金 (短編小説)
人は泣きながら生まれ、泣かれながら死ぬ。
01
私は、とある社会制度のもとに生きている。
この国には、『行動税』なる税金制度が存在する。
簡単に言えば、行動のすべてに税金がかかるのだ。
国民のすべてには、小型のウェアラブル端末の装着が義務づけられており、脈拍・心拍数などが常に計られていて、息を1回吐くのにも吸うのにも、何か行動をするたびにいちいち税金を国に納めるシステムなのである。
監視カメラも無数に死角無く設置されている。
もちろん、1歩あるいただけでも税金がかかり、紙に1文字書いただけでも税金がかかる。
02
・・・・・・私は重体で、病院で死の床にあった。
そこに、税務署からの役人が私のベッドの横に来て言った。
「勝手に死なないでください。Aさん。
死ぬならまず、死税を支払ってから死んでください。」
(この国では、死ぬ事すらも簡単に許されないのか! )
そう、この国では沢山、納税した者ほど(沢山行動した者ほど)名誉とされ、人々に崇められるのだ。
金の無い者は、泣く事も許されず、感情表現する事も許されず、恋をする事も許されず、まばたきする事も許されない。
当然、税金を支払えない者は重く処刑される。
しかし処刑内容は誰も知らない。
生き死にの沙汰も金しだいなりけり。
【終】
☆あとがき☆
人類文明は今後ももっと、完全なる管理社会・監視社会になるととても怖いですね。