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神々の無責任な後始末  作者: compo
139/147

材料が全部揃った日

(お尻?お尻を触りたいの?見たいの?)


だから、お尻を突き出さないで下さい。

我が家にお尻は余ってます。

佃煮が出来る程です。

毎日、見放題と言うか、見せつけられ放題ですし。

触ってないけど、多分触ると喜んで、更なるおねだりをしてくるお尻ばかりです。

どんなお尻なんだか。


(何?何?)

(お尻を出せばいいの?)

だから、君達。何しに集まってきているんですか!

(((お尻を出すため?)))

違います。

「…………。」


3人の女の子が集まってきました。

全員、似たようなボロを来てます。

というか、頭からボロ切れを羽織っているだけなので、裾を捲れはお尻も前も丸出しになります。

君達、吸血鬼じゃないの?そう聞いてきたんだけど、ここにも裸族しかいないのかな。

「…………。」


私が知っている吸血鬼は、もっと妖しい色気満点の紳士淑女か、熊的獣的なモンスターですけど。

この3人は普通の女の子だね。

「………。」


で、吸うの?

(私が吸うのはお母さんだけ)

(だから あなたは吸わない)

指刺されたのはメサイヤリーダー。さっきから、私の背中に隠れて顔だけ覗かせています。

(あなたは人間 でも人間じゃない)

(あなたも人間じゃない 女の子の姿をした何か)

「…………。」

(((だから血を吸う対象が今はいない)))


お母さんか。お母さんね。お母さん。

(あなたは何しに来たの?)

多分、あなたが考えている事ですよ。

私は3人のうち、後から来た2人を指差します。

(私の望みそれは)

((私達の望みそれは)

((助けて))

「…………。」


うーん。君達の望む形で助けられるかは、…わからない。

ずっと、ずっと考えていたんだ。

そして最近、一つの結論に辿り着いた。

私が出来るのは、「終わらせる」事だけ、だと思う。

そこから先の仕事は、そこから先があるとしてですけど、それは私の仕事ではない。

だから最終的な「助け」にはならない可能性もある。

それでも。

それでも良いのなら約束しよう。

「…………。」


(それでも構わない)

(私達は終わりたい)

(私達は残り滓)

(((だから終れればどんな形でも後悔しない 助けて 助けて! 助けて!!)))

「…………。」


わかった。

約束しよう。

君達を終わらせよう。

(((ありがとう)))

でも、その前に。

私は万能さんから、可愛らしいワンピースと女性らしい下着、靴や靴下を沢山取り出した。

「彼女」達がホームレスの様な姿でいる事が耐えられないから。

万能さん。アレは良いかなあ?


構いませんが

マスター達の影響力がなくなったら

つまり 森を出たら

その効果は消えますよ


大丈夫。

その時は私がこの森でやらなくてはならない事が全て終える時だから。

その時は、彼女達もここには居なくなる筈だ。


わかりました


私が用意したのはシャワー。

シャワールーム。

シャンプー、リンス、ボディソープ。

それに大量のタオル。

要は着替えと入浴セットだ。

シャワーの上には屋根をつけて四阿にしてある。

矛盾しているけれども、一時的な終の住処としては、充分に清潔な生活を送る事が出来ると思う。

彼女達のどこが吸血鬼なのか。

彼女達が吸血の対象とする「お母さん」とは誰なのか。

彼女が言った「残り滓」とはなんなのか。

それは、彼女達3人の顔を見て全てがわかった。


何故突然、私の背後から恐る恐る顔を覗かせているメサイヤリーダーが「吸血鬼」の話を持ち掛けたのか。

それは、私がこの森で「すべき事が全て終わる提示」を知るという事なんだろう。

その背後には、恐らくアイツがいる。

奴の敷いたレールの上を走るのは些か癪ですけどね。


シャワーもそこそこに、髪が乾かないまま着替えた「彼女達」の見送りを受けて、私達は帰途につきました。

ミズーリは相変わら黙ったまま、私の腰に手を回してます。


「くぅ」

なんですか?メサイヤリーダー?

「くぅ」

謝る必要はありませんよ?

「くぅくぅ」


なるほど。メサイヤの1人がここまで飛んで来たけど、メサイヤでも2~3日かかるここまで飛んでくる意味が今考えればわからない、と。

確か、郷を出たメサイヤは普通、単独行動でしたね。でも、私の所で暮らしているメサイヤは、基本的に日帰り探索しているから、こんな北まで来ない、と。


「くぅ」


だよね。ここまで離れちゃうと何か見つけても自然環境の齟齬で、駐屯地周辺で役に立たない事も多そうだし。

何より自然環境は明らかに厳しくなる。

わざわざ来る必要がないね。


「くぅ」


ふむ。わかった。

それがサリーさんを含めたメサイヤ側の見解だね。


「あのぅ。」

なんですか?ミズーリさん。

「さっきの3人。何処かで会った事なかったかなぁ。ずっと考えてんだけど、思いつかないの。」

ん?ミズーリが気が付いていない?

何故だ?わざと?

そうか、「わざと」か。

ならば、これが確証になる。

「卵」の立ち位置があやふやだけど、材料はこれで全て揃った訳だ。

「どうしよう。トールさんは全てわかったみたいなのに、なんにもわからない。ワタシ、女神なのに。」

違いますよ。君が神様だからわからないんです。

…そっか。「後始末」をするのは、私ではなく、ミズーリなのかもしれない。


その日の晩御飯はやっぱり大騒ぎでした。

牧場から届けられた鶏肉と卵で作ったのは親子丼です。

正確に言えば、軍に卸された食材を抱えて厨房班のマリンさんがカピタンさんを腰にぶら下げて特攻してきましたので急遽決めました。。


そういえば夕方かぁ。

「閣下、閣下。なんか突然大量に鶏肉と卵が納品されてきて困りました。どうしよう。」

なんで突然大量に?


「(土手の外に沢山鳥が押し寄せてた 凡そ10万羽 その内老鳥は自分から肉になった)」

なんだそりゃ。

「つうかな、帝国から逃げ出したそうだ。帝国中の鶏が、いや鶏だけじゃなく色々な家畜が一斉蜂起して森を目指して来たんだと。まだまだあちこちから来とるぞ。」


サリーさんなら鳥の感情もわかるんでしょうけど、なんで?


「儂にもわからん。食うために牧場で飼ってるのに、食われるためにくるかね?」

あゝそれは、前にも疑問に思ってましたけど、ヒッチコックじゃあるまいに、量が多すぎます。帝国で何かあったのかなぁ?

「儂の仲間が人化してコレットの街に潜り込んどるが、商人が殆ど逃げてしまい活気がなくなったとだけ、報告を受け取る。」

そんな事、頼んでませんが。


という訳で親子丼です。

姫さんと精霊とメサイヤが一緒にキッチンに立つ状況に、マリンさんは白眼を剥きながらきゃーきゃー騒いでましたが。

私の指導とレシピ本を見ながら一生懸命親子丼を作る姫さんに驚いたか当てられたか、その内プロの顔に戻って、三つ葉を散らした親子丼を見事に作り上げました。

味見役を仰せつからされたカピタンさんが

「ほ〜こくじこ〜はありまひぇ〜ん。」と、

軍のトップらしい男らしさで、マリンさんに首根っこ摘まれて帰っていきました。

…あの2人って付き合ってんの?

で、カピタンさん尻に敷かれているの?

…また尻が出て来たよ。


でと。

あいも変わらずガチャガチャしっぱなしの家族を前に、家長(?)として宣言しましょう。


「私がこの森で先頭を切って何かをしなければならない事はもうなくなりました。あとは、この国に、この森に住む生き物達がすることです。私は“その時が来るまで“食っちゃ寝ゴロゴロ駄目人間になる事を宣言します。」


パチパチパチパチわあ〜

何故か家族には喝采されました。何で?


「旦那様は最近になってこそ少しはゆっくりされてますが、だいたい働きすぎですわ。」

「そうね。あちこち行って色々な物作って、帰ってきたらご飯作って。たまにはトールさんも怠けるべき。」

ミズーリさん。トールさん「も」ですか?

「幸い私を含めて、閣下の指導の元に“指導者“が育っております。開校してまだ間もない学校ですが、ミク姫様の指導は好評ですし、ツリー様サリー様も一族を率いる者としての存在感は日に日に増す一方です。」

「アタシは空飛ぶアリスが一人前になったから、特に何か教える必要ないんだよね。マリンとこに昼飯を食いに行くくらい?」

サリーさんはそろそろ一人称を固定しなさい。

「んん〜。我が主って言う時はババアキャラの儂の方が似合ってるし、はすっぱキャラの時はアタシだし。だから、アタシが飽きるまで付き合ってもらおうぞ。」

一行の中で人格崩壊させないで下さい。


「んで。我が家の粗大ゴミ宣言したトールさんは本当にどうするのよ。」

「アタシも暇になるし、子作りでもすっか?」


うん、それもいいかもね。


「ななななななななななななななななんですとおおおお!」

姫さん、「な」と「お」が多い。 

「それならば私。深窓の令嬢かつ帝国第四皇女。おっぱいは控えめですが、先っちょピンクで真っ白な身体を持ち、何より処女たる私を一番最初にご賞味あれ!」

なんですか、姫たる者がはしたない。

「処女と言うならアタシも処女だぞ。」

「大体、私達の中で男性経験ある人はいるのでしょうか?」

そう疑問を呈するアリスさん。私を掴むその手はなんですか?

「早い者勝ちなんでしょう?」

違います。


大体ですね。

私は旅人です。旅人なんです。

ひと所の用事が済めば、また旅立ちます。

子供が出来たとて、責任は取れません。

責任取りません。

「「「「「構いません」」」」」

いや、少しは構えよ。













……………。

今5人分の返事無かったかな?

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