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神々の無責任な後始末  作者: compo
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猪豚(美味そう)

Force gate open!

Force gate open! 


「(大変だー)」

「(デカいのが来るぞー)」


ちっちゃな精霊さんだけ、わちゃわちゃと駆けずり回ってますけど、でっかい精霊さんは私の中華鍋の前でレンゲをかちゃかちゃ鳴らして催促してるから、小さな彼女達はわざと遊んでいるのでしょう。(レンゲなんか何処から出したんだろう?)


ほら、可愛さに負けた姫さんの顔が上気して、味噌の掻き混ぜ方がテキトーになってます。


とは言うものの、サリーさんが何か馬鹿でかいモノを運んで来てるらしいので、なんとかしようとした結果、万能さんが勝手に壁を一面外に向かって倒すと言う、どこぞのナンタラ警備隊の基地みたいな展開を我が家が始めましたよ。えぇえぇ。なんなんだ我が家。


「居たぜ居たぜ!我が主ぃぃぃ!」

何やらデカい茶色い物体を、メサイヤ状態のサリーさんが運んで、そのまま突っ込んできました。

そして。


「どっせい!」

「ボベら!!」


姫さんにぶん殴られました。

「まぁまぁ何でしょう。何て事でしょう。宜しいですか?サリーさん!このお家は私が!帝国第四皇女たるミク・フォーリナーが!日がな一日チビちゃんと食っちゃ寝ゴロゴロ食っちゃ寝ゴロゴロする為に!毎日毎日一生懸命コロコロかけて掃除していると言うのに!何で我が家の家族たる貴女が土足で、おまけに化け物みたいな猪豚を!!」

猪豚?これが?体長は牛の倍あるぞ。

後、啖呵の中身が色々情け無い。


「何で?何でメサイヤのアタシが普通の人間に殴られるんだ?あり得ねえぞお!」

「私は旦那様の妻ですから。我が家を汚すものには無敵です」

ふん!と鼻息を鳴らして腕を組む姫さん。

「子種も貰えてないのに?」

「旦那様に抱かれた時は更に無敵になります。無敵艦隊ミク・フォーリナーです。」

姫さんはスペイン皇女だったのか。

「そうなの?」

いや、ほっぺにぐーパンチの跡を真っ赤にした顔を私に向けてもね。だからこう言おう。知らんがな。


「トールさん(全知全能)・あたし(女神)・ツリー(精霊)と暮らして、トールさんのご飯食べてるし、一緒のベッドで寝てるし。それはそれで加護はあるわけでありますよ。」

今、私の後に変な肩書きつけなかったか?ミズーリさんよ。

「知らんがな。はあと」

おめーなー。


「あのう、そろそろ宜しいでしょうか?」

えーと。猪豚が喋りましたよ?

「メサイヤが喋るのですから、猪豚も喋ります。」

そうなの?と足元で真っ赤な顔して手を伸ばしてるツリーさんに尋ねます。

「(この猪豚は 猪豚の女王 猪豚は女王からのみ繁殖する 普通の猪豚は喋れないけど 女王猪豚は喋れる。」

成る程ねえ。女王蜂とか女王蟻的な生態なんだ。

「(ところで 猪豚を宙に浮かすのは大変)」

ありゃ、姫さんが怒り狂ったから、ツリーさんが不思議な力で絨毯が汚れない様に猪豚女王を浮かしてたのか。

えーと。万能さん?


御意


ツリーさん、万能さんに引き継いだから、もう力を抜いて大丈夫です。

「(うひー)」

疲れて尻餅をついたツリーさんを抱き上げてヨシヨシしましょう。ヨシヨシ。

「「「あ、良いなあ」」」

3人が指を咥えて迫って来ますが無視して、チ浮いてドタバタしている猪豚女王に向き合います。

何ドタバタしてんの?

「う、産まれるぅ。」

はい?


「(産婆隊出動!)」

「「「(((ラジャー!)))」」」

私は腕の中にいるツリーさんの号令一番、わちゃわちゃしたり、レンゲを叩いていた精霊さん達が敬礼すると走り出しました。

何処かに。

まもなくおっきなタライを持ってくると、メサイヤ隊が手桶リレーで温泉からお湯を運び、手の空いた精霊さんは沢山の布を用意します。


因みに、女神・姫・成体メサイヤの馬鹿三姉妹は、一応女性なんですが、ものの役にも立ちません。

というか、サリーさんは臨月の猪豚さんを捕まえて来たのか?


「猪豚女王はただでさえ図体がデカいのに、妊娠しているかどうかとか、経産婦でもないアタシにはわかりませーん。」

サリーさん、クローゼットにハウス。

「なんでよ!ああああ、足が勝手にいい。」

仲間はずれは嫌なのか、サリーさんは自ら両足を両手で抱え込むと土下座しました。

空中で。


そんな馬鹿騒ぎをしている私達の足元では、沢山の猪豚が産まれてます。 

まだ目も開きませんが、精霊さんによって産湯を使った後は、万能さんによってヨチヨチと宙を歩き、母親の乳首をしゃぶりつきます。

よく見る豚の生態ですね。

勿論、可愛いものは正義な姫さんは目を細めてウズウズしてます。

一応、抱き上げる事は我慢しているみたいです。

「お近づきの印に、この仔達を食べても良いですよ。産まれたでの猪豚は、骨まで柔らかくて美味しいですから。」

はあ?おい猪豚!今なんてった?


「いやあね。私らは南方で暮らしているんですけど、いわゆる天敵がいないのよ。元々厳しめの風土に加えて、山向こうじゃ鬼がいるじゃない。鬼って何故か人間は食べるのに、野生動物は食べないから。私らは雑食なんだけど、お肉も食べるから。小動物や虫を食べてるうちに、南方が荒野というか、砂漠になっちゃった。てへ。」

「「(お前らの仕業かー!)」」


おお!精霊さん達渾身のツッコミ炸裂!


「どゆこと?」

ミズーリの質問に答えますか。

「教えて!トール先生。」

ハイハイ。


自然界には食物連鎖と言うものがあります。

細菌という小さな生物を土中生物や植物が食べ、その土中生物や植物を更に大きな生物や虫が食べ、その生物や虫を更に大きな生物や鳥が食べ、その大きな生物や鳥の死骸を細菌が食べる。

そうする事によって、色々な生物がその土地土地の環境に合わせて繁栄して行きます。

しかし、そのバランスが崩れた時、その土地の生物と土地はいずれ死に絶えます。

帝国の南方は人跡未踏の荒野だそうですね。

おおかた、増えすぎた猪豚が動物も植物も食べ尽くしたってあたりじゃないですか?


「完全正解!」

「「「(完全正解!じゃない!)」」」

またまたツッコまれる猪豚女王さん。 


そんな事が起きない様に、私は森の開発をツリーさんと相談しながら慎重に進めているんですけどね。 

「へー。」

「知りませんでしたわ。」

「我が主も、少しは物事を考えているんだな。」

あのですね。


とりあえず、既存の牧場の近辺は、鳥牧場と甜菜畑で埋まっているので、甜菜畑の更に南側を指定しときます。

「「「(わかったー)」」」

ツリーさんが地図にバッテンを入れると、なんとなく見た目が一番歳上っぽい精霊さんに渡します。

明日、勝手に牧場を作っとくので、猪豚女王はそちらに移って貰う事にしました。

それはいいけど、この宙に浮いてる猪豚親子どうしよう。


なお、姫さんに聞いたところ。 

「我が帝国でも動物は普通に屠殺しますし、私みたいな者は思い入れを作らない様に、家畜達には極力近寄りません。だから、旦那様。赤ちゃん猪豚達を私の視界から外してー!私はチビちゃんとツリーさんで充分なのおぉ。」

チビとツリーさんを抱きしめる姫さん。

こらこら、2人とも苦しそうですよ。


だ、そうなので猪豚親子はメサイヤ部屋に移動、ぷかぷか浮いたままお乳を飲んで寝ちゃいました。

因みに、猪豚女王は何体かいて、それぞれコロニーが出来ているので、猪豚女王だけ牧場に移動させようという提案が猪豚女王側からありました。

南方に残された猪豚は、南の荒野で死滅するかもだけど、それで自然荒廃が止まるならヨシ!

という、シビア過ぎる判断です。

猪豚女王達は、ある種のテレパシーで長距離間意思疎通が可能だから集めとくそうです。

なんかこれで食肉問題が解決するかも。


んじゃみんな。晩御飯にしますよ。

「「「(わー)」」」

「「「くー」」」

メサイヤ部屋は精霊とメサイヤが並んで大騒ぎしてます。

屋根付近では猪豚女王が蒲鉾食べてるし。

「なんじゃこりゃ。」

あー、サリーさん。これが我が家です。

そろそろ慣れなさい。

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