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外れ者たちの出会い 1

この小説は元ネタに『東京異端審問』(http://allegro.tudura.com/inou.html)を使用させていただいています。

下敷きとしてこちらの設定があるというだけで、キャラクター・ストーリーなどは完全にオリジナルです。

 そう広くはない室内に、淡々と説明する声が響く。

「……と、言うわけで、堂上主任は失踪したと判断された。非常に残念だが……皆には今後も励んでもらいたい。これで朝礼を終わる。各自業務を開始するように」

 課長の説明には何の感情も乗っておらず、室内にいた警察官全員がややざわめく。

「業務を開始したまえと言ったはずだが?」

 課長の冷ややかな声に、慌てて自分の机へと移動していく。


「あれはどういうことですか!」

 悲鳴のような女性の声が響き、それまでざわめいていた室内が静まり返った。

「静かにしたまえ、逢坂莉緒。彼の件については先程説明したとおりで、これ以上言うことはない。仕事に戻りなさい」

 呆れたような上司の声が、彼女の耳に届き、悔しそうに俯く。

「……失礼いたしました。仕事に戻ります」

「ああ」

 ぴしりと敬礼し、そのまま踵を返して足早に去っていった莉緒の背後で、上司は呟いていた。

「要注意、かね」


 憤然と廊下を突き進む莉緒からは怒りのオーラが放たれていて、見かけたものはびくりと足を止める。

「あんな、先輩が失踪だなんて、ありえないのに。あの扱い。ふざけてるのか……っ」

 自販機のボタンを叩きつけるように押し、紙コップに注がれたコーヒーを流し込む。紙コップは握りつぶされてからゴミ箱の中に放り込まれた。

 仕事場に戻ると、机に積み上げられた書類を猛然と処理し始めた莉緒に、同僚の笠原は苦笑する。

「またやったな。逢坂」

「不本意ながらまたやらかしたよ」

「どんまい。後でジュースでも奢るよ」

「いらないから」

 書類を手にパソコンを睨む莉緒の肩を、笠原はぽんぽんと叩いてから外へ出て行った。

「……謎の黒い車。先輩の部屋も確かめに行ったけど、荷物は空っぽで、先輩が直接言いに来たわけでもないのに引き払われている。結果がこの失踪者扱いだ。あと少しなのに……!」

 激情に駆られて、いつの間にか握り締めていた書類のしわを伸ばしながら、ため息をつく。


 それからも莉緒は黙々と仕事を片付け、帰宅することにして立ち上がった。残業しないですんでよかったとなんとなく思いつつ、夜道を自転車で飛ばす。

「……あれ、は」

 視線の先には黒塗りの車。いかにも怪しい車に莉緒の眉が寄る。失踪した先輩に関して調べていて、ほんの僅か入手した情報。その中にあった黒い車の情報に、それは酷似していた。

 黒い車が走り去っていくのを、こちらも黒いバイクが追う。気づかれないようにある程度の距離を保って。

「あんな静かなバイクなんてあったか……?」

 首を傾げてからはっとする。バイクを追って走り出した莉緒は、猛然とペダルを漕ぎ出した。

 その後もどんどん遠ざかっていくバイクを追いかけていたが、やがて体力が持たなくなった莉緒は息を切らせていた。

 さすがにもう限界、と自転車を止めた、その時。低い男の声が聞こえた。

「あの車を追ってるんだろ?」

 横から突然声をかけられ、びくりと肩を震わせる。

「なっ」

 暗闇に没した路地に、先程車を追っていったはずの黒バイクの人物が立っていた。バイクからフルフェイスのヘルメットまで含めて艶消しのマットブラックで、静かに佇まれるとまるで気づかないほどに気配が薄い。

「発信機をつけたからあの車を追えるぞ? 追いかけたいなら乗せてやるが」

「だ、誰だお前」

 警戒心むき出しで後退する莉緒を見て肩をすくめた彼は、メットを取って顔を見せた。

「俺は結城海理。知り合いが攫われたんで調べてたら、攫った男とさっきの車に乗っていた男が同じだった。だから追っている。……あんたも似たようなものだろう? 乗るのか、乗らないのか早く決めな」

「……わ、かった」

 警戒しながらも頷いた莉緒に、結城海理と名乗った男は予備のヘルメットを投げて渡す。

 自転車を路地に置いて、早く乗れと促す男の後ろに腰を下ろす。

「うわっ」

 途端、急発進したバイクに驚いてのけぞる。

「しっかり体を固定しとけ。落ちたら大怪我だぞ」

 そんな時間ロスしたくない、とメット内臓のマイク越しにぼやく男に対して、思わず謝る。

「わ、悪い」

 目の前の男の腰に手を回して思い切りしがみついた。このスピードで落ちたら死ぬと無意識に呟く莉緒に、そうそう、と男が低く笑う。


 不思議なくらい音がしないバイクに乗って1時間ほど走り、莉緒がそろそろどこだかわからなくなったところでバイクは止まった。

「着いたぞ。降りろ」

「ああ」

 小さな懐中電灯を手に持って低く言う男に続いてバイクを降りる。

 辺りを見回しても、暗闇と、その中にぼんやりと浮かぶうっそうとした森しか見えず莉緒は首をかしげる。

「ヘルメットは?」

「顔を隠さなくていいなら置いていけ」

 そういう男はヘルメットをバイクの上に置いているが、尋ねても「もう変装してるし、わざわざ視界を狭めたくない」と簡潔に返答が帰ってくるだけだった。

 莉緒は変装道具など持ってはいない。仕方ないので被ったまま、早く行くぞと促してくる男に頷きを返した。

「こっちだ」

 男について歩きながら、ここがどこなのかと尋ねると、端的な言葉が返ってくる。

「山に囲まれた入り江」

「入り江!?」

 思わず上げた声に、男が嫌そうに注意をしてきた。

「煩い」

 その声にすまないと頭を下げてから、莉緒は先程の言葉を反芻する。この辺りで山に囲まれた入り江といえば、心当たりは一つしかない。

「……あそこ、か」

「船がまだ出港してないことを祈るんだな」

 言って、急な坂道を滑り降りていく男を慌てて追った。

「船、て」

「"行方不明者"が乗せられる船さ」

 坂を滑り降りた後、木々の間をすり抜けるようにして二人は走る。

 数分後、ぼんやりと明かりのともる建物が見えてきた。

「あれだ。突入するが、お前はどうする?」

「私も行く。……あそこに行方不明者がいるんだな?」

「まだ船が出ていなければな」

 静かに建物の中へ侵入する男の後を追いながら、いったい私は何をやっているのだろうかとなんとなく考えてしまう莉緒だった。

 どこに何があるのか最初から知っているようにすたすたと歩いていた男が、突然立ち止まって、目の前にあった大きな扉を蹴破る。それに驚いてびくりと震えた莉緒を尻目に男は中へ踏み込んでいく。

「おい!」

 慌てて追って入った部屋の中は、外気が入り込んでひやりと肌寒い。ただの部屋だと思っていた莉緒は、目の前に広がっていた光景に唖然とした。

「ドック……?」

 今まさに船が海へ出ようとしている、その場へ踏み込んだらしい。

 ぽかんと立ち尽くす莉緒を、男は突然小脇に抱えた。

「落ちるなよ」

 言うが早いか手に持っていたらしいロープのようなものを船に投げつけ、海に出ようとする船に引かれながら併走する。

 足場がなくなる寸前に地面を蹴り、手元の装置を操作する。体重を支えてくれるものがなくなり、二人は浮遊感に襲われる。ロープがぴんと張り、同時に両肩にぐんと重力負荷がかかった。装置によって巻き取られ、急激に縮んだロープの勢いも借りて船の甲板に飛び乗った。

「行くぞ。何か武器は持ってるか?」

「い、いや持ってない。仕事上がってるし……」

「じゃあこれ使え」

 揺れる船の上で、男が莉緒に投げ渡したのは拳銃。

「ベレッタじゃないか! お前どこから」

 手の中に落ちてきた重みに驚いて声を上げるが、男は首を横に振って歩き出した。

「質問に答えてる暇はない。うっかり撃たれるなよ?」

 そう言って、甲板の入り口から船内へと滑り込む。

 中に入ってみれば、そこそこ大きな船とはいえ、どうも人の気配が薄すぎるような気がする。前を行く男はそれをいいことに隠れる様子もなく、堂々と階段を下りていってしまい、莉緒はなんともいえない気分になりながら後を追った。

「いいのかこんなに堂々としてて……」

「どうせ殆ど人がいないんだ。隠れるだけ無駄」

 色々ありすぎて驚くどころか麻痺してきた頃、ようやく最下層についたらしい。すたすたと歩を進めていた男が突然立ち止まり、曲がり角の向こうに何かを投げつけた。

「何を?」

「見ていればわかる」

 少し間が空いて、鈍い破裂音と同時に白い煙がこちらまで流れてきた。

「今のってまさか」

「催眠ガスと念のために催涙弾的なもの?」

「(……どういう念のためだ)」

 いつの間にかガスマスクをしていた男に、驚くやら呆れるやらで殆ど脱力しかかっている莉緒を促して、廊下の先の厳重に鍵がかかった扉の前にきた。

 扉の両脇には、先程の煙にやられたらしい武装した男二人が倒れている。そのうちの片方に歩み寄った男が、武装を剥ぎ取ってその下の服の内側を探り始めて、暫くして小さなキーケースを取り出した。そのまま無言でキーケースの中の一番大きな鍵を扉に使い、他の鍵もするすると開錠していく。

「お前はゲームのシーフか何かか」

「はは、まさか」

 最後の鍵を開けると、扉を開け放った。中は薄暗く、澱んだ空気が廊下側に流れ出してきたような気さえする。

「イーズ!」

「え?」

 突然、嬉しそうな声とともに若い青年が奥から飛び出してきた。それを少し身を捻ってかわした男が、飛び出してきた青年の足元にすっと足を差し出して、男性がものの見事に転んだのを見て思わず目をそらした莉緒だった。

「あだっ!?」

「ポロ。何あっさり捕まってるんだアホかお前は」

 ガスマスクを外しながら投げつけられた言葉に対して、青年はやや涙目で文句を言った。

「そ、そりゃないッスよ! まぁそりゃ警察だと思われて捕まったとかすごく間抜けだけど!」

「なんだ。自覚はあったのか。間抜けめ」

「ひどっ」

 かけあいじみたやり取りに遠い目をしたくなりつつも、薄暗い部屋の中に目を凝らす。

「そういえば、お前の他に誰かいたか?」

 イーズが尋ねると、ポロと呼ばれていた青年が首をかしげて少し考える。

「あー、奥のベッドに一人いたッスかね。結構酷くやられたみたいで、気絶してたと……ってわっ」

 その言葉を聞いて飛び込んでいった莉緒に驚いて、ポロが妙な声を出した。

「てわ?」

「違うッスよ!」

 そんな会話をしつつも、莉緒を追って二人は部屋の中へ。

 奥に備え付けられていたベッドには、ろくな手当てもされないまま寝かされている壮年の男性が横たわっていた。

「堂上先輩」

 呟く莉緒を覗き込んで、ポロが尋ねる。

「その人先輩なんスか?」

「え、あ、まぁ」

 莉緒が戸惑いながらも先輩――堂上に手をかざして何かしているのを見て、それを見下ろしていた男が首をかしげる。

「もしかして治癒能力持ち?」

「絆創膏代わり程度だけど、一応」

「へぇ……」

 大きな変化ではないが、徐々に傷が塞がっていく様子を興味深げに見守る男を、ポロは妙なものを発見したような目で見やる。

「本当に、イーズ?」

「何が」

「や、なんでもないッス」

 胡乱な目を向けられてポロは目をそらす。

 今まで何かに興味を持ったようなイーズを見たことがなかったから驚いた。ポロはそんな内心の声が、どうやら漏れずにすんだらしいと胸をなでおろした。

 男――イーズはあらかた治療が終わったらしい莉緒に「もういいか?」と声をかける。

「ああ、待たせて申し訳ない……って忘れていたけど、ここ確か船で出航してたはずじゃ」

 どうやって帰るのか、と焦りを滲ませる莉緒を見下ろして、イーズは笑った。

「船橋乗っ取って戻る」

「なるほど……え、はぁ!?」

 目を丸くして驚きの声を上げた莉緒に、ポロは苦笑して耳打ちした。

「イーズはこういう人だし、驚いてたら身が持たないッスよ」

「それは、もう、よくわかってる。……イーズ? 過激派の?」

「あれ、知らなかったんスか?」

 この人、『海竜』の“イーズ”ッスよ? とポロが不思議そうに言う。

「何のんびりしてる。外海に出る前に乗っ取るぞ」

「あ」

「ポロはその男を背負ってけ」

 ぽかんとする莉緒を急かして、二人の間で息の合ったやり取りが交わされ、四人になった一行は船橋へと走り出した。

「なぁんで船橋? ブリッジ? ってこんな上にあるんスかねぇ。めんどくさー」

「昔、舵輪が舵の上部付近にあるのが望ましかったからだ。今は船の後部にあるわけじゃないからあまり関係ないし、他の理由があるがな。……めんどくさいとか言ってる暇があったら全力で走って船橋制圧してこい」

「えーここまで来たら皆で行きたいッスよー。あ、それに他の場所には乗組員いないって言ってたし!」

 聞いてるだけで力が抜けてくるようなポロのセリフを、イーズは鼻で笑う。

 階段を駆け上がって一番上に辿りついた四人(内一名気絶)は、『関係者以外立ち入り禁止』と書いてある扉の前に立っていた。

「おー、ここッスかー」

 分厚くて頑丈そうな扉で、鍵がかかっているらしい。先程と違って鍵はないのにどうやって開けるのだろうと莉緒が思っていると、腕を組んでいたイーズが口を開いた。

「ポロ」

 注意書きを見つめていたポロが「なんスか?」と首をかしげると、イーズは端的に命令した。

「蹴破れ」

「え」

「了解ッス!」

 威勢よく返事をしたポロの体が、僅かに光を帯びたような気がして、莉緒はぱちぱちと瞬きする。

 次の瞬間にはその右足が重そうな扉を文字通り、蹴破った。ひしゃげて吹き飛ぶ扉を、莉緒は唖然として見つめる。

「あ、えと名前なんだっけ? まぁいいや。この人と一緒に扉の外にいるッスよー」

「ちょ、待」

 莉緒に担いでいた堂上を預けると、ポロはイーズとともに船橋に乗り込んでいった。骨が折れるような音とか、銃弾が飛び交う音とか、船橋で聞こえてはいけない音が聞こえた気がする。最後に「んぎゃっ」と蛙が潰れたような声が聞こえて、船橋の中はシンと静まり返った。

「入ってきていいッスよ」

 ひょこりと顔を出したポロが、再び堂上を担いで歩き出す。

 その後に続いて莉緒が中に入ると、死屍累々と言うのがふさわしい状況が広がっていた。かろうじて死んではいないようだが。

 そして、中央で計器類をチェックして舵輪を握っているのはイーズ。

「操縦できるのか?」

「動かすくらいなら大体のものはなんとかなる」

 ポロはまた莉緒に堂上を預けて、床に伸びている武装した船員たちを、こんなやつらでまともに操縦できるんスかねーとか呟きながら縛り上げていた。

 それを終えた後、莉緒と一緒に堂上を船橋の後ろのほうに寝かせ、首をかしげた。

「てか、そういえばこの人? 堂上さんだっけ。警察って誰かが言ってたッスけど……もしかしてあんたも」

「あー……ハイ。警察官の逢坂莉緒です。よろしく?」

 ヘルメットを取りながら、莉緒が軽く頭を下げる。

「うわーい。……えぇと、オレ、ポロッス。よろし、く?」

 妙な雰囲気で固まった二人を見ようともせずに、イーズは冷たく呟く。

「のんきだなお前ら」

 ポロがひぃっと息を呑んで、慌てて計器類の前に走っていく。そして二人があれこれと指示を出したり出されたりしながら船を元のドックに戻すまで、莉緒はぽかんとその様子を見守っていた。


 船を戻しドックに降りた莉緒たちは、イーズに指示されて、建物内のあちこちに爆弾を仕掛けながら外に出た。

 一時間ほど前にイーズと莉緒が滑り降りてきた坂を上りながら、ポロが不思議そうに建物を振り返って言う。

「どーして爆弾なんか仕掛けるんスか?」

「ここを潰したところで"行方不明者"がなくなるわけじゃないだろうが……まぁ一応な」

「ふーん……?」

 いまいち理解していなさそうなポロから視線を眼下の建物に戻して、手に持っていた装置のボタンを押す。僅かな間があって、鈍い爆発音。そして目の前の建物が倒壊していくのをイーズは冷めた目で見ていた。

「さて」

 ドックも含めて完全に瓦礫と化した建物を確認して、イーズは振り返って尋ねた。

「どうする?」

「どうって、なんスか?」

「お前じゃない」

「へ」

 イーズの視線の先にいたのは莉緒。

「え、私、か?」

 ぽかんとしている莉緒に、イーズは頷く。

「そうだ。その男、お前の先輩。もう行方不明者として処理された以上、警察に戻ることはできないだろう。だからどうするか、と聞いてる」

「……あ」

 ポロに背負われている堂上を見て、莉緒は考え込む。

 沈黙が降り積もる中、耐え切れなくなったポロがわざとらしい声を上げた。

「あ、あのッスね!」

 不思議そうに見てくる二人分の視線から目をそらしそうになったが、何とか耐えて続きを言う。

「え、えと、この人。警察に戻すわけにはいかないんだったら、ウチで預かれないッスかねー?」

「うち、って海竜?」

 莉緒が眉を寄せて尋ねるのに、ポロは頷く。

「そうッス。海竜は他の過激派連中とちょい違うんで。別人として暮らせるように逃がすんでも、一時的に海竜に身を置くんでも、勿論本人の意思しだいッスけど。できると思うんスよね」

 ポロの言葉に再び考え込む莉緒と、提案した時の姿勢のまま固まっているポロに、イーズはため息をついて言い放った。

「とりあえずお前ら、その辺にしておけ。あまりここにとどまるのもまずい。移動するぞ」

「移動ってどこへ」

「莉緒さん? は家に戻ってもいいッスけど……」

「海竜に一度は来てもらう。その先輩をどうするか含めて話し合わなきゃ、だろ」

 ざくざくと林の中を歩いてバイクを置いていた場所に戻ると、イーズは二人を置いてどこかへ歩いていってしまった。

「どこ行くんスか? バイクは?」

「車とって来る」

 その言葉通り、数分後イーズはなにやら見覚えのある車に乗って戻ってきた。

「まさか最初に追いかけてた……」

「ご名答。……そいつを後部座席に乗せて、どっちか適当に運転してついて来い」

 じゃあオレが運転するッスねー、とポロが運転席に座り、莉緒も乗り込んだ。隣で黒尽くめのイーズが軽く手を振って、アクセルを全開に飛び出していった。

 それを追って運転しながら、ポロがぼやく。

「あの人バイクに乗せたら、下手すると追いつけなくなるんスよねぇ……今回はまぁいいけどー」

 林を抜け、莉緒にとっては馴染みのない道を突き進む車とバイク。

 いつの間にかうとうととしていた莉緒は、先程の場所からどれだけ離れたのか、大きな振動ではっと顔を上げた。

「あ、起きた? もう着くッスよー」

「寝てたのか……ってトンネル……?」

 頭を振って眠気を飛ばそうとするリオに、ポロはちょっと笑って言った。

「イーズに付き合って連れまわされたんだし、無理もないッスよ」

 トンネルを抜けると、背後から何かが閉じたような重い音と振動が伝わってきた。

「ここは……」

 目の前には、金属で作られた大きな建物。

「さてと、莉緒さん」

 サイドブレーキをおろしたポロが、にこりと笑って腕を広げた。

「ようこそ海竜へ!」

諸々の発端、何かしらから外れた奴らの出会い。本編開始です。


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