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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第二章-少女時代-
20/43

19.オアシスの町 その2

 解答するのは明日にすることにして、私は踵を返しました。

.

.

 その日は町長さんの好意でこの町一番の宿屋に泊めてもらいました。

 平常時は宿泊費金貨三枚~四枚するところが無料です。

 私もコレットも子供の様にはしゃがせてもらいました。

 久しぶりのふかふかの布団。町長さんに感謝です。


「さて、今日はここに何があるのか見せてもらいますよ」


 魔眼を発動します。

 と昨日と同じように文字が浮かび上がって来たので、私はそれを正しい位置に並べ替えていきます。


「pdeils。これをこっちに持って来て、それからこれはこっちですね」


 数秒でその作業は完了します。

 [dispel] 解呪 又は 打ち消しという意味です。


 移動させ終わると女神の彫像が音を立てて動き、元々彫像があった場所に地下へと続く階段が現れました。


「いかにもですね」


 階段を数歩下ります。

 体が完全に地下に収まった時、地上の女神像が動いて出口を塞いでしまいました。


 驚く暇はありませんでした。

 地下へと続く階段の壁に予め設置されていたと思しき照明の魔道具が起動し、下への道を照らしていったのです。


「………」


 私は誘われるまま階段を下りていきます。

 結構長い階段です。半時程降りて漸く階段は終わりました。

 そこからは人工の洞窟が続いています。

 前に進んでいくと足元に嫌な感触を覚えます。


"カチッ"

「カチッ? まさかとは思いますが……」


"ゴロン、ゴロンゴロンゴロンゴロン"

「まじですか!」


 背後から洞窟いっぱいの大きさの丸い岩が転がってきます。

 逃げてもいいのですが、この先も何があるか分かりません。

 ここで食い止めることにします。


 地面に手を置いて魔力を流して発動です。


土壁(アースウォール)


 岩を堰き止めるための壁。

 成功しましたが、岩は思っていたよりも頑丈で壁を破って転がってきました。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 結局逃げることになりました。

 追いつかれたら最後です。

 私のようなか弱い美少女なんて一溜りもありません。

 全力で逃げます。

 

"カチッ"

「うっ………」


 壁から矢が飛んで来ました。

 

 岩から逃亡しながら飛んで来た矢を必死に躱します。

 私は魔導士であって曲芸師ではありません。

 涙目になりながら洞窟を走り続けます。


「なんなんですか! ここはぁ」


"カチッ"

「あっ……」


 天井が迫ってきます。私を潰すつもりのようです。

 岩はこの天井に当たって止まりました。


「今度こそ。土壁(アースウォール)


 今度は強度をさっきの何倍にもしたものを作ります。

 それが柱となり、天井を支えます。

 少し様子見をしましたが、壊れたりということはないようです。


「ふぅ……っ。これは存外に気を引き締めてかからないとダメですね」


 あまり長い時間は使えませんが、魔眼を発動させながら歩きます。

 それで視えましたが、至る所に罠、罠、罠。

 この洞窟は罠だらけです。

 

「この洞窟を作った人はかなり性格が悪い人のようですね」


 自然と顔が引き攣ります。

 場所によっては足の置き場に気を付けながら、片足分のスペースを踏んで歩かないといけないところがあるくらいです。


 黙々と進んでいきますが、そろそろ魔眼を発動させることの出来る限界時間です。

 すでに目が痛く、脳にも熱のようなものを感じ始めています。


 魔眼なしだと辛いですが、やむを得ません。

 解除して慎重に進むことにします。

 

"カチッ"

 慎重……。


 壁から霧が噴射されました。

 多分毒です。鼻と口を手で塞いで急いでこの場を離れます。


 大分走って、もうここまで来れば大丈夫でしょう。

 

「ぷはっ。はーはー……ぜー、ぜー……」


 空気の有難みが良く分かりますね。

 酸素が美味しいです。


 しかしもう大分走ったり、歩いたりしたと思うのですが。


「まだ終わりは見えませんか」


 その場で深呼吸して気合を入れ直して前に進みます。

 暫く行くとこれまでと様相の違った場所が見えてきました。

 洞窟の壁が破られ、土砂により道が埋まっています。


 行き止まりです。

 サンドワームの仕業でしょう。

 脆くなっていた壁に体当たりしたか、たまたま体が当たったかでこうなってしまった。

 私はそう推理します。


 その時、土砂の中からサンドワームが顔を出しました。


「まだそこにいたのですか」


 獲物である私を目掛けて襲い掛かってきます。

 口を大きく開けて喰らおうとしてきます。


「迂闊ですね。倒してくださいと言っているようなものですよ。

 ……炎の円弾(ファイヤーボール)

 

 口の中に炎の魔法を打ち込みます。

 内部から焼かれる苦痛。

 それでもサンドワームは私に向かってきますが、私に牙が届く前に力尽きて倒れました。


 サンドワームに手を置いて空間に仕舞います。

 生物は仕舞えませんが、生命活動を停止してしまったら仕舞えるようになるのです。


「さてと、次はこれですね」


 土砂が流れている場所に時間逆流の魔法を使います。

 こうなってからかなり時間が経っているようで、かなり魔力を持っていかれましたが、無事に修復することが出来ました。

 ついでに土魔法により壁の補強もしておきます。


「これで後三百年くらいは大丈夫でしょう」


 その時間が経過したら再び補強する必要がありますが、その頃でも何事も無ければエルフの私はまだ生きています。その時にここに赴いて補強すれば良いと考えます。


「んっ?」


 先程まで土砂で埋まっていたので気づきませんでしたが、少し先に開けたところがあります。

 そこに歩いて行くと奥に祭壇がありました。

 細かく美しい彫刻が成された祭壇に町中で見た女神像が飾られています。

 ただ相違点があり、その女神像は服を着て両手を手の平を上にして広げています。

 その手の平の上に乗っている魔石。片方がひび割れています。

 

「もしかしてこれがオアシスが枯れた原因でしょうか」

 

 少し調べると魔石は左右揃うことで互いの力が作用しあい、魔法を発動させる仕組みになっていることが分かります。

 再びこれを作動させるには魔石の交換が必要です。


「私の職場が魔道具作成科で良かったですね」


 魔道具作成科は魔石あってこそなので私の空間の中には沢山あります。

 その中から壊れた魔石と壊れてない魔石。

 同じものを取り出すと私は二つとも交換しました。


 すると魔石と魔石が反応し合い、女神の彫像が涙を流し始めます。

 何処かで地震が起こったような振動も感じられました。


「これで終わりでしょうか。

 ですがまたあの罠の道を行かないといけないのですか。

 ……気が遠くなりますね」


 と思っていたら私の足元に魔方陣が輝き始めました。

 

「転移陣ですか」


 発動して浮遊したような感覚を体に感じます。

 次の瞬間、私は地上の女神の彫像の前にいました。


*


「白亜の魔導士様ばんざーーーーい」

「「「はんざーーーーーい」」」


 今私は熱烈な歓迎を受けて宴を開いてもらっています。

 やはりあの魔石の仕掛けはオアシス起動の鍵だったようで、すっかり元に戻った町のシンボルに町に残っていた人々が狂喜乱舞して、その修復の立役者である私を持て成してくれることになったのです。


「白亜の魔導士様どうぞこちらを」

「こちらも美味しいですよ。この町の名物です」


 町の広場の一番見通しが良いところに座らされて、私の横には砂漠の民の女性たち数名。

 そして目の前には絶対に食べ切れない程の料理とフルーツ各種がてんこもり。

 

 中心地では焚火が起こされてその周りで町の人々が踊り狂っています。


 魔導士から王女様に転職したかのような気分です。


「持て成しは嬉しいのですが、これは少しやりすぎではないですか?」


 思わずそんなことを言うと、女性たちがすかさず反論してきました。


「そんなことありません! 白亜の魔導士様が成されたことは魔女様の御業にも匹敵する凄いことなのですから」


 魔女と同等ですか。

 悪い気はしませんね。


 ニヤっと口角が上がります。

 と女性たちの間からコレットとアイビーさんがこちらに来てアイビーさんが深々と私に頭を下げました。


「白亜の魔導士様。この度は何とお礼を言ったらいいか」

「約束しましたからね。私は自分に出来ることをしただけです」

「白亜の魔導士様……」


 アイビーさんが感動しています。

 それを見てコレットが横に座って抱き着いてきました。


「さすがわたしのミーちゃん!!」


 今のはちょっと聞き捨てなりませんね。


「いつから私はコレットのものになったのですか!?」


 咎めると「えー」っとコレットは頬を膨らませます。

 リスみたいですね。指でつつくと"ぷしゅっ"と空気が抜けてちょっとの間の後、可笑しくなって笑いが零れてしまいました。


「ふふふふふふっ」

「ミーちゃん、酷い」

「くすくすっ、ごめんなさい。つい悪戯してしまいました」

「むーーー。その可愛い顔で謝られると許しちゃうんだよなぁ」

「ありがとうございます。」

「うーーーー、ずるいーーーー」


 コレットが頬擦りしてきます。

 それを微笑ましそうにアイビーさんと女性たちが見ているのが感じられます。


「あの、白亜の魔導士様」

「はい?」

「この町に白亜の魔導士様の彫像を建てることをお許しいただけますか?」

「私の彫像……ですか」


 町のオアシスにあるあれを思い出して私は苦笑いします。

 そんな私を見てコレットは首を傾げ、アイビーさんはじっと私の応えを待ちます。

 

「お願いします。白亜の魔導士様」


 視線で圧を送るのはどうかと思いますが……。


「ミーちゃんの彫像いいと思う」

「コレット!?」

「わたし見たい。ミーちゃんの彫像絶対見たい」

「コレット様もそう思いますよね!」

「うん!!!」

「白亜の魔導士様。コレットさんもこう仰っていますし」

「ミーちゃん。ミーちゃんのこの町への功績はどんな形でも残すべきだよ!」

「うっ……」


 二人がかりの説得には勝てません。折れるしかなさそうですね。

 私はアイビーさんに了承の旨を伝えました。


「分かりました。ですがちゃんと服を着たものでお願いしますね」

「はい!!」


 私は無言で契約魔法用の書類を空間から取り出します。

 アイビーさんはそれを見て「うっ……」と呻きました。

 

 それから三月(みつき)程の後、オアシスの町に新たな彫像が出来上がりました。

 その彫像は広場の真ん中に作られ、町を救った英雄の像と称えられているそうです。

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