第三話 怪獣君とストーカー
「それでね怪獣君。私言ってやったの!」
「うん。」
「犬か猫なら私はうさちゃん派だってね!」
「なんだそりゃ。」
怪獣君が一週間ナスノと登下校を共にしてわかった事が二つある。
一つはナスノはとてもおしゃべりだと言うこと。
水町さんとは比べものにならないほどよくしゃべる。
彼が話をしなくても彼女の言葉が二人の間を埋めていた。
もう一つ彼が気付いた事がある。
彼女は本当にストーカーにつけられている、ということだ。
怪獣君は背が高いから彼女よりもよく周囲の様子がわかるのだ。
最初は気のせいだと思っていた彼もさすがに一週間見かけたために確信に至る。
フードを深く被ったジーパン姿の人物が彼らを毎日つけているのだ。
今だって二人を静観しているのだ。
朝の登校時には現れないが放課後は必ずと言っていいほど現れる。
その人物は彼らにばれないようにするため、距離をとっている。
怪獣君がそいつをみてわかったことは、自分より背が低いという事だけだっただろう。
ナスノにそのことを伝えようと怪獣君は恐る恐る声を絞る。
「ねぇナスノさん?」
「何かしら怪獣君?」
「……なにか視線を感じないかい?」
「まぁ私はモテるから当然よ!」
「あ、いや、そうじゃなくて……。」
「それよりも怪獣君!さっきのうさちゃんがね……。」
怪獣君が話をしようにも彼女の饒舌な口ぶりに圧倒されて会話が成立しない。
そんな中で彼は一昨日の放課後、下駄箱での出来事を思い出す。
彼が自身の下駄箱を開けると封筒に包まれた手紙が入っている。
『 ワ カ レ ロ。』
新聞紙の文字を切り抜いて紙に貼り付けたわかりやすい脅迫文。
これだけしか書いてなかったがそれだけで怪獣君には強い印象を残した。
この手紙がフードの人物と無関係とは思えなかった怪獣君。
犯人は自分達を知る同じ学校の生徒だと考えたことだろう。
「ねぇ?聞いてるの怪獣君?」
「……あ、ごめんごめん。なんだっけ?」
「だからね、うさちゃんが庭に二羽に別れてワニと遊ぶって漫画があってね……。」
彼女の話を聞き流しながらも彼は考える。
人から避けられてきた彼にとって誰かにつけられるのは初めての体験だった。
そしてそれは自分達の関係をよく思っていない人物。
言い様のない不快感が彼の頭をよぎる。
ナスノはよく追われていたと言っていたがいつもこんな気分だったのだろうか、きっと彼はそんなことを考えた。
「怪獣君?」
「どうしたのナスノさん?」
怪獣君の返答に彼女はその長い髪を揺らし、はにかみながら答えてくれた。
「怪獣君といると安心するね!」
誰かに狙われていると悩んでいた怪獣君はその純粋無垢な彼女の笑顔に思考を停止させる。
いつも頭の中で悩んでばかりの彼にない眩しさが彼女にあった。
「可愛い……。」
「なにか言った、怪獣君?」
「……何にも。」
彼は照れ隠しでそっぽを向いた。
結局その日、近くにいる別の人物の事で頭が一杯だったために彼はストーカーのことを気にすることはありませんでした。
家に帰って冷静を取り戻した彼はとりあえず次の日、信頼できる水町さんに相談することにしたのでした。
2018/03/20 一部修正しました。




