【章末】 創壊の剣
世界樹の中で保管されていた一本の剣。
それは世界を作り出したという伝承が残る、創界の剣だ
ギルバード達を退けこの剣を手に入れたアンドレイは、ワイバーン達を引き連れ山奥へと移動していた。
「見た目は……思ったよりシンプルなんだな」
直線的な刃先から僅かに膨らみを付けられた柄までは白銀の金属で構成され、目立つ装飾は一切ない。
だが独特のオーラがシンプルな見た目という印象を上書きし、神々しいという印象を与える。
『見ているだけで良いのか?』
「分かってるさ。……ウェポンジャック」
アンドレイは静かに呟き、自身のスキルを使用した。
だが彼の右腕から伸びる黒い靄は白銀のベールに弾かれ、激しい紫電を発生させるだけに留まっている。
「何……?」
『構うな、続けろ。いずれ引き合うはずだ』
キングは怯むアンドレイの背中を押した。
実際、彼の助言は正しい。
白銀のベールが薄れると同時に紫電の量は減少し、黒い靄は少しずつ剣へと引き寄せられ始めた。
剣と靄の間に生まれる紫電、そして白銀のベールが失われるまでには長い時間をかからない。
白銀のベールが剥がれると同時に、辺へはにガラスの砕けるような音が響き渡った。世界を作り出した剣は本来の姿を取り戻し、その性質を顕にする。
「……どうやらコイツは世界を作ったり守ったりする為の物じゃなくて、壊すための物みたいだな」
『その通りだ。銘を“創壊の剣”と言う』
「創壊の剣、か……」
アンドレイのスキルは武器の見た目を大きく変化させる。
だが創界の剣は黒鉄の刀身を開放するだけに留まった。
持ち手と刀身の間に作られたガードは翼を広げるようにして開放され、各所に金色の装飾がなされている。
禍々しくも神々しいその見た目は白銀のベールで隠されていただけであり、この禍々しいオーラを放つ状態が本来の姿だ。
『雰囲気が変わっていて分からなかったが、“奴”が我々の世界で暴れた時もその剣を持っていた。それは恐るべき力だ』
「何でんなモンが世界を作った……なんて噂を残すんだ?」
『創造と破壊は表裏一体……と、“奴”は言っていた。それが正しいのであれば、出来てもおかしくは無いだろう』
「なるほどな」
アンドレイは黒く変化した剣を振るう。
創壊の剣は軽い一振りで大木を切り落とし、使用者をも困惑させた。
だが彼の感じた感覚は斬れ味が良いという事だけでは無い。
スキルを通して異様な親和性を感じ、まるで身体の一部となったような感覚も与えた。
「この力……どこまでやれるんだろうな」
翼を広げた柄に目を落とす少年は、静かに呟いた。




