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白亜の魔女ミレーヌの旅行記  作者: 彩音
第二章-少女時代-
17/43

16.鍾乳洞の洞窟

 その瞬間、私とコレットは飛んで来た木材のようなものに体を持っていかれ、意識を失ってしまいました。

.

.

「ん……っ」


 どうやら生き残ったようですね。

 私は体中に走る激痛をなんとか抑えながら半身を起こします。

 それから体の怪我などを確かめると、あまり気持ちの良いものではない惨状が広がっていました。


「手足が繋がっていてくれただけ良かったということにしましょう。

 ……治癒魔法(ヒール)


 リン、とははぐれてしまったようなので杖無しで魔法を発動させます。

 有った方が魔法の制御がやりやすく、又威力などが増幅するのですが無い物は仕方ありません。

 無事に傷が消えていきます。

 痛みが和らぐと根本的なことが気になり始めました。


「さて、ここは何処でしょうか」


 見た感じは何処かの洞窟のようです。

 鍾乳洞と言ったほうがいいでしょうか。

 天井には石灰石の柱がぶら下がり、左右には苔の生えた石壁が前にも後ろにも広がっています。

 周りを確認し終えた私は何気なくもう一度天井を見上げました。

 大穴が空いていて、そこから光がこの洞窟に差し込んでいることに気が付きます。


「あそこから落ちて来たのでしょうか」

「ミーちゃん!?」


 声が聞こえ、私はすぐにそちらに視線をやりました。


「コレット!」

「良かった!! ミーちゃん、気が付いたんだ」


 コレットが走って来て私に飛びかかってきます。

 しっかり受け止め、頭を撫でるとべっとりと血糊が私の手に付着します。


「え」

「ごめん。回復魔法使うのすっかり忘れちゃってた」


 舌を出して苦笑いしている場合ではありませんよ。コレット。


治癒魔法(ヒール)


 すぐさま回復させました。

 続いて私とコレットに洗浄魔法を使用します。


洗浄魔法(クリーン)


 応急処置はこれで大丈夫でしょう。

 一息つくとコレットがキスをしてきました。

 こんな場所でもコレットはぶれないのですね。


「ミーちゃん、大好き」


 瞳が潤んでいます。コレットが期待していることはなんとなく分かりますが、まだ私にはその気持ちが良く分かっていません。


「……これからどうしましょうか」


 結局誤魔化すことにしました。

 言い訳をさせてもらえれば、理解出来ないままコレットに返事を告げるのは誠実ではないという気がするからです。


「っ。……ひとまず奥に進んでみる?」


 コレットは一瞬傷ついた顔を見せましたが、それをすぐに消して笑顔でそう応えました。

 卑怯者でごめんなさい。気持ちという感情もリンから受け継いでいれば良かったのですが……。


 せめて手を繋ごうとコレットの手を取ります。

 私のそれに気がつくとコレットは顔を綻ばせ、その手を恋人握りに変えました。


「じゃあいこ。ミーちゃん」

「……そうですね」


 ここには私とコレットの他は誰もいませんが、何故だか気恥ずかしいですね。

 頬が少し火照ります。手に汗をかいていないでしょうか? 心配です。


「………」

「………」


 二人共に無言のまま鍾乳洞の奥へと進みます。

 途中で光が届かなくなって来たので照明魔法を使い更に奥へと向かいます。

 

"バサバサバサバサバサバサバサバサバサッ"

「ひゃっっっ!!」

「!!!」


 蝙蝠の大群に出会ったようです。

 光が見えたので彼らも焦ったのでしょう。

 床はその蝙蝠たちの糞だらけになっています。

 コレットと顔を見合わせて逡巡しましたが、意を決して先に進むことにしました。


「ミーちゃん、滑りやすいから気を付けてね」

「ありがとうございます」


 さすが獣人ですね。体の芯がしっかりしています。

 ですからこういう場所も割と平気のようです。

 それにしては何もないところで転んだりする時もあるのですが、不思議ですね。


 本当に滑りますね。それに匂いもきついです。

 先を歩いていたコレットが不意に立ち止まりました。


「どうしました?」


 何かあったのでしょうか? 首を傾げます。

 コレットは満面の笑みでこちらに振り向き、私を自分の方へ引き寄せました。


「きゃっっ!!!」

「いいこと考えちゃった」


 体が宙に浮きます。何事かと思っていると、その原因はコレットにお姫様抱っこされたからでした。


「しっかり捕まっててね」

「はい」


 コレットが走り出します。

 これで糞地帯は早めに抜けることが出来そうです。


「最初からこうすれば良かった~」

「重くはありませんか?」

「ううん、全然。羽みたい。

 ミーちゃん、もっとちゃんとご飯食べないとダメだよ?」


 食べていますよ? コレットは私を抱いたまま駆けて糞地帯を抜け、落ち着いたところで私を下ろしてくれました。


「今って何時くらいかな?」


 ずっと洞窟にいるので時間間隔はすでに無くなっています。

 ですがお腹の空き具合から判断するともう夜になっているのは間違いないでしょう。


「この先に進むのは明日にした方が良さそうですね」


 洞窟はまだ奥へと続いています。

 もう何時間も進んでいるのにこれですから、この洞窟は驚く程長いのでしょう。


「うん! じゃあ今日はここでミーちゃんと二人きりで野営だね」

「そうですね。では準備を始めましょうか」

「うん!」


 準備と言っても空間魔法が使える私たちはそんなに苦労しません。

 空間から道具を取り出し、それを設置していくだけで終わりです。

 完全な外での野営なら簡易テントを取り出しますが、ここは洞窟内ですし必要ないでしょう。

 ですからテントは出さずに念のため魔獣除けの結界石と魔物除けの結界石を地面に置きます。

 他に薪を取り出して魔法で火を点け、料理道具も出して野営料理の制作に取り掛かります。


「あ! そう言えば」


 と、ここでコレットが空間から何かを取り出しました。


「もしかしてそれはサンドワームですか?」

「うん。最後にミーちゃんとわたしにぶつかって来たのはこいつだったみたい」

「……………」


 サンドワーム、少し間が抜けていますね。

 暴れまわった結果、自分も風に巻き上げられて私たちとここに落ちたというわけですか。


「これ、食べられるんだよね?」

「そう聞きますね。あまり食欲が沸くという見た目ではありませんが」


 砂の色をした巨大なミミズ。体の先にある口は食中植物のハエトリソウを思わせる形で粘ついた透明な液体がそこから滴っています。

 

「……………頭は取り除いて焼却しませんか?」

「……うん、ミーちゃんに賛成」


 ということで風魔法を使って頭と胴体とを分離させます。

 頭は青の炎で焼却しました。


 体は一部を切って残して後はコレットの空間に仕舞ってもらいます。

 

 それでは料理開始です。

 材料はワイルドボアの肉とサンドワームの肉、牛乳、パン、玉葱、コケッコーの卵。

 塩、湖沼、バター、トマト、赤ワイン。

 まずはワイルドボアの肉とサンドワームの肉を風魔法連打により微塵にしてボウルに入れておきます。

 次に鍋に牛脂を入れて火にかけて熱し、鍋を馴染ませたら玉葱を入れて焼き色を付けます。

 粗熱を取ったらワイルドボアとサンドワームの挽き肉のボウルの中に玉葱を入れてよく混ぜます。

 そこまで終わったら先程の鍋に再び牛脂を入れて熱し、ワイルドボアとサンドワームの肉と玉葱を混ぜたものを手で丸め、空気を抜くために両手にそれを打ち付けます。出来上がれば鍋の中にそれを入れていきます。

 焼き色が着いたらひっくり返して裏面も焼き火から外します。

 

 別の鍋に火をかけてバターを入れ、それが溶けたらトマトを入れてトマトが崩れるまで焼きます。

 次に赤ワインと塩と胡椒を入れて煮込み、最初に作っておいた材料の鍋にそれを移します。

 水魔法で水を作り出して適量鍋の中に入れてアクを取りながらひと煮立ち。

 お皿に盛って、付け合わせにお店で買っておいたマッシュポテトを添えたら、これで煮込みハンバーグもどきの完成です。


「見た目は普通ですね」

「うん! 良い匂い」

「「いただきます」」


 コレットは躊躇なく、私は多少躊躇いながら煮込みハンバーグを口に入れます。

 悪くはないですね。ワイルドボアは当然豚肉ですが、サンドワームはサラミのような味がします。


「お酒に合う……のかな?」


 コレットが首を傾げながらハンバーグを噛み締めます。

 私たちはまだお酒が飲めませんからね。

 ですがサラミですし、リンの記憶の中ではお酒に合うという情報があったような気がします。

 まぁ自分が確かめたわけではないので、ここは曖昧な言葉で場を濁すことにします。


「珍味というものはお酒に合うと言われていますし、これも合うのではないですか」

「んー、そっか~。ミーちゃんといつか一緒に飲みたい」

「そうですね。成人したらそのお祝いに飲んでみるというのはどうでしょうか?」

「うん! そうしよう」

「ええ。そうしましょう」


 私たちは他愛のない会話をしながら食事を進めます。

 食べ終わり、片付けまで終わるとコレットは私の隣に腰を下ろしました。


「一緒に寝てもいい?」


 と私に聞きながら空間から毛布を取り出しています。

 

「すでにその気ではないですか」


 言うとコレットは微笑み、毛布を二人の体にかけます。

 今日は石壁に体を預けて座った状態での睡眠です。

 少々寝づらいですが仕方ありません。

 目を閉じると思いの外、疲れていたのでしょう。

 すぐに睡魔に攫われて私は眠りに落ちました。


*


「ミーちゃん、寝ちゃった?」

 

 疲れていたんだと思う。

 毛布を掛けたらすぐに聞こえて来た寝息。

 横に隙あればミーちゃんを狙っている女性がいるのに、あまりにも無防備。

 信頼されているのか、それとも相手にされてないのか。

 わたしのことなんて構わずに眠っちゃうミーちゃんのことが愛らしくも憎らしい。


「そんなに可愛い顔で寝ないでよ」


 寝ているミーちゃんにキスをする。

 それで呼吸が遮られて身じろぎする様子が伺えたけど起きなかった。


「ごめんね。ミーちゃん」


 わたしはミーちゃんを抱き締めて首筋にキスをして痕を残し、その後ミーちゃんの服の裾を捲ってその肌に手を這わせた。

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