挿話 オズワルドの対策
5-8の後あたりから最終話あたりまで
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オズワルドは一人、図書館へと戻った。机の上にジュリアからの手紙を置き、端の方に置いていた手紙を確認した。
オズワルドが書いたものではない。
アビゲイル公女がある人へあてた手紙である。慣れない文字を一生懸命書いたのは何とも微笑ましいものであるが、果たして相手はこれをどう受け取ってくれるか。
公女のたっての願いなので、届けるしかない。内容は別に公国にとって問題になりそうなものではない。ただ一人の友になりたいと願ったものだ。
オズワルドは椅子に腰をかけて、窓の外をみやる。声をかければ魔法の白ふくろうは応じてくれるだろう。
先ほどまでは帝都からアルベルまで飛んでもらったのだ。疲れているようだから、もう少し休ませてやりたい。
休んだ後は、ふくろうに公女の手紙を預け北へ飛んでもらうとしよう。
オズワルドはジュリアからの手紙を開いた。例のアメリーに関するスキャンダルを読んで困ったように笑った。
本当にアルベルに嫁いだのがライラで助かったな。
アメリーがいくら魅力的であったとしても、彼女周辺は異常である。彼女の虜になった貴族令息について別の場所から情報を取り寄せると、不審な点がひっかかる。
間違っている仮定と思うが、予測をたて研究で作った魔法の石をジュリアへと送った。
さらにジュリアの手紙を読み進めると、インクの濃さが違うことに気づいた。
日を変えて新しく書いたもののようである。別の日で得た情報を追加で記載していた。
内容を確認して例のものを作って正解だったとオズワルドは自分の行動に拍手を送りたかった。
「アメリー・ノース子爵夫人が秋の狩猟祭へ遊びに来る」
公国を蛮国、アルベルを北の果てと呼び嫁ぐことを拒否した令嬢であるが、帝都での生活に飽きてきたようで刺激を求めている様子だ。それよりも最近は皇太子妃の影響でお茶会へ招待されることが減ったそうだ。一応あるにはあるが、上位貴族令嬢の主催のイベントが減ったようで残念そうにしているようだ。
公都は一応観光地として注目されているようで、第三皇子にわがままをいって一緒に行くこととなったそうだ。
公都の令嬢たちの悲鳴が予測される。
うーんとオズワルドは髪をぐしゃぐしゃとかいた。
研究していたとはいえまだ未完成だ。それでも何とか形にして秋までにクロードに手渡そう。
◆◆◆
狩猟祭の騒ぎのあと、慌ただしい日々が繰り返された。
ライラは第三皇子暗殺未遂容疑で捕縛され、アメリーがクロードに懸想し軟禁してしまう。
ここれアメリーにはやはり魅了魔法を持っている、もしくは近くに使える者がいると判明した。
そこを狙ったかのようにアルベルにジル族、アラ族の侵攻であった。
できれば公都へ行った方がいいと思っていたが、ジル族の術者の対策魔法を広範囲展開できるのはオズワルドだけであった。
弟子ができる範囲は狭く、まだ戦場では利用が厳しい。
オズワルドは館を守り続けているノースに指示を出し彼女を公都へと向かわせた。かなり慌てて送り出したから十分な説明がされていない。それでも彼女なら何とかしてくれるだろう。
ライラの容疑は晴れたが、クロードはアメリーの元へと連れ出された。
その時の様子をみるとまるで廃人のようであったという。
オズワルドはやりすぎたなと後悔した。
クロードには念入りに魅了の対策を取り入れた。琥珀石のピアスだけではなく、彼の体のところどころに魔法を忍び込ませていた。
おかげで彼はぎりぎりまで魅了に堕とされなかったが、逆にむきになったアメリーたちの手によってさらに強い魔法を薬を使用され続け中毒となっていた。
単純に魅了にかかって後でゆっくりと治療していった方が身体にも、精神にも影響がなかったかもしれない。
「それでも、元に戻れたのは……ライラのおかげかな」
クロードの体の様子を確認してオズワルドは呟いた。
帝都でのクロードの状態はかなりやばい状態であった。エドガーの協力があろうと、治療を施しても精神が欠陥していたかもしれない。それでもあのままアメリーの手に堕ちていくよりはましだっただろう。
ライラには気の毒であるが、受け入れるほかない。
それなのにオズワルドの予想を超えて普通に戻ってくるとは思わなかった。
「やっぱり愛なのかな」
それっぽい考えをしてみるとクロードはじとーっとオズワルドを睨んだ。
「何を良い話だった風にまとめているのだ。お前の対策魔法のおかげで俺はたいへんだったのだぞ」
「え、それじゃクロはあっさりアメリーとらぶらぶになってライラに見せつけても良かったのかい?」
そういうわけではないとクロードは頭を抱えた。
「オズ、お前はもう少し話を……考えを説明することを学んだ方がいい」
「クロに言われるとは思わなかった」
少年時代にこの男についていってから、よくよく思い出すとこの男は肝心なところで説明していない。おかげで苦労したことが何度もあった。
「いやぁ、言っても信じてくれないし逆に混乱するかなぁって」
「それは話し相手が判断することだろう」
まだ何か隠しているように思えるが、クロードは身体、精神の状態がだいぶ安定しているのを確認したので急ぎ仕事へ戻ることとした。
「ところでブランシュについてはお前はどう思う?」
「ブランシュは精神体になってライラの中に入ったよ。もうどこにもいないけど、ライラが呪いや悪い魔法にかからないように守ってくれる」
「護竜はそんなことができるのか」
「判明したのは絶滅したと思われる年の数年前、公都の郊外に住んでいた魔女の手記で書かれた仮説のみさ」
クロードは髪をぐしゃぐしゃにひっかいて、もうひとつ話をした。
「ライラがブランシュを探しているが……どう納得させればいい?」
体の中にあると説明しても彼女にはぴんとこないだろう。ブランシュがいそうな町や森など地図をひっくりかえして探していた。
「そのうち僕から伝えておくよ。君よりは適任だろう」
頼みとクロードは声にして、扉を閉ざした。
「さて、ライラは城門塔あたりかな」
オズワルドは窓から流れて来る笛の音を聞き、位置を確認した。外はとても冷える。きっと毛布もなにもつけずに出ているかもしれない。
オズワルドはブランケットをとって部屋を出た。




