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剣と悪魔  作者: 鳥皿鳥助
第六章 ~帰省編~
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第44話 竜の戦い






 ギルバードとフェンはデルカの街を守る為、ワイバーンと対峙した。

 互いに最初の攻撃での決着は回避したのだが、互いに手札はほぼ使い果たす結果となっている。


 ギルバードはどうすればワイバーンを討伐出来るか、次の一手を考えながらも攻防を続けた。

 しばらくすると、彼は一つの弱点に気が付いた。


「……フェンさん、ワイバーンは直上を取られるのを嫌っていました。つまり背中が弱点なんじゃないですか?」

『よく分かったな。奴ら(ドラゴン)は全身を強固な鱗と強靭な肉体で保護していたが、翼を動かす二つの筋肉に僅かな隙間があると言っていた。……やれるか?』

「はい。引きつけて貰えれば、確実に仕留めます」

『……分かった、後は任せるぞ』

「はい、任されました!」


 フェンはワイバーンを引きつける為、風弾の量を増加させた。

 ギルバードはフェンとワイバーンを挟み込む形になるよう反対方向へ移動し、ワイバーンが真正面のフェンに集中し切ったその時を狙っている。


 そうして狙いを定めるギルバードの前に広がる戦場はフレイムブレスと風弾が入り交じり、美しいとまで言えるような光景を作り出していた。

 だが当事者達にとってはそうも言っていられない。


 ワイバーンが大きく仰け反ったその瞬間、フェンが大きく吠える。


『今だ、ギルバード!』

「はい! ……せーのッ!!」


 ギルバードは深く踏み込んで大きく跳躍し、フェンはその手助けをした。


 それにより彼は先程とは比べ物にならない程の高さまで飛び上がっている。

 落下までの猶予を活用し、ギルバードはクリムゾンアギトに魔力を流した。

 すると歯状の刃は蠢き、屠る獲物を求めて暴れ始めた。


 蠢く刃は先端には無く、今回の用途ではあまり役に立たないだろう。

 だが無いよりはある方が良いと考えたギルバードは、(クリムゾンアギト)をワイバーンに向けて構え垂直に落下し始めた。


 だがワイバーンは迫る驚異に気が付く事は無い。

 目の前で風弾を放つフェンに夢中だからだ。


「……やぁあああッ!!」


 ワイバーンはギルバードの声、そして突き刺さる剣の感触で初めてその背に迫った驚異を認知した。


 魔力で蠢く赤い刃は深く突き刺さり、ワイバーンの口から赤い血と苦痛の鳴き声を漏らさせる。

 だが強靭な肉体を持つワイバーンは痛みに耐えて暴れ続け、ギルバードを振り落とそうと試みた。

 だが彼は死物狂いでしがみつき、ワイバーンに突き立てた剣を放そうとしない。


『ギルバード、剣を離せ! 振り落とされるぞ!!』

「いいえ……まだまだ! チャンスは逃せませんからッ!!」


 魔石をありったけ詰め込んだカートリッジをワイバーンの傷に埋め込むと同時に、ギルバードは振り落とされ剣を手放してしまった。

 使用者から魔力の供給を失ったクリムゾンアギトは刃の蠢きを止め、ギルバードはフェンの風が優しく受け止める。


『大丈夫か!?』

「ありがとうございます!」


 異物を振り払ったワイバーンは再び彼らに向き直り、戦況は仕切り直しとなっている。

 ワイバーンは次の一手としてフレイムブレス選んだ。


 だが大きく息を吸ったその瞬間――


「なっ、何が!?」

『魔力が……流れ込んでいる?』


 ――ギルバードの行動が功を奏した。


 背中にカートリッジはワイバーンの筋肉によって粉砕され、そこから溢れ出した大量の魔力がクリムゾンアギトへと集まり始めたのだ。

 背中に強烈な違和感を覚えたワイバーンは激しく抵抗するが、背中から放たれる強烈な光は強さを一切弱めない。


『何が起きているか分かるか?』

「あの位置にはクリムゾンアギトとカートリッジがあったはずです。でも今まで光った事なんで一度も無いのに……」

『ふむ……よく分からんが――』


 光は段々と輪郭を持ち始め、最終的にワイバーンのような竜の頭を形成した。

 その竜はクリムゾンアギトを下顎とし、ワイバーンの背中に深く噛み付いている。


『――アレは我々に与えられた大きなチャンスだ。一気に押し込むぞ、ギルバード!』

「勿論です!!」


 ギルバードはチャンスを逃すような教育は受けていない。

 むしろチャンスは掴めと両親やお手本になる大人達(デルカハンター)から教わった。


 ギルバードは今までと同じようにフェンの力を借り、雲一つ無い青空へと飛び上がる。


 ワイバーンに背を向けたギルバードはマジックシールドを構え、その前で小さなカートリッジを素早く爆発させた。

 規模はそれほど大きくないが、それが自身を傷つけずに加速出来る限界だ。


「これで……トドメだッ!!」


 カートリッジの爆発音……そしてマジックシールドのひび割れる音と共に、彼は勢いよく飛び出す。

 ひび割れたシールドは捨て即座に新たなシールドを作り出し、ギルバードは勢いよくクリムゾンアギトの柄を押しこんだ。


 竜の頭を押し込まれたワイバーンは背中を食い破られ、悲痛な鳴き声を上げながらも抵抗を続ける。

 たがその抵抗も次第に弱くなり、最後には天を仰ぎ高度を落とした。


「死んだ……かな」

『手助けしてやる、少しじっとしていろ』

「助かります」


 フェンは地上へ落下するワイバーンの身体を風で支え、緩やかに降下させた。


 ワイバーンの背でクリムゾンアギトを押し込むギルバードは肩で息をし、未だに微動だにしない。

 正確には緊張と疲労から微動だに出来ないのだ。


「ふぅ~、上手く行って良かった……」

『お見事だな、ギルバード』


 ギルバードはクリムゾンアギトを引き抜く。

 その刃はクリスタルホーンと同様にボロボロだが、それ以上にギルバードの身体がボロボロになっていた。


「ありがとうございます。でもまだ行かなきゃ……」

『案ずるな。コイツが魔物達を追い立てていたのであれば、(じき)に街にも平穏が戻るだろう。……だから貴様は少し安め』

「そうですか……?」

『あぁ』

「なら……少し、休ませて貰いますね……」


 若すぎる次期領主(ギルバード)の活躍により、デルカは難を逃れた。


 だが彼の武器は大きく損傷し、彼自身もまた酷く疲労している。

 こうしてフェンに身体を預ける彼が大きな怪我も無く街を守れた事には、フェンリルを味方に付けたという幸運のおかげでもあるだろう。






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