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神々の無責任な後始末  作者: compo
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歓迎会

何はともあれ、温泉も無事完成しました。

「源泉かけ流しのアルカリ泉。効能は疲労・肩凝り・切り傷」と精霊さんが看板を立ててくれました。気が効くなあ。

なお掃除は精霊さん達が引き受けてくれるそうです。

牧場から卵を持っていって温泉卵にする事を許可して欲しい、ってなんだかお駄賃みたいな条件で。


「(効能は)」

いや、バスタオルを肩まで巻いて、温泉うさぎとか、誰に教わりましたか精霊さん?


あっしも温泉卵って食ってみてえ


馬くん?君は草食動物でしょ。


「おい、この馬喋るぞ。」

いや、喋りませんよ。

サリーさんは私と並んで、馭者席に座る帰り道です。

馬くんは意思疎通を直接脳に反映させるんです。ツリーさんやメサイヤちゃんと同じです。

「なるほどね。それなら分かる。」

姫さんが聞いたら嫉妬で暴れそうですけどね。

新たな家族を乗せて、私達はのんびりと帰宅しました。


「あらあらまあまあ。あらあらまあまあ。」


家に帰ってみると、既に姫さんは帰ってきて、おさんどんしてました。

割烹着に頭巾でお米研いでます。

その格好であらあらまあまあはおばちゃんですよ。


「あらあらうふふ?」

…誰ですか?水先案内人の漫画を姫さんに読ませた人は。

「あたしあたし。ミクが何やらキャラ付けで迷ってたから。姫キャラが通用しないって悩んでんだもん。」

何か姫さん疑問系ですけど?

「まあまあサリーさん。いついらしたんですか?」

「我が主が風呂沸かしたってわかったから、とりあえず全裸待機してみたんだ。」

「何ですと?」


あ、妹ちゃんの口癖が移ってる。


「そしたらよー。問答無用で女湯に投げ込まれた。」

「ですよねー。旦那様はそこら辺厳しい方ですから。」

「お前、まだ抱かれて無いの?」

「無いのです。サリーさんが来るまでになんとかと頑張ったのに。でも私も知らなかった気持ちいいところは開発してくれました。」

「いーなー。なぁ我が主様よー。アタシもー頼むよー。」

むにゅっと姫さんのおっぱいを甘掴みしながら強請られてもなぁ。

「おやおや、サリーさんのおっぱいって以外とささやかですのね。」

サリーさんのおっぱいを揉み返す姫さん。

「いやーね。アタシら人間に化けてんだからおっぱいの大きさなんか自由自在なんだわ。でもよ、ほらこの家のおっぱいに合わせたんだけどさ、そしたらミズーリとツリーにボコられた。もみもみ。」

「何をやってんですか何を。もみもみ。」


そこの馬鹿おっぱい姉妹、ハウス!

「いやぁ。座敷牢はいやぁ!」

ん?一晩元座敷牢に泊まった姫さんにトラウマが生まれてる?

「待て待て待て待て。アタシの身体の爪先から羽根の先まで、我が主様に逆らえなくなってるぞ。なんだこれは?」

細胞の隅から隅まで私に隷属したとでも言うんですかね。

さてと、みんなに通告しますが、この家ではいやらしい事禁止します。

「「「えー!(えー)くー」」」

えーじゃない!

…今、メサイヤちゃん混じってなかったか?


「というわけで、南の様子を探っていたんだ。」

「まぁ。」

「まぁって、それだけ?」

「旦那様が居ますもの。」

「いやね。アンタらの我が主様への信用は理解したけど、ミク姫は単なる人間だろ?そんなお茶飲んでほのぼのしてていいんか?」

「そおですねえ。後でうちのカピタン将軍が来るから報告しときましょう。キクスイとラニーニャには警告を出しておきます。」

「そうは言うけどよォ。人間の移動速度って馬が最速だろ。鬼が出たら逃げようが無いだろ。」


「卵焼きを焼いとけばいいのね?」

「(私は穴子と干瓢を煮るぞー)」

「まぁ旦那様の事だから、何か考えていますわよ。」

鮪は中トロと赤身、白身魚はヒラメ・カンパチ・ハマチ、甘海老、イカタコ。

あ、ヒラメはえんがわも欲しいな。


「おい、主様達がアタシらほったらかして料理始めたぞ。」

「ご飯は火を入れましたよ。あと、お海苔を炙っておきますか?」

「ミク姫までそっちかよ。」

「くくく!」

「お前らまでか?てか、なんでみんなして刃物を上手く使ってんだよおおぉ!」

メサイヤちゃん達は普段から、蒲鉾やおでん種を包丁で切ってますからねえ。

どうやってか羽根で。


まぁまぁ、考えてはいますよ。森とキクスイは隧道を避難場所にしてもいいし。

なんなら、空に浮かんどきゃいいし。

「いくないし。どうやって人が空を飛ぶんだよ。」

「旦那様は飛びますわよ。あちち。」

割烹着姿のまま、七輪で海苔を炙る帝国第四皇女様。

「人は飛べないぞ。」

「旦那様と暮らしてると時々飛べますわ。ほら、窓から外をご覧なさいな。」

とててて時々窓まで歩いて行ったサリーさんの顎が落ちました。

器用に自分で戻したサリーさんが叫びました。

「この家浮いてるうううう!」

喧しいなあ。


この家は特別だけど、人は浮く事が出来ますよ。

そだね。気球の導入を検討しようかな。

南部に観測所を設ける必要もありそうだし。

「こんにちは」

ほら、ちょうどいいのが来た。


「鬼の活動の活発化ですか?」

面談室には姫さんとサリーさんを同席させました。

「…………勝てますか?閣下。」

勝つ事は、はっきり言って簡単ですよ。問題は避難民の誘導です。

森の方は、鉄道馬車で避難してRC建物及び隧道に逃げ込めば私とミズーリで対処しますが、今後私達と縁を深めるであろう2国は犠牲者が出るでしょうし。


「サリーさん、どのくらいの時間で鬼が溢れてくるのでしょうか。」

サリーさんが人化したメサイヤだと知っているカピタンさんに、メサイヤからの情報と伝わる様に姫さんが質問します。

「そうだな、後1年ってとこだな。まだ時間はあるけど、人間にはあっという間だろう?」

「旦那様?」

充分とは言えないけど、時間はありますね。

「はい、私もそう思います。カピタン将軍?早馬をとりあえずキクスイ王都に出して下さいな。メサイヤさんの報告として警告を。」

「わかりましたが、信じてくれるでしょうか?」

「ミカエル王子は旦那様の信奉者ですから、私と旦那様の名前で書状を出せば多分大丈夫です。」


「なんなら、メサイヤを1人飛ばすぜ。早馬じゃなくメサイヤ便なら信じるしか無いだろ。」

メサイヤは本来なら幻の霊獣ですから、慣れてないキクスイの人がショック死起こすから駄目です。

「ニンゲンって弱えーなー。」

「いや、閣下の周りが異常過ぎるだけです。」


ふむ、ならばこうしようか。とりあえず観測所を作って監視を怠らない様にする。

そして、鬼が水を嫌うのなら川を作る計画を立てるってとこれで。ラニーニャ国は水の国ですから工事も楽でしょうし。

観測所には、精霊さんを交代で行ってもらうとか。

「なんならメサイヤでも良いぜ。その為にアタシは南へ飛んだんだからさ。」


「ところでミランカは落ち着きましたか?」

「あの年代では、学力も武力も飛び抜けてますからね。容姿も姫さまそっくりですし(胸も大きいし)、早速ファンクラブが出来てますよ。ご本人はお姉様お姉様ですけど。」

「そうですか。なにかと我儘な子ですから、しっかり指導をお願いしますね。後なんか不敬な事考えませんでしたか?」

「いえいえとんでもない…(閣下?姫さまがまともなのですが)…」

「(あゝ、あの姉妹はお姉ちゃん子妹ちゃん子ですよ。皇族故に中々会えないみたいですし)」

「(なるほど)」

「なんですか?旦那様?カピタン?」

さっとテーブルを越えて飛び掛かり、カピタンさんを裸締めに捉えた姫さん!

の脇腹を突いてへなへなにさせました。

「あひん!」

下ネタ言うくせに、色っぽく無いなあ。

「あ、良いなあ。」

人差し指を咥えて羨ましがるサリーさんを無視して、カピタンさんに伝えるべき事をきちんと伝えましょう。


駐屯地及びキクスイに空軍を作ります。

文字通り、空の軍隊です。

両国兵士のうち、高所に強い者の希望者を募って下さい。

飛行船ミク・フォーリナー号とまではいきませんが、いざという時の避難船として空に逃げられる様に訓練しましょう。

「畏まりました。けほけほ。鬼の件と共に、早急に動かせて頂きます。」





「でーきーたー!」

「(海苔巻きと軍艦巻きもでーきーたー)」

「「「くー!」」」

私はお茶を湯呑みに注ぎます。

静岡新茶は甘味があって好きなんです。

私の目の前には、寿司桶に並ぶお寿司。

お誕生日席にサリーさんを座らせて歓迎会の始まりです。


「何何何何何何何何?」

「(あなたの歓迎会だよ)」

「ミズーリ様、熱燗ってどのくらい付けておけばよろしいのですか?」

「人肌というけど、トールさんお茶呑んでまったりし始めてるし。見て、目が細くなって見えなくなってるから。」

「あのお顔を沢山して頂かないと、妻の沽券に関わりますわね。」

「…あっちの2人は歓迎する気なさそうだけんども」

「(和食にお酒を付ける作業は あの2人の特権だそうよ そう宣言してた)」

まぁ、そんなあっちこっちに散弾銃みたいに落ち着かないのも、それも私達ですから。


お寿司つまりお刺身つまり生魚。

魚介大好きメサイヤちゃんは、メサイヤ部屋から出てきてます。

お寿司なので、ちゃぶ台を2つ出して寿司桶を真ん中に。

お茶とお醤油、生わさび乗せの小鉢をみんなの前に置いて、では。

「「「いただきまーす。そしてようこそサリーさん!」」」

「「「くー!(ワン)」」」

「……………………。」

「泣いてますの?」

「混乱してる。」

だろうね。サリーさん白目剥いてるし。

「…この家は一体なんなんだ?」

「旦那様を夫として主として支え、旦那様の為に生き、旦那様のご飯を食べる、旦那様の家族ですわ。あと願わくば旦那様の子種を頂戴できれば、女としてこれほど幸せな事はありませんわ。」

「早口で断言しやがった。おいツリー!森の精霊として、このお姫さんの言う事はどうなんだ?」

「(大体あってる)」

「あってるのかよ。おい我が主様よ?」

知らんがな。ほら、この漬けマグロ美味いぞ。私の国(世界)から取り寄せた大間の一級品を大胆に出汁醤油に漬けたものだ。

姫さんの炊いたご飯は魚沼産のコシヒカリ。

魚だけじゃ無いぞ、鮑や赤貝は房総の採れたて。ほら、メサイヤちゃん達が被りついてる。

「アタシらはそもそも飯を食う習性はないんだよ。なのに、なんでみんな箸を使いこなしてんだよ?」

「あら、サリー。妹達に負けたの?」

「負けてない!アタシも食う!我が主様のご飯は美味いと頭の芯から要求してくんだよ。食うよ食う!」

そう言うと、サリーさんは荒汁にガバっと箸をつけました。

「そうそう一つ言い忘れてた。」

なんですか。

「これから、宜しく。」

「あはひまへひゃはいへふか。」

姫さんはお茶でわさびを流し込みなさい。

「……ごっくん。当たり前じゃないですか!大体第二夫人の私でさえ歓迎会を開いて貰って無いのに、この果報者!ですわ。」

そう言えは、姫さんは一晩座敷牢に閉じ込めたら、隷属しちゃったんだっけ。

「おかげで今、幸せですから。」

ですか。

「です。わ。」

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