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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第三章-成人時代-
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27.帝国での騒動 -解決-*

 その後、帝国騎士団との戦闘は皇族などを巻き込む結果になりましたが、早々と終わりました。

 私たちが牢にいる間にルーナー先生が魔女の力を見せつけることで帝国軍は心を折られて降参の意を示したというのが事の顛末です。

 帝都のお城を囲むように宙に浮かべられた幾万もの氷柱。

 それを見てどう足掻いても敵わないと思ったのだろうとその場で一部始終を見ていたアイルに牢から脱出後に聞きました。

 帝国軍の降参の後、帝国皇族やそれに連なる貴族や騎士団は私たちに対して一生を懸けて償いのための賠償金を支払う旨の契約が成されました。これは自分たちで汗水垂らして働いて支払わないとならない契約魔法が使われています。

 内容はそれだけではありません。自害の禁止やその他の犯罪の禁止、契約を破った際の罰則として死ぬよりも辛い苦痛が全身に走ることもその契約の中に含まれています。

 ところで彼らは私たちにそうであったように、国民にも高慢な態度で接してきたのではないでしょうか。

 無実の罪をでっち上げて、処刑などしてきたと言われても、彼らのこれまでの態度を見ている身としては納得します。

 そんな彼らが様々な制約を掛けられて、この先、長生き出来るでしょうか?

 彼らは気がついていませんでしたが、彼らの苦難はこれから始まるのです。



 その後の彼らのことは知りません。

 別に知りたくもありません。

 お金のことなんてこの契約を結ばせるための作り話だったのです。

 だから滞っても私たちは別に良いのです。それで良いのです。


*


 帝国を出国した私たちは次の公国に到着して滞在中です。

 ここは治安が良いようで安心して過ごすことが出来ています。

 皆が思い思いのことをしている中、私はニアと公国の外に出て来ていました。


 そこから半径数Kmに渡って結界を張って、私はそれがきちんと作動するか調べてからニアの元に行って声を掛けます。今日からこれまで封印してきた魔法の実践修行を始めるのです。


「まずは属性魔法の相性を調べることからですね。

 魔法の発動はこれまで勉強してきたことを思い出しながらやってください。

 多少暴発してもこの結界が抑えてくれるので大丈夫です」

「はい! ミレーヌ先生」

「ではやってみてください」


 私がそう告げるとニアは魔法の行使準備に入ります。

 魔眼を発動させてその様子を探りますが、魔力は上手く体内を巡って魔法へと変わろうとしているのが見て取れます。


 上手くいきそうですね。


風の刃(エアカッター)


 ニアの詠唱と共に風の刃が結界へ飛んでいき、衝突してその役目を終えます。

 彼女は風の属性の適性があることが分かりました。


 次の属性魔法を使用するように伝えますが、ニアからは反応がありません。

 どうしたのでしょう? 見るとニアは固まっていました。


「ニア?」

「ミレーヌ先生、あたし初めて魔法の発動に成功しました!」


 そういうことですか。

 感極まって泣きそうになっているミアを私はそっと抱き締めます。


「ミ、ミレーヌ先生?」

「よく頑張りましたね。泣いても良いのですよ?

 ニアは頑張りすぎなんです。決断をするのは一人とは言いましたが、周りを頼ってはいけないとは言っていませんよ。

 これまでそれを抑えてきたのでしょうが、これからは辛い時は辛いと言って良いのです。

 特に私には我慢しなくていいのですよ」

「ミレ……。うぁ……あたし、あたし……」


 私の胸の中でニアが堰を切ったように泣き出します。

 それは恐怖に震えたあの時とは違う涙です。

 過去の辛かった日々を全部吐き出すかのような慟哭です。

 私はニアが落ち着くまでずっと彼女の、いつもより小さく感じる体を抱き締め続けていました。


*


 それから暫く。ニアは涙も止まって落ち着きを取り戻したようですが、私からは離れることなく、むしろ余計にしがみ付いてきます。

 あの時もそうでしたが、ニアは泣いた後は私にしがみ付く癖があるみたいですね。


「あの、ミレーヌ先生」

「はい?」

「どうして先生はあたしにそんなに優しくしてくれるんですか?」


 何故かニアの体が震えているのが分かります。

 つまり彼女にとってこの質問は大切な質問ということなのでしょう。

 私は少し考えて返事をします。


「そうですね。先生だからでしょうか」

「先生、だから……?」

「はい。まだ不慣れですが、生徒には楽しんでもらいたいと思います。

 私の先生も私にそう接してくれていますので」

「あたしに楽しんで……」

「はい」

「ミレーヌ先生」


 ニアが私を呼んだ瞬間、私は世界が反転したような気がしました。


「何故?」


 私はどうしてニアに押し倒されているのでしょうか?

 地面ではなく、私の体と地面との間に風でクッションを作っているのがニアのさりげない優しさですね。


「先生が悪いです」

「はい?」

「ミレーヌ先生が優しすぎるから。

 だからあたし先生のこと……」

「ニア?」

「先生のせいです!」


 ニアがまた泣きながら私にキスをして来ました。

 息が続く限り私に唇を重ね続け、苦しくなったら離れて酸素を肺に取り入れたらまたすぐに唇を重ねて来ます。

 泣きながら私にキスをするニアが痛々しいです。

 見ているのが辛くなり、私は再び私から離れたニアの首に手を回してこちらへと引き寄せます。


「……ぐすっ。ミレーヌ先生、ずるいよ」

「ごめんなさい。私は鈍いみたいですね」

「ねぇ、先生。責任取ってくれる?」

「私には三人恋人がいますが」

「じゃああたしが四人目だね。他の人には負けないから」

「ついこの間同じ台詞を聞いた気がします」

「あ! 今って先生を独り占め出来るよね?

 先生。魔法、手取り足取り教えてください」

「……仕方ありませんね」


 立ち上がってニアの魔法の実践修行再開です。

 私は背後からニアに寄り添い、その手を掴んで魔法を発動させるように促します。


「風は確認しましたから、次は別の属性魔法を使用してみてください」

「はい! 先生」


 ニアの顔が赤いです。

 そして嬉しくて仕方ないという顔をしている気がします。

 ニアが私に微笑みを浮かべたので私も微笑みを返しました。


「あたし、なんでも出来そうな気がする」


 とニアは言っていましたが、発動出来たのは風と水と土の三属性でした。


*


 半年後。

 私はニアの中指に階級の指輪を嵌めようとしていました。

 修行がニア本人の希望でこれからもまだ続いていく予定ですが、ルーナー先生にニアの修行の途中経過を見てもらったところ、ニアは魔導士の素質が充分にあるところまで魔法の使い方を極めていたのです。


 それなのにまだ無名で階級は魔法士の卵。

 それはおかしいとルーナー先生に指摘されて、急遽ニアを魔導士に就任させることになったのです。

 言い訳させてもらえれば、私は五歳で魔導士に就任したので、本来は十歳で通う魔法学園への入学が免除されて学園には行っていません。

 それに私の基準はルーナー先生です。

 だから知らなかったのです。

 私がやっている修行は普通はあり得ない修行だということを。

 ですがそれにニアは着いて来れていました。

 ですからニアにも責任があると思います。私にもありますが。


「おめでとうございます。、ニア」

「ありがとうございます。ミレーヌ先生。

 そしてこれからもご指導よろしくお願いします」

「はい、勿論ですよ」


 私はニアに指輪を嵌めます。

 収縮していき簡単には取れなくなったところで称号の授与です。


玲瓏(れいろう)の魔導士というのはどうですか?」

「それ、どういう意味ですか?」

「美しく澄み切っているという意味です。ニアにピッタリだと思いますよ」

「あ、あたし。そんな綺麗じゃないです」

「ニアは私の元に来た時が魔法使いとして生まれたばかりと同じようなものですよね?

 だからこそ純粋で、綺麗な魔力をしています。

 そんなニアにこれ以上の称号は無いと思います」

「ミレーヌ先生……。ありがとうございます。

 それでお願いします」

「分かりました。ニアは今日から玲瓏の魔導士です」


 指輪に文字が刻まれます。

 これでニアは正式に魔導士です。

 それにしても僅かな期間でそれだけの階級を勝ち取るとは思いませんでした。

 私もうかうかしていられませんね。

 教え子に恥じない先生であるようにこれからも努めましょう。


*


 ニアの魔導士就任式を傍で見ながらわたし、コレットは複雑な気持ちを抱いていました。

 だって、明らかにミーちゃんとニアの距離が前よりずっと近くなっているから。

 女の勘が働いて脳内に警報を告げてくる。

 それを受けて隣にいるアイルを見るわたし。


「ねぇ、これってさ」

「ああ、そうだろうな」

「「またライバルが増えた」」


 わたしたちは遠い目をして空を仰ぎ見た――――。

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