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神々の無責任な後始末  作者: compo
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唐揚げカレー

「と言うかですねお姉様。なんで近隣各国の王子・王女が集まってくるのでしょうか?」


指揮官モードスイッチの入った、別人姫さんに戸惑ってしまったミランカ姫が、森の事業に口を突っ込んで来た。


「この森の中で学校を開くからですわ。」

「!! 王族・皇族だけの?」

「いいえ。東部方面軍所属の少年兵向けですよ。王族達はあくまでもついで、です。」

「…なんで少年兵なのよ。しかも少年兵って基本的に食い扶持外された貧乏人じゃない。他の国の王族に対する礼儀がなって無いわね。」

「この森は今や世界最強ですけど、その世界最強を次の代に受け継ぐには、馬鹿の皇族や貴族はいらないの。学びたい人が学んで、明日の才能を伸ばす事が目的の学校です。いいですか?ミランカ。この森には帝国が抱える知能知識など相手にならない絶対的な知性があります。この軍事力と知能が合わさった時、帝国は私達に逆らえますかね?」

「…まさか、お姉様は…帝国への叛乱を考えているのですか?」

「軍事力、物量、知識、全てが圧倒的に上回る私達からすると、もはや私達に帝国が逆らう図式になりますけどね。」

「な、な、な、なななな何ですとおおお。」


「小麦粉と片栗粉、それに米粉を加えた合わせ粉を塩胡椒醤油で味付けします。鶏は腿肉を調理酒に漬けて起きます。腿肉は3口くらいで食べられる大きさに切り分けて、合わせ粉を塗します。」

「「なるほど」」

「あとはコレを熱した油に落として下さい。表面が茶色くなったら食べ頃です。なお、食べた時に血が出る様ならば揚げが足りないので注意が必要です。」

「これは何か薬味は要るんですか?」

「合わせ粉に醤油を入れているので、もう味は付いてますが辛子をつけると味が変わって面白いですよ。」


軍高官と姉妹喧嘩は放置してます。

ちょうど厨房部のマリンさんが下を通りかかったので、ちょっと声をかけてみました。

なんか物思いに耽けながら、酒保の各商店をうろちょろしてるので。


「あのですね。森に来て頂いたご家族を歓迎したいんですけど、献立に困りまして。」


食材は何ですか?


「キクスイの商人が鶏の肉を大量に仕入れて来ましたので、それと食べないと溢れる椎茸くらいですね。あとは適当に野菜類。」


なんか椎茸が大変な事になってるみたい。

でも一万人も居れば食べ切れるでしょう。

なので、それは無視して唐揚げの作り方を教えてます。

ミズーリもノリノリで合わせ粉を敷いたバットに肉を転がしてます。


「ねぇこれ、皮どうすんの?」

皮は食感が変わるので、別に揚げるか、塩で焼くと美味しいですよ。

「塩焼きなら、焼き鳥とかどう?」

皮塩は私の好物ですけど、油が戻るからギリギリになってから火を通しなさい。

「わかったあー。」

「ミズーリ様もお料理をなさるんですね。」

「うちのトールさんの寵愛を得るには、地位とか財産じゃなくて、女子力がいるのよ。」

「なるほど。」

なるほどじゃなくてね、マリンさん。


付け合わせに、マヨネーズたっぷりのポテトサラダ。そしてご飯は森の外の人には必殺のアレでどうでしょうか?

「アレ、ですね?」

厨房部の倉庫にルーがたっぷり保存してありますから。

「ありがとうございます。アレは最強ですからね。」

鳥の唐揚げとポテトサラダのレシピを片手に、ミズーリが作った唐揚げを試食しながらマリンさんは帰って行きました。


「ねぇお姉様。お姉様の旦那様が私達の知らない間に女性を引き摺り込んで、餌付けていますけど?」

「唐揚げですか。盛り付けはどうしますか?ミズーリ様。」

ミランカさんをほったらかしてキッチンスペースに飛んでくる姫さん。

「そうね、油切りしても油出ちゃうからなぁ。クッキングシートになるのかなぁ。」

葉っぱ敷いときゃ油取りになりますよ。

レタスかキャベツをそのまま置いとくといいかな。

「「わかった(りました)」」


「あの、私、ほったらかし。」

「姫閣下は国より軍より旦那様ですから。ましてや閣下の家の料理は天下一品。あの通り普段は厳格なイリスが、試食を求めて土下座する程です。」

「なんなんですの、ここ。」


唐揚げを一つ貰ってイリスさんはさっさと帰って行きました。

同じ料理が出ますから、多分そのまま食堂に行くんでしょう。

娘達は割烹着と頭巾を身につけて晩御飯の調理に取り掛かります。

姫さんがお米研ぎを始めた事に、改めてショックを受けたミランカさんが固まってます。


「どうしましょうか?アレ。」


カピタンさんは姫2人をアレ呼ばわりです。

うるさいなら追い出しますかね。


「ま、待って、待って下さいまし。私の話を聞いて下さい。」

だって君、間諜なんでしょう?背後にいるのは帝室なのか貴族連合なのか知らないけど、私達から見れば「犯罪者」だよね。

人差し指をクイっと引くだけで、ミランカさんがふわりと宙に浮きます。

「おねえざばー!だずげでー!」

顔の穴という穴から体液を垂れ流して、手足をバタバタ振り回してます。

「今、じゃがいも切ってて忙しいから。また今度。」

「おでえざばー!」


「(ただいまそしていただきます)」

おや、精霊さん。今日からでしたっけ?

「(ツリーに頼まれて 廃水浄化槽を作ってたー あとガラス質集めてるけど、どうするのー?)」

そうだね。土塁の方に集めて置いてくれると嬉しいかな。

「(わかったー)」


「………あの、お姉様?お姉様の旦那様が森の精霊と話をしてますよ?」

私が全く警戒してないから、ケージの中で寝てるチビの姿を菜箸で刺しながら

「うちの旦那様とミズーリ様は、そこのチビちゃんとも、外の厩舎の馬さんとも話せるの。精霊さんともメサイヤちゃんとも話せるの。全部、ぜーんぶ今更ですわ。ミズーリ様、この皮を剥いだじゃがいもはどうなさいますか?」

「そっちの圧力鍋に入れて。火が通ったらマッシュして。」

「わかりました。」

「あの、お姉様。助けて。」

「ツリーちゃん、麦茶出して。」

「(ヨーグルトドリンクは?)」

「少し辛口にするから、飲もうか?」

「(うん)」

「…お姉様も普通に精霊と話してるし。」


カピタンさんも今日はうちでご飯食べて行きます。いや、部屋の隅っこで暴れ疲れて脱力し、諦めてフワフワ浮いてるアレの始末をしないといけないし。

今日の晩御飯は、カレーライス、唐揚げ、ポテトサラダの3品。汁物はつきませんが、ドリンク関係を飲み放題にしておきます。

では、いただきます。


「閣下、この唐揚げという肉料理は初めて食べましたが、これは癖になる旨さですな。」

カレーは個性が強いから、唐揚げは普通トッピングなんですけどね。それにカレーの油と油が被っちゃうし。別皿にはあまりしません。

「旦那様。でもこれは、 味がしっかりとしている分、パンにも合いますわねもぐもぐ。」

コッペパンに千切りキャベツと一緒に挟んで

マヨネーズやタルタルソースで頂くのが、私の国に有りますよ。

「明日の朝はそれにしましょう。コーヒー牛乳と何かのスープで。」

姫さん、唐揚げパンは結構ヘビーだから、もっとさっぱり系の飲料ので方がいいですよ。

「レモンティーとかどうかしら。」

「ミズーリ様、それですわ、それ。」


「あのう、お姉様?」


「(これがツリーの言う 旦那様マスターご飯か 美味しいね)」

「(でもね 私も作らないと みんなに置いてかれちゃう)」

「(おっきくなればいいのに)」

「(それは切り札)」

「(なるほど)」

ツリーさん?いつ使う切り札ですか?

「「(うっふふ)」」

森の精霊が2人して悪い顔してます。

なんか怖い。


「えーと、その、皆さま?」


「たまに閣下達とお食事を摂るのも良いものですな。マリン女史の作る食事も旨いのですが、この家の食事は一味違います。」

そりゃまぁ、食材から違いますから。

「何より姫の作った食事が食べられるのがありがたい。今日は調理風景を見させて頂きましたが割とちゃんとしてて驚きました。」

「割と、で悪かったですわねもぐもぐ。」

「口に物を入れたまま喋るのは、はしたないですよ。姫。」

仲の良い主従ですね。


「旦那様!聞いて下さい!」


そろそろミランカさんの相手をしましょうか。

私は君の旦那様ではありませんが。

「私も食べたいの。」

ぷかぷか宙に浮かんだままカレー食べると溢れますよ。あと、よだれ。

「私がミランカを馬鹿と言った意味がわかりましたか?さっきまで帝国の間諜として、皇族として私達を非難し、お仕置きに宙ぶらりんにされても、目の前のご飯に全部忘れちゃうんです。そりゃ、おっぱいもブクブク膨らもうというものですわもぐもぐ。」

そんな人私の周りには沢山いますけど。

カピタンさんがさっと視線を逸らしました。

「まぁいいでしょう。その為のカレーライスなのでしょう?旦那様。」

まぁね。


「美味しいの、美味しいの。」

姫さんの妹君に別に意地悪をしたいわけではないので、素直に下ろしてあげると、皆と同じ献立を出してあげました。

また、顔中の穴から体液を流し始めたので、見かねた姫さんが、ナプキンで時々拭いてあげてます。ミランカ姫も食べるのをやめて、大人しく顔を突き出してます。

なんかまぁ微笑ましい姉妹の図です。

妹が姉と大差ない年齢の大人な事を除けば。


精霊さんはメサイヤ部屋に消えて行きました。なんでも、しばらく交流して一休み(一寝入り)してから帰るそうです。何処に?


「さて、ミランカ。あなたの処遇ですが。」

「死刑ですか?空にぴゅーんですか?」

ミランカさんはブルブル震えながら正座してます。

「この森はそれほど排他的なのですか?」

「あなたねえ、旦那様は生殺与奪の絶対者ではありますが、暴君ではありません。この森を閉じる時にも離脱希望者をきちんと募ってます。誰も出ていかなかったけど。そしてカピタン将軍の報告では、家族を迎えに行った兵の名簿付け合わせをしたところ、最初の申告と何一つズレがなかったそうです。…あなた以外。」

「う、」

「今、この森の中では住民登録名簿を作成中です。つまり、あなたの様なイレギュラーは必要ありません。死者として出て行くか、生者として森の規則に従い一からやり直すか。その時は帝国皇女の肩書きなど捨てて貰いますが。」

「…」

「旦那様?」


私が余所見して何やら頷いているのを見た姫さんが、、私がしてる事を察しました。

万能さんに確認して貰ったけど。どうもね。東部方面軍の異変を聞きつけて、何も考えず共も付けずにウロチョロしてたみたい。一応、皇族だから出会ったウチの適当な兵隊に命令して護衛させてたと。


「ね。馬鹿でしょ。」

「うう、何も反論出来ない…」

「…仕方ないですわね。ミランカ、あなた軍に入隊しなさい。」

「え?」

「皇族だから一通りの訓練は受けているでしょう。軍務については、明朝カピタン将軍と相談します。そしてあなたは学校に入りなさい。ただし、皇女としてではなく一般少女兵として。元ある官位も全て没収します。」

「えーと」

「嫌なら死体となって出て行きなさい。」


こうして、ミランカさんが東部方面軍に合流することになった。

お姉様の姫さんが厳しくて少し怖かったです。

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