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剣と悪魔  作者: 鳥皿鳥助
第九章 ~決着~
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第61話 決着

実質最終回です。

が、もう一話だけ続きます。






「世界をさっぱりさせる必要があるのは認めるわ」

「お前……ッ!?」


 アンドレイの手を止めるのは村田麗子その人である。


「でも、リセットはさせない」

「返せ! それは俺のモンだ!!」


 麗子はアンドレイから創界の剣を奪い、何も無い空間……つまり次元を斬り裂いた。


 込められた力は上手く操られ、予想外の暴走をする事無く巨大な亀裂を作り出す。

 亀裂は世界樹をも飲み込む程の大きさ、そして全てを飲み込もうとする力がある。


「悪いけど、ちょーっとこの世界から出て行って貰うわよ」

「ッチィ!! 次元の狭間か!!!」


 麗子は創界の剣を次元の狭間に放り込み、素早く撤退した。

 せめて誰かを巻き込もうと画策するアンドレイは、一番近くに居たギルバードの腕を掴む。


「お前も道連れだ!!」

「望む所だ!!!」


 だがそこは最初から織り込み済みであり、その為にハンター達は遠くで待機していた。

 ただ一人、彼女というイレギュラーを除いて。


「瑠美!」

「了解ッ!!」


 瑠美は近くのハンターに身体を押さえてもらい、Jから渡された銃を発射する。

 轟音と共に撃ち出された弾丸は無事に命中、アンドレイへ大きなダメージを与えた。


「グッ!! クソガァァァァア!!!!」


 強い反動を受けた結果、瑠美は数メートル後ろへと下がった。

 だが撃たれた側のアンドレイはそれ以上に吹き飛ばされ、ギルバードと共に次元の狭間へと飲み込まれていく。


 その場所に地面は無い。

 だが裂け目の発生と同時に飲み込まれた世界樹がその役割を果たし、両者を並び立たせる。


「お前ら……正気か?」

「昨日の事は昨日の僕が何とかして来た。明日の事は明日の僕がどうにかする。なら……今日の事は、今日の僕がどうにかするだけだ!!」

「そうか……よッ!!」

「ッ!!!」


 今のアンドレイが振るう剣にオーラは無い。

 先の一撃に文字通り、全ての力を込めていたようだ。


 だが力が使えないのはギルバードも同じである。


「剣と鎧が……消える!?」

「どうやら弱ってんのは俺だけじゃないらしいなァ!!」

「うわっ!!」


 今のギルバードは鎧どころか剣すら作り出せない。

 それはこの空間に漂う魔力の量が少ないからだ。


 だがアンドレイは変わらず悪魔のような見た目と力を有しており、この場では彼がやや有利という状況に立っている。


「スキルが使えなくても……!」

「ハッ! お前に何が出来るってんだ!!」


 ギルバードはネフィライトシミターを手にし、創界の剣と打ち合う。

 だが魔力を投じての刃生成を前提とするその武器は非常に柔らかい刀身を持っており、刃こぼれを起こしやすい性質を持っていた。


「笑わせる、そんなゴミ使って俺に勝てると思ってるのかよ……」

「絶対に勝つ!!」


 ギルバードはネフィライトシミターを背に預け、紅蓮刃を取り構える。


「良いじゃねぇか! やれるモンならやってみろォ!!」


 アンドレイは曲がりなりにも王子であり、剣術指南も受けていた。

 縦横無尽に遅い来る斬撃に、ギルバードは防戦一方。


 気が付けば樹洞の中へと突入し、尚も続く。

 世界樹の上層部で始まった斬り合いは中腹部まで続き、そこで一先ずの終わりを見せる。


「そらそらァ! さっきまで威勢はどうしたァ!?」

「うわぁッ!!」


 アンドレイは力を込め、乱雑に創界の剣を振り下ろす。


 乱雑な攻撃でも、相応の力が込められていれば強烈な一撃となる物だ。

 何とか創界の剣を受け止めた紅蓮刃だったが、全ての衝撃を受け止める事は出来なかった。


「紅蓮刃が……うわぁ!!」


 床が抜けると同時に刃が折れ、辺りに木が崩れる音とガラスの砕けるような音を響かせる。

 持ち主を失った刃先は、無機質な音と共に床へ落下した。


「この場所、懐かしいなァ」

「何……?」


 気が付けば二人は世界樹の最下層へと到達していたらしい。

 ギルバードには見覚えが無くとも、アンドレイには見覚えがある。


「そこに、この剣があったんだよ」

「ここに……創界の剣が」


 アンドレイが指し示す場所、そこには装飾された石の台がある。

 中央には凹みがあり、そこに剣が収まっていたのだろう。


 文字通りに世界を創る程の強大な力を秘めた、創界の剣が。


「……ならッ!!」


 だが創界の剣は魔の森に多くの魔物を放つ程の物でもあり、世界樹……特に創界の剣が安置されていた場所にはその残滓が強く残っている。

 そしてそれほど色濃く残った残滓は、簡単に消すことが出来ない。


「おいおい、どこへ行こうってんだ? 逃げ場は無いぜ」

「分かってるさ! だから、こうするんだ!!」


 アンドレイから離れ、台座に近付いたギルバードはそこへ手をかざす。

 すると世界樹全体から淡い光が集まり始めた。


「何だと……!?」

「僕達の力は物質を変化させる、君はそう言った。なら魔力だけじゃなくて……」

「創界の剣の残滓を、利用しただと……ッ!!」


 ギルバードは創界の剣と同じ形状の剣を作り出し、台座から引き抜く。


 溢れ出した光は剣のみならず、鎧までをも作り出す。

 それはまるでギルバードを英雄に相応しい姿へと変化させているかのようである。


「たかが光った位で……! 何が変わるってんだ!!」

「変わるさ! 変えられる!!」


 体勢を低くして走り出したギルバードは、以前の比にならない速度で動き回った。

 剣速も力も、悪魔と化したアンドレイと同等以上の力を会得している。


 床だけでなく壁をも走り回りアンドレイを翻弄する彼だが、相手もそれだけで終わるような存在では無い。


「……どうやら力に振り回されてるみたいだなぁ、勇者サマよォ!!!」


 速度に腕が追いつかない時、障害物への衝突を回避するには最小限の選択肢で動き回るしか無い。

 だがそうなれば相手に動きを読まれてしまう。


 実際に動きを読まれ迎撃されるギルバードだったが、彼は創界の剣による斬撃を受けても微動だにしない。

 鎧の強度が桁違いに高く、その内部へ影響を及ぼす事が出来ないのだ。


「残滓でもコレとは、流石は創界の剣だな。でも……!」


 これは補給の出来ない、一度限りの力だ。

 少しずつではあるが光の強度は徐々に低下しているのだ。


「分かってる。だから、次で終わりにする……!」

「望む所だ」


 ギルバードは創界の剣の残滓で創り出したマジックソードに全ての力を込める。

 対するアンドレイは、それを真正面から受け止める構えを取った。


「……来いッ!!」

「……ハァァァァアアアア!!!!!!!!!」


 何故なら相手の攻撃を避けてしまっては、自身の力が相手よりも劣っているという証拠になるからだ。


 それでは力を示す事が出来ない、アンドレイはそう考え……ギルバードもその考えを予測した。


「だからッ!!!」

「何!?」


 彼は僅かに残された魔力でネフィライトシミターの刃を修復し、アンドレイの左手を斬る。


「前とは逆ってか! でもなァ、俺は右利きだ!!」


 アンドレイは創界の剣の切っ先をギルバードへと向け突進した。


「両方、斬り落とすッ!!」

「ぐぁあああ!! クソがァァァアア!!!」


 その突進を横に避けると同時に足を引っ掛け転倒させ、アンドレイの左腕を斬り落とす。

 右手は僅かに届かなかったが、骨の手前までは斬れている。


 これ以上は動けないだろうと確信したギルバードは、臨戦体勢を解いた。


「使える物を全て使う、僕はそう教えられた。悪いけど君みたいに選り好みはしないし、拘りもしない」

「ッチィ……!」


 創界の剣の残滓は全て消費し、一度限りのマジックソードは失われた。

 だが途中で落とした紅蓮刃の刃先を回収するギルバードの姿を見て、アンドレイは今の状況を思い出す。


「ハッ……ハハッ! ハハハハ!!でも俺を倒した所でお前は元の世界には帰れない、つまり俺の勝ちだ!!!」

「と、思いますよね? 普通は」

「何……?」


 創界の剣が安置されていた台座の近くに、見慣れた裂け目が現れた。

 声の主はそこから最初に出てきた円盤を伴う球体、つまりアイである。


 アイに続いて麗子とジュリアンも姿を現した。


「私達の子は返して貰うわよ」

「一体、どうやって!」

「それは私が説明しよう」


 仕組みは簡単な物だ。

 まずはアイがギルバードの魂を捕捉し、やや遅れて現れた中松博士がデータの解析を行い場所を特定。


 そして麗子がその場所への道を繋ぐという物である。


「我々の技術でも魂に干渉する事は出来ません。ですが観測は可能であり、追跡も可能です」

「ンだよ、結局俺の負けか……」

「そう、アナタは負けたの。だから罪を償いに行くわよ」


 麗子はアンドレイを連れ帰ろうとしていた。

 だが彼女がアンドレイに触れたその瞬間、彼の身体はオーラを受けた物と同じように崩壊を始めた。


「身体を乗っ取った代償だな……」


 創界の剣……そしてスキルの副作用に対する対処法は、この場に居る誰もが持っていない物である。


 静かにアンドレイを寝かせると、彼らは別れの言葉も無く背を向ける。

 アンドレイは次元の狭間に取り込まれ、世界樹と共に一人朽ち果てていくだろう。


「お前と違って、俺は所詮異世界の人間。余所者は余所者らしくって事か……」


 声を掠れさせながら嘆く声を背に、彼らは前へと進む。


「さぁ、帰ろう。皆が待ってる」

「……うん!」






 ――――――――――――――――――――






 次元の狭間はアンドレイのオーラ、そして麗子の次元斬で一時的に作り出された空間だ。

 世界が正常に動いている以上は消える定めにあり、その広さは徐々に(せば)まっている。


「こんな所で終わっちまうのかよ……」


 世界樹の上層部から中層部までは既に押しつぶされ、残りは頑丈に作られた最下層部が残るのみである。


 アンドレイの中で『このまま終わるのは嫌だ』という思いが芽生えた時、そこにJは現れた。


「お前、あの時の……! なぁ、助けてくれよ……あの時みたいに――」

「――あの時と違って、もう君に利用価値は無い。悪いけどコレは返して貰うよ」

「何を……ッ!?」


 何をするんだ。

 アンドレイがそう言い切る前に、Jは彼の胸に手を突き立ててかき混ぜる。


 体内にある“モノ”を探すようなその行為は、彼に大きな負担を与えた。


「グッ、アァァ!! 止めろ……!!!」

「そうだねぇ……冥土の土産に、一つ情報を教えてあげよう」

「止めてくれぇ!!!!!」

「あの時君も異世界に送ったのは、剣人君が死んだついでさ。前世からの因縁があるっていうのは燃えるだろう? ……っと、これこれ」


 探し物を見つけたJは腕を引き抜く。


 アンドレイの身体は崩壊を止め、悪魔のような姿から元の姿へと戻る。

 だが同時に強大な力のある感覚が失われ、身体の熱も奪われていった。


「ふぅ、回収完了。この感覚も久しぶりだ」

「テメェ……俺に何をしたッ!」

「んっん~! ……ふぅ、これでヨシと」


 彼から回収した力を取り込んだJは、馴染ませる為に身体を伸ばす。

 その様子をアンドレイは睨むが、彼女にはまるで意味が無いようだ。


「このォ、俺の力を……! 返せッ!!」

「ハハハッ!! 残念だけど、これは私の力だよ」


 必死に伸ばすアンドレイの手を、Jは笑いながら踏みにじる。


「……あの時の剣人君もそんな感じで死んでいったんじゃないかな?」


 ――だからあそこまで君を恨んでいた。


 そう言ってJが微笑む頃には全てが崩れ落ち、アンドレイという存在……そして相澤熊五郎という存在は跡形も無く消え去った。






次回更新は9/20の21時になります。

しばらくはファンボックスの全体公開で裏話をする予定なので、良ければご覧下さい。

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