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第六話 怪獣君と水町さん

「怪獣君!」


 いつも通りの下校時間、ナスノが怪獣君を呼びます。


「どうしたんだいナスノさん?」


「何でもないわ!呼んだだけ!」


 ナスノははにかんで怪獣君を見る。

 怪獣君がナスノのボディーガードになって二週間。

 雨の日も風の日も彼らの下校時間にはストーカーの姿がありました。


 しかし、姿はみえるもののストーカーは何もしてきません。

 めぼしい出来事と言えば、最初に怪獣君の元に届いた手紙だけです。

 ナスノも何か変わったことがあるような様子はなくいつも明るく怪獣君に話しかけてきます。


「ナスノさん。」

「どうしたの怪獣君?」

「ナスノさんはどうしてそんなに楽しそうに出来るの?」


「怪獣君がいるからよ。」


 彼はその言葉に喜ぶ反面、未だ自分に自信を持てていませんでした。




――◆◆◆――




「ゴボウ君?」


 部活が終わりナスノと待ち合わせる校門に向かう怪獣君に水町さんが呼びかけました。

 夕日が差仕込む廊下に二人だけがいました。


「……どうしたんだい水町さん?」


「……うんん、なんでもない。」


 水町さんは静かにそう答えました。

 水町さんはここの所、いつも以上に静かでした。

 心優しい怪獣君は日を重ねることで彼女の様子がおかしい事に気付きました。


「……本当にどうしたんだい?水町さん。」

 怪獣君は水町さんに問いかけました。


「何でもないよ……。」



「そんなことない!!」



 水町の言葉をかき消すように怪獣君は吠えました。



「水町さんはなにか隠してる!」



「どうしてそう思うの?」


 戸惑(とまど)う水町に彼は勢いを失い、もじもじしながら答えました。


「……よくはわからないけどさ、……僕が落ち込んでる時と、……似たような顔してたから。」




「……ゴボウ君は、……ゴボウ君なんだね。」


 水町さんはそう言って作り笑いをみせながら言葉を続けました。


「……やっぱり悪いことはしちゃ駄目なんだなぁ。」


 彼女の言葉の意味がわからない怪獣君は動揺(どうよう)をみせました。


「……悪いこと?」




「……怪獣君はナスノさんのこと、好き?」




 彼女は怪獣君の質問に質問で答える。


「……え?」


 口ごもる怪獣君。


「……ぼ、僕は別に。ボディーガードをお願いされただけだから。」


 そんな彼の姿を見て水町さんは少しはにかんだ。


「……やっぱり、ゴボウ君はゴボウ君なんだね。」


「……どういうことなの、水町さん?」


「……臆病な怪獣君に私が()()をかけてあげる。」


 水町さんはニッコリと笑う。


 先程(さきほど)の作り笑いではなく、重たいコートを脱ぎ捨てた時のように自然な動作で彼女は笑ったのでした。




「嘘付きと笛吹きを懲らしめる素敵な()()を、ね!!」

2018/3/20 一部修正しました。

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