温泉が沸いた!(沸かした)
姫姉妹が仲良く手を繋いで司令部に行き、私達も朝ごはんの片付けを終わらせると馬くんの引くチャリオットで出発しました。
何故か盛大に寮の窓から歓声を受けて。
この馬車には姫さんは居ませんよ?
アスファルト舗装したメインストリートを遡る事30分、ほんの少しだけ木々で隠してある地点から森に入ると、そこには多少未整備な杣道が続き、馬車鉄道のレールが敷いてあります。
ここは先日、色々暴走した姫さんを落ち着かせる為に家族で渓谷に出かけた際に開いた道。元々小さな行楽地にする予定なので、同時にレールを敷いときました。
まもなく川が寄り添い、爽やかなせせらぎを聞きながら、のんびりな午前を過ごします。
今日のお供はミズーリ、ツリーさんとメサイヤちゃんが1人だけ。
リーダーは留守番しますと言って、羽根をピンと立てました。他のメサイヤちゃんは、今日も森で、胡麻やお茶に続く美味しい作物を探しに行きました。みなさん?無理しちゃいけませんよ。
しばらく進むと私が適当にこさえた渓谷。
ツリーさんがチャリオットから川にパチャと飛び込みました。
森の精霊は自然が大好き。
川と苔と魚に塗れながら、私達と川の中を並泳します。
馭者席に私と座っていたメサイヤちゃんが突然飛び立ち、帰って来た時に加えていたのは
アケビかな。
私とミズーリに渡すと、みんなでしゃぶりつきます。うん、甘い。
私達が出かける時は、大体こんな風にダラダラ好き勝手に過ごします。
「(ここ)」
ツリーさんが地図を見ながら指さします。
では、万能さん。
了解です
私が手を地面に振り回すと、地面が勝手に掘れていき、やがて土中から次々と飛び出て来たのは、古木でした。
寿命を迎え倒壊し、やがて地に埋もれていったのですが、木自体が非常に硬い為、腐食が進まず、かなりの部分が残っている埋もれ木です。
それと、ツリーさんの指示に従い、枝だけ剪定する木、伐採する木を選んで「竹刀」で切り捲ります。
万能さんには切れますよ!って保証されたけど、これは気持ちいい。
必要なものは「丸ごと」万能さんから出しちゃえばいいんですが、これはこれで理由があってツリーさんのお願いの伐採です。
里山に手を入れる理由と同じで、日当たりと固着した地面の攪拌が必要だから。
ここからがいつもと違いますよ。
では、皆さんお願いします!
「「「(任されたー!)」」」
精霊さん大集合!って多い多い多い多い。
折角材料を切り出しのだから、私達が作るーとツリーさんが言い出したんですけどこれは?
「(いくらでも増えるよ)」
基本的に精霊さんの容姿は皆同じで、身長だけが20~160センチくらいバラバラなんですが、何人いんだこれ。
「(およそ200人)」
みんなして、ノコギリ(何故か電動)、金槌、グラインダー(勿論電動)などを持って材料に群がりました。
「「「わーーー」」」
トンテンカントンテンカンと昔話で聞いたことのある音が森に響きますが。
えーと。小さな精霊さんがほぞとほぞ穴を小さなノミと金槌で細工して、中っくらいの精霊さんが電鋸でカットしてグラインダーでヤスリがけして、おっきい精霊さんが躯体を組み立ててる。しかも早送りのようにちょこまかと。
ミズーリはミズーリで、大量の精霊さんに動じもせず、地図を片手に私特製のシャベルを地面に突き立ててます。
万能さんシャベルと女神の力が合わさるとどうなるかと言うと。
一掻きで1メートルくらい掘れて、たちまち姿が見えなくなると言うトンチキな光景が見られる訳です。
「(そこ。2ミリズレてる)」
ツリーさんはバカボンパパみたいな姿で精霊一同の現場カントクをしてます。
で、私は万能さんとあらかじめ作っていた、熱伝導率0の滅茶苦茶パイプラインをみょーんと作成。地図上にマーキングしたルートで、土塁外の空き地まで地中に伸ばしますよ。
この温泉熱を利用して、温室を作るわけです。
正しく物理法則を利用する為に、正しくない道具・器具を山程使ってますが。
「沸いたー!」
ミズーリが穴の中からぴょーんと飛び上がってきました。
我が家の家族はみーんなぴょーんと飛ぶ様になりました。
(…姫さんまでぴょーんと、山の頂上まで飛び出したらどうしよう。)
続いて温泉の噴出が始まったので、パイプを穴に差し込んで終わり。ここまで20分。
懐かしの日本で真面目に温泉掘削してる人ごめんなさい。
地中に湯畑を作り、源泉掛け流しとパイプラインに分流出来るように細工しているうちに、ツリーさん達の声が聞こえてきました。
「(こっちも出来たー!)」
ツリーさんと精霊さん達が作っていたのはお風呂。湯治場です。
木造平屋建て、男と女に分けて内湯は埋もれ木の湯船、外湯は岩風呂。
湯畑からパイプでお湯を流せば完成です。
万能さんから、それぞれ男湯と女湯の暖簾を入り口にかけましょう。
っていうか、これ入り口に唐破風までつけて丸々銭湯じゃないですか。
こんなところまで打ち合わせしてませんよね。
「(排水は濾過して戻せばいいのね?)」
川が近所にありますけど、多分魚に良くないのでね。
ていうかデザイン…
「(屋根に瓦を乗せたいけど 森の中には材料がないから マスターよろしく)」
お、おう。
さてさて、早速一っ風呂浴びますかね。
て、君ら何してんですか?
「お風呂入るから脱いでんの。」
「(右に同じ)」
ここ、男湯だから。君らが行くべき女湯は壁の向こうです。
「いいじゃないの。誰か見てるわけじゃなし。混浴露天風呂と洒落込みましょーーー!」
2人を掴んで壁の向こうに投げました。
どこを掴んだかは内緒。
ついでにぱんつもポイっとな。
「女神と精霊のぱんつを放り投げるとは、何たることかぁ!」
知らんがな。
やっと落ち着いたので、服を脱ぎましょう。
改めて周りを見回りと、木のロッカーに籐の籠、足元には葦床?
ってこれも日本の銭湯じゃないですか。
ツリーさんにマスターの故郷を懐かしんで貰おうと 相談を受けましたので
各種映像や書籍を渡しました
そこまで私に気を使ってくれるツリーさんが何故混浴を企てるんだろう。
あとは、電気が使えればなあ。
さすがに今の文明レベルで、発電機やガソリンを管理させるわけにもいかないし。
お風呂上がりに、冷たい飲み物、ドライヤー、マッサージチェアは私の家族だけ楽しめる特典ですね。
最初はミズーリとチビにおもちゃにされていたマッサージチェア+姫さんの組み合わせでしたが、今や毎晩風呂上がり(全裸)で「フヒィ」と女の子が見せちゃいけない表情で溶けてます。
さてと。内湯は中身を確認するだけにとどめて、…富士山の壁絵とか私にしかわからないだろうに。ツリーさん凝り過ぎですよ。
空気と温度が違う露天風呂に行きましょう。
我が家の風呂も屋根を開閉式にしようなんで事も考えようか。
いや、メサイヤちゃんが面白半分に来そうだな。
「よ!」
なんか随分と男前なお姐ちゃんが、腰から下を湯船に浸けたまま、シュタ!って手を上げました。
サリーさん、男湯で何してんの?
「うむ。用が片付いたから帰って来てみれば家は空っぽ。そしたら妹がここに居るって言うから来てみた。」
妹?
あゝ、今日のお供に来ていたメサイヤちゃんが気持ち良さそうに湯船で溶けてます。
家が空っぽって、メサイヤリーダーは出かけたのかな。
「そしたらみんな風呂に入っているから、とりあえず脱いでみた。どうだ?この主好みので控えめおっぱいは?」
いや、私の好みのおっぱいはですねえ。
「まっ平なツリー、ただの出っ張りのミズーリ、緩やかな丘のミク。いずれ負けぬ劣らぬちっぱいだ。さぁ、慈しめ、大いに交わろうではないかああああ、ってなんでえええー?」
面倒くさくなったので指をパチンと鳴らす
と、サリーさんは隣の女湯に飛んで行きます。
盛大な水音と共に声が聞こえてきました。
「あら、いらっしゃい。出っ張りのミズーリさんですよ。」
「(平面のツリーさんですよ)」
「なんで我が主にメサイヤの力が通用しないんだよ!」
「そりゃトールさんだもん。ちっぱいの好きな。」
…あっちは更に面倒くさくなりそうなので放置放置。
「くー。」
男湯で湯船に浮いてるメサイヤちゃんは一応雌なんですけど。まぁいいか。
完全生物という触れ込みのメサイヤちゃんは、新陳代謝が無いので排泄物も無い!
でも、お風呂は気持ちいい。
って事で、後日我が家にもう一つ浴室が出来るのでした。




