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神々の無責任な後始末  作者: compo
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何やらサリーさんとアリスさんが、メサイヤ部屋でコソコソ話してましたけど、とにかく晩御飯が出来ました。

目の前には何人かのメサイヤが、今や遅しとお蕎麦が茹で上がるのを待っています。

いくら万能さんが完璧コピーしてくれるとはいえ、出来上がった側から私を通じて万能さんから蕎麦を持って行く幻の霊獣ってのはどうなんだろう。


「アタシはお前らをそんな意地の汚いメサイヤに育てた覚えはありません!」

「くー。」

「くー。」

なんか、あそこではサリーさんが、メサイヤちゃんの前でおかーさんになってるし。


ま、あっち(メサイヤ+精霊部屋)はあっちで、一度食べた料理は自分達で再現しちゃってますから。

朝ごはんなんか、お味噌汁に鰹節削って出汁取ってますからね。こっちより沢山花かつお使って。多分今日にも麺棒とかおねだりされるんだろうなぁ。

で、可愛もの好きの姫さんが、きゃーきゃー言いながら卒倒するんだろうな。


両手をパンっと叩きまして。

天にまします我らの父は、碌でも無い創造神だったので無視して、御飯を作ってくれたみんなありがとう。


では頂きます。

「「「頂きます」」」


今晩の献立は、ミズーリ特製十割蕎麦せいろ、海の幸と野菜たっぷりの天ぷらです。

試食と称して、森の精霊(大)に、あちらの部屋で揚げた天ぷらを食べさせられましたけど。

蒲鉾の天ぷらはもっと薄くしたほうが良いかな。歯応えがありすぎると、天ぷらの衣が脱げちゃうから。練物の天ぷらは、練物の段階であげて有る物が多いから、油がキツくなっちゃうよ。

あと、山菜の天ぷらはきちんと灰汁抜きしてあるから美味しいけど、筍は固いからやめた方が良いかな。やるなら穂先でね。でなければ、圧力鍋か圧力窯使っていいから。

「(わかったー)」


「トール様はトール様とはいえ、精霊に手づから食べさせて貰えるんですね。」

まぁ、なし崩し的にあの人達も家族ですから。(精霊の中身は全員ツリーさんだし)

「てゆうか、アリスさんってお箸使えるのですね。私は最初苦労したのに。」

そう言う姫さんは、箸で大好きな絹豆腐を摘めるようこそなりましたけどね。

「最初からです。最初にキクスイの草原でカレーうどんをご馳走になった時から、何となく使えましたね。」

「考えてみれば、アタシも最初から使えてたな。」

「トールさん?何かした?」

知らんがな。多分、万能さんのサービスでしょう。


因みに食事後のアリスさんはガチガチになってましたけど、我が家のベッドは例のアレな機能付きなので、目を閉じた瞬時に全員見事に熟睡します。

「お、お粗末様でございますが。」

と言った瞬間です。翌朝まで、疲れもストレスも残さず熟睡してくれるでしょう。

私を真ん中に、左右はミズーリと姫さん。

その外側にサリーさんとアリスさん。

私の胸の上にツリーさん。

いつの間にやら1つのベッドに6人も寝てる、安いフェリーの船室みたいになってました。

今日はこっそり夜中に起きて、ツリーさんと校舎建設に行きますけどね。







「本当に何も無かった…」

豪快な寝癖を撒き散らして、翌朝1人ベッドでアリスさんが呆然としてます。


ミズーリは七輪でメザシを焼き始めているし、馬くんに朝ごはんをあげた姫さんは、お米を研いだあとはお味噌汁の仕込みに取り掛かってます。。

ツリーさんは浅漬けを作っているし、私とサリーさんは朝から粗大ゴミになってます。


そんないつも通りの朝の風景。

今日の朝ごはんは、和食の日でしたっけ?

「違うわよ。アリスも当家の嫁になったのならば、トールさんの好みは知っておくべきなのです。」


うちの女神が姑になったらしい。


「…お風呂入ってきます。」

寝起きが苦手そうな王国騎士様は、バスタオル片手に、洗面台へ消えて行きました。

っていうか、なんで全裸なんだろう?

あと、お身体はお粗末では無いと思いますよ。 

「期待してたんじゃねぇの?何か昨日、そんな事ポロって言ってたぜ。」

ベッドに入る時は服着てたけどなぁ。

それにしても、随分と堂々としてたけど。

「ほら、夕べの風呂上がり、みんなしてバスタオル一丁でアイスの取り合いしてたじゃん。でも主は、知らん顔して酒呑んでたから。アタシもそうだけど、家族としての距離を縮める為にぱんつを脱いだんじゃないかなぁ。」

そんなトンチキな距離の縮め方なんか、鬼に喰われちまえ。

「解放感がなかなかだぞ。」

彼女はまともだと思ったんだけどなぁ。

また我が家に裸族が増えたか。

それも2人も。


「うまうま!ですわぁ。」

いや、確かに。備長炭を使って七輪で焼いたメザシは醤油垂らしただけで美味いけど。ていうか、うちのミズーリさんは、備長炭やらウルメイワシやら魚沼産コシヒカリやら烏骨鶏の卵やら、何処から知識を拾って広げて来るんだか。

そして、卵かけ御飯とメザシと大根のお味噌汁と茄子の浅漬けを好んで食べる、帝国皇女様が我が家にいるんだよね。

すっかり所帯染みて安っぽくなった姫さんの責任をどう取ろうかと、テキトーに頭を悩ましていると(無責任男)

「こんなお魚見た事有りません!」

って、アリスさんが驚き出しました。

あ、そっか。イワシって海の魚か。

「ベンガラ国なら獲れますかしらね。」

「我が家は何でもありって、あのチンクシャな王子に聞いてるでしょう。」

「ミズーリ様、王太子はまだ年若いだけで、チンクシャでは有りません。」

「何だ。海の魚なんか珍しいんか?」

この辺は内陸ですからね。流通網が発達して無い所で海産物を食べる事は難しいでしょうね。

私達は、どうとでもなりますけど。

そして、どうとでもしてますけど。

「そっか。海か。そっか。」

何かを思いついたサリーさんがメザシをガリガリ齧ってますが、それはイワシを結いている藁ですよ。


「行って来るぜ!」

「「「くー」」」

サリーさん率いるメサイヤ探索隊は今日も元気に飛び出して行きました。

「「「(行ってきまあす)」」」

森の精霊達は今日も金山に、森の何処かに消えて行きます。

「チビちゃんとお散歩行って来ますね。」

今日は出掛けない日と言って有るので、姫さんは散歩と称して、妹ちゃんに会いに行くんでしょう。

チビに顔を舐められて、ひゃーひゃー言ってるであろう声がいつまでも外から聞こえてます。

ミズーリちゃん愛妻バージョンは、洗濯に取り掛かります。

昨日から着の身着のままのアリスさんはすっぽんぽんにひん剥かれたので、適当に出してあげた、フリフリなワンピースとシンプルな白い下着を抱えて(鍛えて有る身体なのでちょっぴり筋肉質のB、でも柔らかいぞ、だそうです)ウォークインクローゼットに消えて行きました。

ブラの着け方なんか、私知らないから、ツリーさんが連れ添ってます。

と言うか、ツリーさん知ってるのか。


「ねぇトールさん。」

なんですか?ミズーリさん。

「大人の女性が増えて来たので、そろそろ生理用品を揃えたいの。ナプキン派かタンポン派で別れるだろうし。」

それを元おじさんの私に聞くか?


「ドドドドド。」

どどん?アリスさんが攻めて来ましたよ。

「違います!ど、どどどうでしょうか、私。」

「(マスターのプレゼントでしょ この服)」

「私は子供の頃から騎士になる事だけを考えて来ましたから、こんな女らしい服を着るのが初めてなので、少し照れ臭いのです。」

貴女さっきまで全裸って、痛いから、ツリーさん私の足首にローキックをかまさないで下さい。

「(いいから素直に褒めるの)」

はい。

ツリーさんが怖い。

とりあえずクルッと一回りして貰う。

この騎士さん、少し目つきがキツめだけど、顔立ちは整っている美人さんでは有るので、お世辞抜きで可愛い、というか美人さんには間違いない美人さんなので、素直にそう褒めた。

ら、真っ赤になって座り込んじゃった。

はすっぱ姐さんな、サリーさんと反応が同じだった。


「(男尊女卑を罷り通っているからねえ マスターみたいに下心抜きで褒められた女性ってあまりいないから)」

「少しは下心を持って欲しいものだけどね。」

うるさいミズーリ。

「あと、私もミク姫みたいにミニスカートを履いて寝っ転がって、自然にスカートを捲れ上がらせた方が良いのでしょうか?ミク姫よりは2つ3つ歳行ってるんですが。」

勝手にしなさい。


「そろそろ洗濯物を干す場所を考えた方が良いわね。お嫁さんも増えたし。」

うちのポンコツ女神は、乾燥機の使用をあまり好みません。

「だってお日様で干した方が、いい匂いするじゃない。」

前にそれは細菌の死骸の匂い、と一回言ったら泣かれたのです。

(女神が変なとこで泣きなさんな。と、私は言いたい)

屋上開設案は、洗濯物の下着が丸見えになると姫さんが反対したので、そのまんまペンディングになってましたね。

いつもは家族で出掛けて、森の何処かで何かをやってる日々なので、部屋干しで充分だったからね。

雨もあまり降らないから、湿気が思ったよりないし。

そだね、マジックミラー的な壁にして屋根を強化ガラスの温室とか作っちゃう?


お望みでしたら


あゝ、万能さんはまだ出てこない様に。

君とミズーリが組んだら、余計なことしかしないから。

と言う訳で、今日も洗面所に洗濯物を干す女神です。

「あの、殿方の下着と一緒に干すのは、その。」

「何を今更言ってるの。朝がたといい、さっきがたといい、すっ裸で歩いていた王子付き騎士さんが。」

「それはその、勢いと寝ぼけで。」

「うちのトールさんは、ぱんつやぶらじゃー如きじゃ動じないから大丈夫。」

「それはそれで女としての矜持が…。」


洗面所からは酷い会話が聞こえてきますが、私はツリーさんと学校教材として、教科書の選定に入ってます。

この世界の科学力や常識、識字率などから、少年兵達に最適なレベルを選ばないといけませんからね。

と言っても、見本は私の国の小学生向きの教科書。掛け算九九ってみんな出来るのかなぁ。

いく通りかの見本教科書を作って、姫さんやカピタンさんに選んで貰おうと、こういう訳です。

ツリーさんは、森の知識人なので、人間の頭の中くらいわかるそうなのです。


しかし、これは小学1年生の「りか」だぞ。

「理科」じゃないんだぞ。

「(世の中森羅万象に一切疑問を持たないから まずは疑問を持たせる所から それは大人も同じ)」

掛け算どころか足し算引き算も怪しいとはね。

「(森の中には 貨幣経済は必要ないから)」

…それで、うちの「普通の人間の女性」2人は、あんなに刹那的なのか。

「(好きな異性とまぐわって 美味しいものを食べる 生物の基本)」

それで我が家は裸族に支配されたのか。

あれこれ頭を抱えていると、Force gate Openになって、サリーさんが帰ってきました。


「海だ、海だぞ主様あっ。」

なんの話ですか?私はちょっとショックで口からエクトプラズムが抜けかけているので、報告は簡潔にお願いします。

「海の魚だ。食い物だ。人間には出来なくても、アタシらメサイヤなら海への往復は半日で済む。で、とりあえずアタシが捕まえて来たのがこれだ。卵持ってるぜ。」

ふむふむ。この魚はアレに似ているな。


鱈ですね

スケトウダラによく似ていますし

味はほぼ一緒です

卵は当然タラコになります


だよねー。

ムニエルにしても美味しいし、乾燥させて棒鱈にしてもいい

タラコは唐辛子で漬けて明太子にするも良し。

おにぎりにも、スパゲッティにも最適な塩っけだね。


うむ。サリーさん、こちらに。

「?」

メサイヤ形態から、いつもの芸者さん形態に変わったサリーさんをそっと抱きしめると、頭を撫でてあげる。

途端に真っ赤になったサリーさん、目の焦点がどっかに行っちゃうけど、あと隣でミズーリとアリスさんが何か騒いでいるけど。

我が家では、美味しいが正義なんです。

可愛いは姫さんに任せるので、私は美味しいを追求します。

(どうせ碌でも無い生活なんですから、少しは目標を立てないとね)

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