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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第三章-成人時代-
25/43

24.滅びの国 その2

「魔女様があの白亜の魔女様だったのですか!!」

.

.

 少女の友達を助けに行く道中で起こった出来事です。

 魔女は自分の故郷から遠く離れた国に住んでいる少女が何故自分のことを知っているのかとその理由に興味を持ちました。問うと歩きながら少女は魔女にその話をしてくれます。

 魔女はずっと旅をしていたので知らなかったのですが、魔女のその名前と功績は一流の魔法使いを目指している魔法を扱う者たちの間で良くも悪くも広まっているのだそうです。

 中には魔女に嫉妬して悪意の言葉を吐く者もいるそうです。

 何らかの手段で不正に階級を手に入れたのではないか。

 実は存在していなくて、誰かが適当なことを言っているだけではないのか。

 魔女はそれを聞いて苦笑いします。


「存在していないですか。随分飛躍した考えですね」


 魔女のその言葉に少女は強く頷きます。

 何故少女がそこまで必死に首を縦にするのか。

 これも聞くと少女は魔女にずっと憧れていたからという理由でした。

 いつかその魔女にお会いしたい。

 会って話をしてみたいと。


「夢が叶いました」


 少女は朗らかに笑います。

 それから少女は頬を軽く赤に染め、もじもじしながら魔女に視線を向けます。

 どうやら何か言いたいことがあるようですが、なかなか言い出せない様子。

 魔女は少女のその様子を見て、少女が言いたいのであろうことに当たりをつけてみることにしました。


「もしかして私に魔法を教えて欲しいという、その打診ですか?」


 少女が目を見開きます。

 魔女の推理は見事に的中したようです。


「や、やっぱりダメ……ですよね」


 魔女はまだ何も言っていないのですが、少女は一人で魔女の応えを決めつけて落ち込んでしまいます。

 魔女は暫く考え、そして決めました。


「いいですよ」

「ですよね……。やっぱりダメですよね。

 あたしなんかが白亜の魔女様から教えをいただくなんて……えっ?」


 少女は魔女の言葉を暫くしてから理解し、俯かせていた顔を上げて信じられない者を見るかのように魔女のことを見つめます。

 魔女はそんな少女に微笑み、もう一度同じことを言いました。


「いいですよ」


 魔女は思い出していたのです。

 自分が今の少女と同じように鏡花の魔女と呼ばれる魔女と先生と生徒の関係になった日のことを。

 修行の日々の様々な思い出を。

 正直辛かったことも多々あります。

 ですがそれらの日々のおかげで、より魔法に精通することが出来たと今は胸を張って言えます。

 それに先生との日々は充実していました。

 魔女は少女に魔法もですが、それら楽しい日々というものを教えてあげたいとそう思ったのです。


「正し、旅をしながらになりますが」


 故郷を失った少女は魔女のその条件にすぐに頷きました。

 それに元々少女は孤児だったようで、魔女の告げた条件は何の障害にもならなかったのです。


 こうして魔女こと美少女魔女、白亜の魔女は先生というものを経験することになりました。


 さて、そんなこんなで無事に少女の友達の元へ辿り着いた白亜の魔女。

 それは一体誰のことでしょう? はい、少女・ニアの友達を見て固まってしまっている私です。


 驚きました。ニアが一度告げた名前からもしかしたらという予感はありましたが、正真正銘のその人だったのですから。チアキこと東雲 千秋。私たちと一緒にこのアルテラに転移・転生してきた人物で前世の世界では学級委員長をしていた女性です。


「委員長!?」


 つい口に出して言ってしまいました。

 ニアがそれを聞いて「え! どうしてミレーヌ先生はチアキちゃんが委員長(クラスリーダー)をしているって知っているんですか」と聞いてきました。

 知りませんでしたが、こちらの世界でも委員長は委員長をやっているのですね。

 私はそれを知って生暖かい目でチアキを見ていたのでしょう。

 チアキは一瞬たじろぎ、頬を染め、そっぽを向きながら呟きました。


「私だってびっくりしてるわよ!

 この世界で生まれて、成長して学園に通うことになって、そしたら一緒になったクラスの皆から委員長に推薦されちゃったんだから」

「だって委員長は絶対チアキちゃんじゃないとって思ったんだもん」

「ニア。でも顔合わせしたばっかりでお互いのことなんて知らない状態だったじゃない。

 なのにどうして」

「う~ん、雰囲気?」

「……はぁ」


 チアキとニアのやり取りを見ながら私は彼女の傍に屈みます。

 ニアがチアキは怪我をしていると言っていました。

 どれ程のものかと見ると、太腿にかなり大きく深い切り傷がありました。

 

「私って昔からそうなのよね。

 何故か委員長とか何かの組織の長の役目を任されるの。どうしてなのかしら」

「眼鏡のせいとか?」

「そんな、ことで……?」


 ニアとチアキは漫才っぽい会話をしていますが、私はそれに割って入ります。


「かなり深いですね。よく今まで出血多量で意識を失わずにいられましたね」


 その声に私と同じように怪我を見るチアキとニア。

 

「そうだ! チアキちゃん、すぐに治療しないと」

「そうね。応急処置で傷口のすぐ上をネクタイで縛ったから出血多量で気絶っていう事態は免れたけど、このままでは立ち上がることもままならないわ。

 ……御陵さん、よね? 手当てをお願い出来る?」

「私はミレーヌです。そうですね。すぐに手当てをしましょう」


 回復魔法でも良いと思いますが、魔獣の毒が体内に入っているかもと思うと、毒を残すかもしれないリスクのある回復魔法よりも時間逆行の魔法の方が良さそうですね。

 私は杖・リンをその傷口に向けて魔法を発動させます。

 ところでリンは無言を貫き通していますが、どうしてなのでしょうか?


『リン?』


 チアキに魔法を行使しつつ、思念で話しかけてみることにしました。

 リンからはすぐに応答があります。


『うん? どうしたの?』

『どうして無言でいるのですか?』

『いや、ややこしくなるかなーっと思って。

 後、面倒臭いからミレーヌに任せる』

『また責任放棄ですか……』

『見た目無機物って楽だよね』

『……………』


 人型に変化させようかと思ってしまいました。

 本気でやるとリンの言う通りにややこしくなりそうなので辞めておくことにしましたが。


「凄いわね。傷がどんどん小さくなっていくわ。

 ありがとう。みささ……、ミレーヌさん」

「さすがミレーヌ先生。鮮やかなお手並みです」

「ふふっ。これくらいならすぐにニアも出来るようになりますよ」

「本当ですか! 楽しみです」


 チアキの手当てが終わります。

 それを見て回復の具合を確かめるためにチアキが立ち上がります。

 軽く飛んだり跳ねたりしていますが、異常はないようですね。


「これは回復魔法? いいえ、時間逆行の魔法?

 以前と変わらず歩けるわ。本当に凄いわね」

「ふふふふっ。それ程でもありますけどね」


 チアキは私に尊敬の眼差しを向けてきます。

 それからニアを見てチアキは彼女に問いかけます。


「ニアはこれからどうするの?」

「あたしはミレーヌ先生と一緒に行くつもり。

 ねぇ、チアキちゃんも一緒に来ない?」

「嬉しいけど、辞めておくわ。私、田舎に行こうと思うの」


 それからチアキは国が滅ぶ原因となった、とある出来事について語りだします。

 それは一人の奴隷による反抗だったと言います。

 奴隷は鳥人族(ハーピー)の女性で、ある日突然住処に入って来た多人族・別名:丸耳人族(ヒューエンス)によって家族を殺され、そして悲しみに暮れる自身は辱めを受けた上で奴隷に堕とされたのだそうです。

 滅んだ国はヒューエンス至上主義で奴隷の扱いは酷く……。

 いいえ、ヒューエンス以外の種族の扱いは酷くハーピーは毎日拷問にも似た日々を送らされていました。


 私はふとニアを見ます。彼女はハーフエルフです。

 ということは彼女も。そして孤児である理由はそのハーピーと同じような……。

 

「高慢ですね」

「ええ……」


 続きがチアキから話されます。

 ハーピーはそんな日々についに耐えられなくなったらしいです。

 ヒューエンスへの恨みと憎しみが募っていく日々。

 復讐を考えたハーピーはその日、ついにそれを実行しました。

 自身を[贄]として発動させる禁忌の魔法。

 魔獣を国内に呼び寄せ、高慢なヒューエンスを襲撃させたのです。


「これがこの国が滅んだ理由。考えてみれば滅んで当然ね。

 私はそういうのに疲れたの。だから田舎に行ってスローライフを送るわ」


 チアキはニアにそう伝えます。

 ニアはそれを受け、「そっか」とだけ返事。

 二人は顔を見合わせて笑い合います。


「いつかまた会えるよね?」

「ええ。生きていれば絶対に。ニア。

 それからミレーヌ、貴女も遊びに来るといいわ。

 その時は私が作った野菜をたらふく食べさせてあげる」

「楽しみにしていますね」


 私たちはガルーダに変化させたリンの背に乗りこの場所を移動します。

 それから私の仲間が野営している場所に降り立つと、チアキは早速スローライフを行う拠点をまずは探すために旅立っていきました。

 ずっと友達に手を振り続けていたニアですが、チアキの姿が完全に見えなくなってから私に振り向いて頭を下げます。


「あ、あの。改めてこれからよろしくお願いします。ミレーヌ先生」


 ニアのその台詞に笑顔で返した私ですが、仲間たちからは冷ややかな視線が送られて来るのでした。


「気のせいかしら。ライバルが増える予感がするわ」

「奇遇ですね。わたしもそう思います」

「残念だが、ワタシも同感だ」


 翌日から私とニアの修業が始まりました。

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