4.分裂大陸アルデバラン
ふっふっふ......今の私は1年前の私とは違うわよ。なにせ魔法は使えるし、剣や槍や弓なんかも扱えるほど成長したからね。今の私なら誰にも負けないわ........。
.......なんてことを考える暇もなく半年程過ぎ去りました。それにしても体力強化と魔力強化はいつまでやるつもりなのよ。......成人してもずっと?
まあ、実際にある程度の魔法は使えるから、あながち間違っているわけではないんだけど、流石にそこまで自惚れてないからね。自分のことぐらい分かるよ。なんならあの神様連中には、一生勝てる気がしない。まさしく神様って感じで圧倒的すぎるわ。
*************
「さて、今日はこの世界の地理について学びましょう。」
今日はたまにある勉学の時間だった。そして今日はユノさんが教えに来てくれている。
「じゃあ今日は、この世界で私たちが住む大陸についてから勉強しましょう。」
勉学の時間は今まで殆どと言っていいほどなかった。何でかですって?それは体力強化と魔力強化のための時間が、圧倒的に長すぎたからよ!!ほんと数えるくらいしかやってないかな。と言ってもその内容が簡単な読み書きなどだったので、残念ながら殆ど意味がなかったんです。ごめんなさい、勉学担当の皆さん。
「まず、私たちが住んでいる大陸はね、分裂大陸アルデバランと呼ばれているのよ。」
........最初っからツッコミたいことがあるなんて。
分裂大陸っていう自称はどうなの?まあ事情知らないならなんとも言えないけどさ。
「この大陸には6つの国がひしめきあっていてね、それぞれの国の仲はとっても悪いのよ。」
..........これは、分裂大陸で合ってますね。本当にどこの世界の人も他国と仲が悪いんだから.......
「この6カ国は今はそうでもないけれど、5、600年前頃から互いに戦い合っていたそうよ。」
「へ、へぇ。」
「そして、この6カ国はそれぞれが育成機関を作ったりして、他国との戦いに備えたりしたわ。」
「軍事設備の一環ですか?」
「まあ、最初はそんな感じだったけれど、後々ちゃんとした学校になったからね。魔導士官まあ未来の王宮魔導師育成の為と武術士官、未来の近衛兵や騎士の育成を目的とした学校がどこの国にもあって、ちゃんと学問も教えていて、文武両道を目指しているそうよ。」
国の為に学校を作ったのか...そういや普通の学校は無いのかな?あと商業学校みたいなやつもありそうかな。後で聞いておこうか。
「ところで、どうして6カ国は戦うようになったにですか?」
「その理由はね、本当は各国の王族ぐらいしか知らないんだけど........まあいいかな。7カ国目の利権争いと言われているわ。」
「この大陸には6カ国しかないんじゃないんですか?」
「殆どの人の認識ではそうよ。でも実際には7カ国目が存在するのよ。それは........ここアヴィオール神帝
国のことなのよ。」
「!!」
「まあ、驚くのも無理はないわね。でもいずれこの国から出て、学校に行くときに教えられるけどね。」
「学校って.....この国には無いんですか?」
「中等学校までしか無いのよ.....6カ国のうちどの国でも高等学校からは国が定めた一校しか無いからこの国も一応それに従っているのよ。」
「なるほどぉ。」
「この国を出るときには必ず誓約の魔法をかけられることになっているわ。」
「誓約の...魔法?」
「そうよ。この国の存在を他人に口外しないようにするためにね。」
「なるほど、だからこの国は誰も知らないんですか。」
「そうやって秘密を守ってきたからね。」
**********
数日後......王宮にて、
「アウラはおるか?」
「何でしょうかお父様?」
「儂は用事で暫くこの国を離れるのだが、アウラも一緒に来るか?」
「えーっと......何方へ行かれるのですか?」
「アウラはまだ知らないかもしれんが、この国は表面上、第6国アルファルド王国に属する土地を管理する1貴族ということになってるじゃよ。」
「そうなのですか。」
なるほど。そういう事にしてこの国は成り立ってたんだ。表面上は、となると実際はこの国はやっぱり存在しない事になってるのかなぁ。
「それでアルファルド王国側の領地も治めているから、度々向こうにも、顔を出しに行かなくてはならないんじゃよ。」
「そうなのですか。」
「で、アウラは一緒に来るか?因みにパウロスとエマノエルも一緒に来るぞ。」
「パウロス兄様とエル兄様もですか?」
「そうじゃよ。あの2人も今回が初めての外国になるかの。」
外国かぁ。とても魅力的な話だけど、どうしようかなぁ。
「別に無理にとは言わんぞ。あくまでもアウラの意思を尊重するからの。」
「分かりましたわ。私も御同行させてください。」
「よし!!そうと決まれば早速準備に取り掛かるかの。」
「え?今から行くのですか?」
「そうじゃよ。早く行って、早く帰りたいからの。」
「わ、分かりましたわ。私も準備に取りかかりますわ。」
かなりトントン拍子で話が進んでしまったが、結局私はお父様達について行く事にした。外国なんて滅多に行けないと思うしね。まあ成人してたときには、学校に行くために外国に行くんだろうけど。
数時間後....
「これが...馬車ですか?」
「そうじゃよ。アウラは馬車も初めてじゃったか。」
私は生まれて初めて馬車を見た。うん。思ってた通りの形ですね。まあ実際には地球で馬車のイメージくらいは知っていたけど、それと遜色無さすぎるかな。別にどうでもいいんだけれど。
「それじゃあ、アウラも早く乗りなさい。もう、パウロスもエマノエルも乗っておるからの。」
「分かりましたわ、お父様。」
そう言って私は人生初の馬車に乗り込んだ。
「おお、アウラ来たか。」
「はい、パウロス兄様。エル兄様もよろしくお願い致しますわ。」
「もちろんだよ、アウラ。」
私は馬車の中で2人の兄に挨拶をした。まあ、一応の礼儀作法みたいなものかな。今はパウロス兄様が10歳で、エル兄様が7歳のはず。最近は殆ど遊んだりしていなかったから、何だか2人と会うのが少し久しぶりな気がする。何せあの神様連中の修行のおかげで、私は、私は..........このあたりでやめとこうかな。
「よし、使用人達も乗り込んだ事じゃし、3人とも出発するぞ。」
「「はい、お父様。」」
因みに三男のアンドレアスはお留守番である。彼はまだ3歳なので王宮に置いていく事になった。あとお妃様というか、お母様もアンディーと一緒にお留守番をしている。アンディーはアンドレアスの愛称である。エマノエル兄様をエル兄様と呼ぶ感じで。
「お父様、なぜ私たちをフランク子爵領にお連れになさって頂けるのですか?」
「それはじゃな、お前たちももういい歳じゃからそろそろ外の事を知っておいてもいいと思ったからじゃの。」
このアルファルド王国では、王都とを王族が、それ以外の領地をそれぞれの貴族が治めている事になっている。また貴族の殆どは王都に別邸を持っており、そこに王都の学校へ行く子供を住まわせたりしているらしい。........馬車の中でお父様から聞きました。何で勉学の時間で教えてくれなかったんだよ。そういう実用的なことを教えて欲しかったなぁ。
「そろそろかのぉ。」
「何がですかお父様?」
「分かる子には分かるものじゃよ。」
「「?」」
お父様が突然意味がわからないことを言い出したので、兄弟3人とも頭上にハテナマークを浮かべた。
「!!」
「おお、アウラ、気づいたかの?」
「今一瞬何かが弾けたような......」
「僕にも分かりました。何というか.....」
「アウラもエルも何を言っているんだ?俺には何も感じられなかったぞ?」
「そうかそうか。アウラだけでなくエルも気づいたか。まあパウロスは気づかなくても当然かのぉ。」
「どういう事ですか、お父様?」
「今儂たちは結界を突破したからのぉ。魔法に適性が高い者には何となくじゃが分かるんじゃよ。」
「結界、とは何ですか?」
「アヴィオール神帝国の存在が分からないようにする結界じゃよ。」
この国ではそんなものまで使っていたんだ。とするとその動力は何になるんだろう。まさかあの人達なのかな.....?
「そうですか。なら私には分かりませんね。自分には魔法に適性が無いですから......」
「兄様!!兄様は魔法に適性が無くても武術が達者である事をアウラは知っています!!」
「ありがとう、アウラ。でもいいんだ分かっていた事だから。」
そう。パウロス兄様は魔法が使えないのだ。まあこの世界では魔法を使える人の方が少ないので、多数派といえば多数派ではある。また魔法を使える人はごく僅かであるので、兄弟の中に2人も魔法の適性がある者がいるということは、ぶっちゃけ異様なのである。いや私は兄弟から除外すべきかな。
「パウロスよ。そんなに気落ちするで無いぞ。儂だって魔法は使えんからの。おおそろそろ着くぞ。あれが我が領、フランク子爵領じゃ!!」
そうこうしている間に私たちは目的地にたどり着いたのであった。