第18話 力の使い方
入学から数ヶ月が経った。
僕は学園の施設もほとんど把握し、お気に入りの場所となった広間でこれまでの授業を思い出す事にした。
その授業のほとんどは一般教養と言われる物だったり計算や身体を動かす授業等、実に様々な授業があった。
そんな授業を受ける中、僕はとある事を思った。
“マキシムを滅ぼした魔王は人類を滅ぼすのではなく、人類を滅ぼすと決めた原因を取り除くのに力を使えば共存出来たのでは? ”……と。
デルカのハンター達だって強い力を持っているが、多くの人々と共存出来ている。魔王とでも、やってやれない事は無かったのではないだろうか。
それでも今がそうなっていないということは魔王側が拒否したのか、人間側が拒否したのか……その理由は僕には分からない。
だが分からないと言えば、マキシムが滅んだ理由も結局分からなかった。
どこを探してもまともな記録が残っていないが故にかなりフワッとした話しか残っていない上に、その道のプロである学者先生達でも意見が割れているらしい。素人の僕に分かるはずも無く、マキシム滅亡の理由をすぐに見つけるのは諦めた。
そしてそんな風に学園生活を過ごしている中、実は一度プリンさんとフェリエリさんが来ていた。
何で来たのかと聞くと、二人がプレゼントしてくれた剣の説明をしに来たらしい。
どうやらあの剣は魔力を流すことで特殊な効果を持ち、使えば使うだけ成長するとのことだ。だが基本的にはちょっと頑丈なだけの剣として扱えば大丈夫なようだ。
紅色の大きな剣……クリムゾンアギトは魔力を流すと刃が蠢き、切れ味が上がった。
緑色の尖った剣……クリスタルホーンは一風変わって攻撃にも防御にも使える、緑色の結晶を作り出す。
この世界では基本的にどこでも帯刀が許されている。それはこの学校内でも変わらず、僕は持てる方のクリスタルホーンを持っている。
それを手に持ち眺めていると、どこからともなく火魔法が飛んできた。あの程度は父さんなら剣で消し飛ばせるが、僕にはまだそこまでの力は無い。
僕は立ち上がってクリスタルホーンを構える。
「よっ! と……」
クリスタルホーンに魔力を流しながら振り下ろすと緑色の結晶が壁のように広がり、飛んできた魔法を防いだ。
今までも何度かこうしてクリスタルホーンで防いでいる。
「落ちこぼれの癖に俺の魔法を防ぐとか、生意気だぞ!! 」
「そうだそうだ!! 」
「大人しく丸焦げになっちまえ!!! 」
広間に数人の生徒がニヤつきながら入ってくるが、こうなった理由……それは魔法の授業にあった。
元々人数の少ない僕たちDクラスは他クラスと合同で魔法の授業を行うことになっていた。そこまでは良かったのだが、入学式の時にも絡んで来たロベルト伯爵家の一人娘……ロベルト・ジェシカの言葉によって状況は変わった。
『ふんっ、こんな簡単な魔法も使えないなんて……やっぱりあなた達Dクラスは所詮落ちこぼれね』
人は子供でも大人でも、強い者の発言を第一に取る生き物である。
つまりは全員格下の存在を見つけ、ジェシカに便乗し始めたのである。
「この武器も……もっと使いこなせるようにならないと……なっ!! 」
僕に文句を言った後も、名も知らない生徒は魔法を撃ち続けてくる。
正直丁度いい訓練相手になっているのでありがたい。だがしばらくすると全員肩で息をするようになり、魔法を撃たなくなった。僕は軽く剣を振り、結晶を落としてから腰に戻す。
刺突と斬撃の使い分けは意外と難しい。だからこうした動作も最初は出来なかったが、最近は使い慣れて空を斬るだけでも結晶を出現させられる様になった。
「くっ、その余裕もいつまで持つだろうなァ!! 」
「トーナメントで徹底的に痛めつけてやるからな!! 覚えてろよ!! 」
「所詮お前は武器に助けられてるんだ! 俺だって良い武器を手に入れたら絶対に勝てる!! 」
「もー、面倒だなぁ君達……」
トーナメント、それは学期末に行われる試験のような物だ。
最上学年の生徒は個人での戦闘となるが、他の学年は数人でチームを組んで挑む。つまりチーム戦が主流なのだ。そして我らDクラスの人数は少ない。
この数の不利を少しでも解消する為に、どうにか話をしなければならないのだが全員が関わりを持とうとしない。
その現状をどう打開すれば良いか。
――こういう時にロイが居ると心強いんだけどな~……
なんて事を考えていると魔法を撃ってきた生徒はどこかへ行き、代わりにロイが視界の端からニョキッと現れた。
正直気持ち悪い。
「お待たせ、呼んだ? 」
「うわっ、呼んでたけど呼んでないのに出た……」
「この時期に悩むことと言えば……トーナメントか? あれは俺たちの学年だとチームワークがキモになってくるがなぁ……他の奴とうまく連携する自信はあるか? 」
「いや、厳しいでしょ~……」
「だよなぁ、今までろくに話しもして来なかったし……。だがようやく話が出来るって訳だ、リサーチは俺に任せろ!! 」
僕とロイは同じDクラスのメンツを思い浮かべ、二人揃って頭を抱えた。
――でも……
「まぁ、出来るようにするしか無いでしょ」
「そうだな……よーし、じゃあまずは今日の飯だ!! 」




