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剣と悪魔  作者: 鳥皿鳥助
第一章 ~ハンター編~
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第5話 デルカの愉快な日常






「デルカに所属するハンター諸君、特に呼んでないのによく集まってくれた。長々と喋るのは君たちも好きでは無いだろう。この街の現状を簡潔に話させて貰う。魔の森に住まう魔物が集団で暴走し、この街に迫っている」


 狩人の集い……通称ギルドに所属する人々は、時々街の防衛に駆り出される事がある。

 それは今のように魔物が大量発生し、氾濫した魔物が街にまで到達しそうになったときにされるらしい。


 デルカ支部の支部長をしている細身の男性、クロードさんはハンター達に呼びかけをしている。いつもティファニーさん達が座っている受付カウンターから見えるギルド内部では、数十人の人が慌ただしく動いていた


「狩り放題何だろォ!? 」

「さっさと狩らせろォ!! 」

「闘争だ!! 我らにはそれが必要だ!!! 」


 だがそれに負けず劣らず、クロードさんが話をしているギルドのホール側も暴動一歩手前と思える程に熱気を増していた。普段はそれぞれ狩り場に散っている気性の荒いハンターが一斉に集まっているのだ。

 僕はフェリエリさんに連れられて壁際に寄っている。

 そんな時間がいつまでも続くかと思われたが、その状況はドアが大きな音を立てて開けられる事によって変わった。


 ドアを開けた犯人はこの街の領主にして、僕の父さんであるウェイドだ。

 あまりの衝撃に亀裂の入ったドアを見て顔をしかめるティファニーさんだったが、父さんは彼女の顔を気にすること無く大声を張り上げた。


「待たせたな!! 野郎共、祭りの時間だ。気ィ引き締めて、魔物を締めに行くぞォ!!! 」

「ようやくか……予算はちゃんと持ってきたんだろうな? 」

「おう、国からもぎ取ってきたぜ。ただ量が量だから後で持ってくるぞ」


 さっきまではしかめっ面で立っていたクロードさんだが、父さんの言葉を聞いてその顔が緩んだ。……もしかしたらギルドの財政はそこまで豊かではないのかもしれない。

 父さんの話を聞いたクロードさんは、再びハンター達に向けて声を発する。


「デルカ所属の全ハンターに通達、“祭り”の時間です……全力で狩り尽くしてしまいなさい!! 」

「「「「ヒャッハァ!! 祭りだァ!!!」」」」


 ハンター達はクロードさんの言葉に答えるようにして大声を出し、一斉に外へと走って行った。

 その中にはこっそりウェイドも混じっていたような気がしたが……気にしないことにしよう。

 それよりも壁際に移動してて良かった。もし移動していなかったら、彼らに巻き込まれて外に押し出されていただろう。


「ありがとうございます、フェリエリさん」

「おう。良いってことよ」

「……ところで祭りって何なんですか? 」

「それについては私がお教えしましょう」


 すっかり静まり返ったギルドで彼らの言う“祭り”が何なのか疑問を持っていると、ちょうど近くに居たティファニーさんが教えてくれた。

 向こうも少しは落ち着いたようで、こうして話す余裕くらいはあるらしい。


 曰く彼らの言う祭りは“スタンピード”と呼ばれる現象のことを指しているらしい。

 そしてそのスタンピードとは、群集事故……つまり何らかの集団が暴走してしまい、制御不能に陥る(おちい)事である。

 この世界では魔物の暴走の事を指す事が多い。

 つまり――


「――魔物の大群がこの街に雪崩込んで来ると? 」

「そういうことだな」

「ちなみに数はどの位……? 」

「およそ1万匹程度との予想です」


 ……この街滅ぶんじゃない?


「まぁ、いつもの規模だな。ちなみにさっき走っていった奴らは戦闘狂って言われる部類のイカれたヤロー共だ。奴らが殺戮の限りを尽くして楽しみ、街は守られるしギルドも街も潤うから次第に祭りなんて呼び名が付いたんだぜ」

「普段は持て余す力を開放する貴重なタイミングですからね~。皆さん張り切ってますよ~」

「そのお陰で森はズタボロデスがネ。少しすれば元通りになる森も森デスガ」

「なら僕は家に帰っても大丈夫ですね……」


 ――僕が行った所で……


 なんて考えて帰ろうとした所、プリンさんに捕まった。

 抜け出そうにも力は流石にプリンさんの方が強くて抜け出せない。だが二人の顔を見るに、何か嫌な予感がする……


「チッチッチッ、甘いですネェ? ギル坊……」

「稼ぎと勉強の時間だ!! 俺達も行くぞ!!! 」

「えええぇぇ!? 嘘でしょ!! 無理ですよ!!! 僕なんか死んじゃいますって!!!! 」

「その為の俺達護衛だぜ、それに、最前線は行かないから大丈夫だ!! 」

「それにこの街にはリチャードの爺さんもいるから、怪我しても腕の一本や二本吹っ飛んでも安心デェス!! 」


 プリンさん、それは安心出来ないです!!


 なんて言葉を発するまもなく僕は戦場へと連れて行かれた……






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