1.新たなる幼子
この世界のある大陸は現在6つの国家に分かれて支配されている。6つの人族の国であり、それぞれの国の間にはそれぞれの思惑が蠢いていた。また人族の住まう6つの国にはそれぞれの王族が住みそれぞれの自治がなされてきた。
.........そんな中俺、藤ノ宮龍也は見知らぬ天井を見ながら目を覚ました。
「オギャー、オギャー!!」
「奥様!!立派な女の子ですわよ!!」
「あらまぁ。あの人に似た雰囲気だわ。」
「オギャー、オギャー!!」
「元気に泣いていらっしゃること!!」
見知らぬ天井.....というか目があまり良く見えなかった。何でだろう。とりあえずここは俺の家ではないな。
そして........俺は赤ん坊になっていた。確かに最後の記憶ではあの日高校に行って抜き打ちでテストをされた気がする。あれ?ここもはや地球なのか?
「オギャー、オギャー!!」
「奥様、ご体調は大丈夫ですか?」
「ええ。産後だけど落ち着いているわ。そろそろこの子に名前を教えてあげないとね。」
「奥様、この子は何という名前なのですか?」
「この子の名前は.......アウラよ。アウラ=ヘクトル=エリアスよ。」
そう。俺は前世だは男だったが、今女の子として転生してしまった。というか本当に転生に至った理由が分からない。いや、待てよ....?
そういや幼馴染と一緒に帰宅したあとすごい睡魔に襲われたような.......まあよく覚えてないな。
「さあ、奥様早く産湯につけて差し上げないと!」
「それもそうね。そうしましょう。」
そしておr.....私はこの世界に転生した。口調を女の子っぽくするのって難しいな。
**************
そして2年が経った。私は無事に2歳を迎えた。
いや2歳だからってなにもできないよ?
「アウラ、ご飯にしましょうねぇ。」
「あうぅぅーー、まんまーーー」
この有り様である。何もできません。はい。
「いっぱい食べて大きくなってねぇー。」
「まんまーーー、ごはーーー」
「はいはい。ちゃんと上げるわよぉ。」
まあ流石に2年間この家で過ごしてきて発見がなかった訳ではない。
まず最初に、この家には父親がいない。つまり母子家庭である。正直珍しいと思う。だってここは地球ではないのだし、家の内観も中世の仕様に見えるから流石にそんな時代に母親と子供を残して何処かに行くような父親はいないだろう。いたとしたらそいつサイテーだろう。
もう1つ分かったことはこの家は割とお金持ちである。父親がいないのに何故金があるのかと思わなくわないが、毎日の食事の質や使用人が数人いるところから見て貧乏では少なくともない。まあこの世界の基準がわからないから何とも言えないが。
と呑気に考えていたら、
「奥様!!大変です!!」
「あら、バジリアさんどうなさいましたか?」
「奥様お早くお逃げください!!魔物の群れが私たちの村へ攻めてきました!!」
「何ですって!!でもこの子がいるし、逃げるにしてもまだ時間はあるのですか...?」
「い、いえ。せめてお隠れください!!」
「わ、分かりました。貴方も早く隠れなさいね。」
「畏まりました!」
なんかヤバくなってきたな。おr....いや私、転生して2年で死ぬんじゃね?何しにこの世界来たんだろう。いや、来たくて来た訳では無かったな。気づいてたら来ちゃったみたいな感じか。
「アウラ、貴方はここに隠れていてね。」
「まんまーー、あうあぁぁーー。」
「静かにしててね。見つかっちゃダメだからね。」
そういうと母は私を台所の地下収納に隠した。いや貴方は隠れないの?流石にこのあと1人になったらいくら転生者でも生きていけないでしょ。てか親に死んでほしくない。一緒に生きて欲しい。その後母は近くの物陰に潜んだ。
親と一緒に生きたいという私の想いは、無残に打ち砕かれ魔物が台所にやって来た。
「グギャァァァ!!」
うわあ。魔物のイメージのままです。とか悠長なことは言ってられなかった。
「この子だけは私が守るわ!!!」
そう言った母は恐らく魔物と戦ったのだろう。しかし私には見えなかったからよく分からない。というか親に死に様なんて見たく無かった。たった1人の母親が.......何もできない自分に失望しそうになった。
「おい!!生き残りを探せぇぇ!!」
「餓鬼は1匹残らず始末しろ!!必ず探し出せ!!」
「!!」
おいおい。魔物の襲撃じゃ無かったのかよ。人間が先導してる感じじゃん。もう分からなくなってきた。私の母さんを殺したこいつらを許すことはできない。でも今の私だと何もできない.......
そう思っていたら、私の意識はブラックアウトした。
くそぉ、幼児ってこんなに眠くなりやすかったっけ......
「..........遅かったか。せめてあの2人は..........。」
「!!?」
「そうか、すまない。シンシア、安らかに眠っておくれ。しかし、あの子は何処だ。まさか連れ去られたのか?いや、地下収納に何か気配がする。これは我らの力の気配か........アウラッ!!!」
**************
..........また知らない天井だ。なんてことを言っている場合ではない。母さんはどうなった?
「おお!!目を覚ましたか!!」
「そうですね王様。しかしユピテル様の願いとはまたお珍しいですね。」
「まあ、あのお方は気まぐれじゃからの。はじめましてー、きょうからわしがおとうさまですよー。」
んん?どっかの子にの王様に拾われて娘にされたぞ?
てか誰ですか、ここ何処の国ですか。何も分からん。
「おい!クレタス!この子の名前は何というのじゃ?」
「はい、ユピテル様曰くこの子の名前はアウラ=ヘクトル=エリアスで御座います。」
「そうか、アウラか。じゃあ今日からこの子はアウラ=レオニダス=フォン=フランクじゃ。」
「しかし王様、宜しいのでしょうか...?」
「名義上儂の子にするぐらいええじゃろ。あのお方が一任すると仰っていたのだからな。」
「は、はぁ。私は知りませんよ。」
こうして私の名前は親と共に変わってしまったのである。
生まれてからたった2年間でこんな災難に遭うとは...
**************
それからさらに2年後.........
「お待ち下さい!!お待ち下さい、アウラお嬢様!!」
「へへーーん。誰も私を捕まえるなんてできませんわ!!」
「こら、アウラ、使用人を困らせちゃうダメだろう。」
「申し訳ありませんわお父様。以後、反省致します。」
「う、うむ。」
王宮に来たのいいことにやんちゃしてます。
と言っても皆さんに迷惑をかけるようなことはしてないよ?ただちょっと王宮内を走り回ったり、使用人から隠れたりしてるだけで.......やりすぎかなぁ?自分では年相応の元気な女の子だと思うんだけど。あ、演じているわけでは無くやりたいからやってます。そっちの方がたち悪いかも。
この国の王族には王様とお妃様と3人の息子がいた。
因みに私は3番目の娘です。養子のようなもんだけど。
「パウロス兄様ぁぁ!!」
「アウラ!!どうした?」
このような感じで周囲に甘やかされ甘えている関係となっているのである。仕方ないよね。だって2歳で本当の母親を亡くしてるんだから。
今現在、私は4歳で5つ上にパウロス兄様がいて、私の3つ上にエマノエル兄様がいて私の2つ下にアンドレアスがいるという感じだった。
「兄様、私と遊んでくださいませんか?」
「いいぞ、アウラ。何して遊ぶ?」
「ままごと!!ままごとがいいですわぁ!!」
またただ甘やかされているだけで無く家族みんなが私にデレデレなのである。なので私はこれから起こることを微塵も考えたりはしなかった。まさかあの優しいお父様が........
その次の日.........
「アウラはもう4歳になるんだったな。」
「はいお父様。アウラもう4歳なのです。もう1人で何でもできますわ!!」
「そうかそうか。じゃあ今日はちょっとあいつに会いに行こうか。」
「あいつ.......とは誰のことなのですか?」
「まあ、行ってみれば分かるさ。行こうかアウラ。」
「はい!!お父様!!」
私はこの元気な返事を最後にして、地獄のような日々を送るのであった。
どうもyukiです。
この話は毎週日曜に投稿できるようにしたいと思っています。
神血の魔導師をよろしくお願いします!!