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【完結】ライラ~婚約破棄された令嬢は辺境へ嫁ぐ  作者: ariya


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6-1 久々の公都

 秋の狩猟祭が行われる2週間前にライラとクロードは公都ベラへとたどり着いた。

 侍女のリリーに従僕見習い兼ライラの看護係のライ、護竜のブランシュも一緒である。

 久しぶりの公都別館は1年前と変わらない姿でライラたちを迎え入れてくれた。


「おかえりなさいませ。閣下、奥様」

 

 執事のバートは丁寧に挨拶をした。クロードはこくりと頷いて館で問題が起きていなかったか確認した。

 確か半年前にエドワードの提案で料理人、数名をこちらへ異動させていたのを思い出す。

 ライラを軽んじ、陥れることに加担した城の使用人たちは解雇、新人を雇い入れていたが、それ以外の者は場所を変更し教育し直しをバートに依頼した。

 彼らの不満の受け入れをバートに全て投げてしまっていたので大変だったかもしれない。


「変わりないか」

「はい。ジーヴルから異動した者たちははじめ環境になれない様子でしたが、他家の研修を受けていくうちにだいぶ初心を取り戻しつつあります」


 研修を受け入れてくれたのはカディア侯爵家、アリサ夫人の緑の館であった。

 カディア侯爵家にて基本的な使用人としての心構えを見直されていた。

 緑の館は定期的にサロンを開く為、人手が足りないときに手伝ってくれる条件で引き受けてくれた。

 かつてのアルベルの女主人の館であるが、ジーヴル城の使用人だった者たちはアリサ夫人に無礼を働いていないか心配であった。


 バートの話では先にカディア侯爵家で研修させた後だった為か、自分たちの視野の狭さを痛感し緑の館での研修は問題なく済んだという。

 アリサ夫人が気づかない場所でアルベルのために尽力つくしていたことを知り恐縮してしまったようである。今まで他領から食糧など物資、道の整備などのライフラインの見直しの為の人材の支援はアリサ夫人が領主たちをサロンへ呼び寄せてアルベルの重要性を認識させたことによるものである。


 一番変化大きかったのは料理長である。かつてはアルベルの料理を基本として、他の料理などは拒絶反応を示していたが人が楽しんで食事をする為にどうするかということを学んでいた。

 アリサ夫人が料理長の料理を食べて彼の今までの働きに感謝を示したことがきっかけであるという。


 さすがに去年の出来事は本人としては応えたようである。

 辺境伯の料理を任されているのは自分だという自負があったというのに、長く辺境伯が滞在するジーヴルではなく短期しか滞在しない公都別館へ異動になったのはショックだったようだ。

 慣れない生活の中、かつてのアルベルの女主人からかけられた優しい言葉に感激し、彼女のサロンで多くを学び自分が意固地になっていたことを認めた。


 現にライラの為に用意された料理はアルベルの料理であるが、ライラの舌に合わせて辛さをマイルドにしてある。

 ライラは料理長の配慮を感謝していると伝えてほしいとバートに頼んだ。さすがに顔を合わすのは困ってしまう。

 料理長がライラの為の料理をふるまった、ライラはそれに感謝を述べた。

 それで十分であろう。


「カディア侯爵家とアリサ夫人に感謝の手紙を書かなきゃ」


 ライラは綺麗な便箋を選んだ。


「お礼の品は何にしましょうか……」


 アルベルから持ってきた特産品で彼らが好みそうなものを探した。


「クロード様はどのようなものがいいですか?」


 アリサ夫人へのお礼の品は、クロードが先日手に入れたミスリルマウスからとったダイアモンドにしようとした。

 加工された装飾品がいいかもしれないが、彼女の好みに合わせて作るのがいいだろう。

 カディア侯爵家には何がいいのだろうか。


「クロヴィスとその父親に対しては皮の腰ベルトにしておこう。アルベルで作ったベルトは上部で品質がよく人気なんだ。定期的に取り寄せさせてほしいと依頼がきている」


 カディア侯爵父子だけではなく彼らの騎士の分も用意しておこう。

 クロードは持ち込んだ特産品からベルトの数を数えた。


「そうだわ。オズから預けられた琥珀石の指輪、あれを彼に渡してもいいでしょうか」


 ここへ訪れる前にオズワルドが渡してくれたものである。ひとつはすでにクロードが身に着けた耳のピアスである。

 他はカフスや、指輪と様々な装飾品として加工されている。

 大公用にも作られているものがあり、それ以外であればライラが好きに誰にでも贈って良いといわれた。

 クロヴィス・カディア小侯爵は以前公都で騒動が起きたときの恩がある。ライラとしては当時気が張っていたので簡単なお礼で済ませていたが、彼のおかげで暴力沙汰にならず済んだとも思える。落ち着いた今だからこそお礼はしっかりとしておきたいと気持ちがあった。


 クロードはしばらく考えて頷いた。


「別に構わないというが、指輪に関しては二人で贈る形としておこう。後挨拶は俺一人で行く」


 ライラが他の殿方に指輪を贈るのは見ていて何というか良い気分ではない。

 クロヴィスが人妻に手を出すとは思えないが、もやもやとする。1年前の料理店での騒動は感謝しているが。


 オズワルドがここにいれば「嫉妬だー」とからかっていたことだろう。

 残念であるが、彼はアルベルに残っている。クロードの代理としてアルベルに目を向けており、以北のベンチェルの支援もしなければならない。

 他にも研究を続けたいということで彼はお留守番という形になった。必要あれば弟子を公都へ送ると言っていた気がする。


「奥様ー」


 リリーがぴゅーっと部屋へ飛んできた。彼女の背中にはべったりとブランシュが引っ付いてある。

 ライラが大事な作業をしているからとリリーが面倒を引き受けてくれた結果である。抱き上げるとリリーも仕事できないためブランシュは背中にくっついていることが増えた。

 まるで亀の親子のようである。重くないかと聞くとリリーは重い武器を持つこともできているのでブランシュの重さは特に問題がないとのことだ。たくましいことだ。


「アリサ夫人より返事が届きました」


 思った以上に早い。

 ライラが先ほど出したのは、お礼を改めてしたいから訪問の許可を求める手紙であった。

 手紙はライが届けに行ってくれて、そのままアリサ夫人はライにお菓子をふるまい手紙の返事を書いてくれたようだ。

 後からついてきたライからほのかに甘いかおりがする。おそらくポケットの中にお菓子が入っている。いちごソースがたっぷりの焼き菓子が予測される。

 ちらりとブランシュはライの方を見つめ、隙をみつけて飛び移りポケットに頭をつっこもうとする。


「おいおい、あとで分けてやるからあとでな。あとで」


 ライは慌ててブランシュの頭を引っこ抜いた。まるで弟をあやす兄のようでほほえましい。

 そういえばライには弟狐がいたな。可愛らしい子狐であった。

 ライラはくすりと笑いながら手紙の内容を確認した。


 アリサ夫人より、いつでも歓迎するというものだ。明日でも良いとのこと。


「まぁ、クロード様。明日緑の館へ行ってもいいでしょうか」

「構わないが、まずは公城への挨拶が先だな」


 今日訪れてもよかったが、異国から訪れる客人の相手で忙しいとのことで明日に予定をずらした。

 異国からの客人の中に第三皇子カイルがいる。

 噂によると彼と同伴している若くて美しい夫人がいるそうだ。

 いやな予感がすると思えば、使用人から届けられた情報でアメリーという。

 どうやら狩猟祭のパーティーに参加する予定だという。


 第三皇子の補佐として同行している兄トラヴィスの悩みが思いやられる。

 まさかここまで予想外の行動をするとは思わなかった。


 アビゲイル公女が、第三皇子カイルとアメリーを目の前にして何と思うか。

 考えただけで胸が痛む。


 ライラが何を心配しているかクロードは予想できているようでライラの肩をぽんとたたく。


「アビーのことは心配しなくていい。あいつはああ見えて精神面は落ち着いている。それにここは公都……兄もいるし、俺もいる」

「はい、そうですね」


 明日は公城で公妃と公女とも会う予定である。アリサ夫人を待たせるのはよくないため、日時は次の日にお願いすることとした。

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主にアルファポリスの方で連載しております。もし宜しければリンク先へお越しください。 一部設定を変更しておりますが、流れはほぼ同じです。
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