『好き』な言葉
『耳で聴きたい物語』コンテスト投稿作品です。
はい、聴きたい言葉のためだけに書きました。
甘々初々なショートストーリー、お楽しみください。
初めてのデート。
待ち合わせの時間五分前。
あ、もう来てる。こっちに気づいた
目一杯オシャレしてみたけど、どう、かな……。
……私服なんだー、って当たり前じゃない。
夏だから、買ったばかりの肩出しワンピース。
スカートの丈も、制服よりちょっと短め。
大分頑張ったんだから、もっと褒めてよね。
!
む、むむむ胸とか何でそこに注目するの!?
確かにブレザーの時よりは目立つかもだけど……。
でも、でもそんなとこばっかり見て……!
「……えっち」
真っ赤になるくらいだったらそんな事言わないの。
緊張してて口が滑った、ね。
まぁ緊張はわかる。私も同じだし。
……何でそこで私が怒った事になるのよ。
恥ずかしいけど、女の子として見られてるの、嫌じゃないし。
「……ばーか」
ふふっ、ちょっとは緊張ほぐれた?
そうよ。せっかくの初デート。
楽しまないと損じゃない。
「行こっ」
って何、その手。
……繋ぎたいの!?
そんな、いきなり、そういうのってもうちょっと……。
……嫌じゃないけど……。
「……いーよ」
わ! 手を繋いだだけで心臓が跳ねる!
これ、手から聞こえてない……?
だって、キミの手からもドキドキが伝わってくるから……。
「……すきだよ」
私はキミの真っ赤になってる横顔から目を逸らして、聞こえないように呟いた。
読了ありがとうございます。
はい、「」の中の言葉を聞きたいだけの人生でした。
特に女の子が、嫌じゃないけど恥ずかしい風に、「……えっち」って言うの良くないですか!?
あ、いえ、その、すみません……。
一人で盛り上がりました……。
もしお一人でもこの「わかる」と言う方がいましたら、望外の喜びでございます。