で一番大きな街に入れるの。」

うっとりとした声が床から聞こえる。

該当するスタフグロの街は昼間から私もチェックしていた。

「そこまで行けば何かが起きるの。」

「何か、か。」

「何も起きなければ起こすの。」

トンチキ女神がおかしくなったので入浴するよう命ずる。


しばらく地図に思い付いた事を書き込んでいると童女女神が服を着ないで浴室から出てくる。

ニッコリ微笑むと私の足元で寝転がってゴロゴロあっち行ったりこっち来たり。何がとは言わないけど丸見えです。

「やっぱり気持ちいいわ。この絨毯。想像通りの肌触り。」

声も落ち着いたし、低脳化は治った様だが下品ぶりが悪化したので、

「土下座します。」

女神が自分から土下座を始めた。

「このポーズだと、ちっぱいなおっぱいが大きく見えるでしょ。」

…もしかして最初から企んでましたか?

「トール攻略の為なら。」

なるほど。


風呂から出てくると、さっき作ったトイレからこれまた下品な叫び声がしてくる。

そして室内着を上だけきて下半身すっぽんぽんの女神が飛び出して来た。

「トール。ボタン押したらアソコを何かに突かれた。」

「女神にトイレは必要なかったのではありませんか?」

「無いわよ。でも出せない訳では無いの。何事も経験。」

しかし、ミズーリの性格を考ると予想通りの行動と反応でした。とりあえずぱんつを履きなさい。

「このままじゃダメ?」

駄目です。というか、ご開帳の連続に私もう引いてます。ドン引きです。

「やり過ぎました。はっちゃけ過ぎました。ごめんなさい。控えます。」

止める気は無いんだ。

あと土下座の前にぱんつ履きなさい。

「神様の本性なんてこんなものなんだからね!」

うるさい。あと何でツンデレ?


そのまま翌日の行動予定を決めると私達はベッドに入った。私の隣で寝ると多幸感に包まれると言ったミズーリは私の腕を抱えたら、直ぐに寝息を立て始める。

その幸せそうな顔を見る事も楽しいのだが、娯楽というものがこの生活には無い。

そういえば、私が死んだ夜に読んでいた推理小説。あれの結末どうなっているのだろう。

気持ち良く騙されると聞いて読み始めたものだ。読みたいなぁ。

いやいや。万能さん。読みたいとは思いましたが何これ。読んでいないものを私がイメージできる訳ないでしょ?

え?記憶ではなく私の前世の世界をそのままトレースした?あ、本当だ。私の寝室にあった本棚が置いてある。

精神安定も仕事のうちだから、何でも出来ますよ。ですかそうですか。

なら甘えちゃいます。その晩、私は寝落ちするまで読書を堪能しました。


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