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1.10日前

 20XX年。放射能・温暖化・オゾン破壊。「夢見ていた世界を創るには犠牲が必要だ」と人々の自己弁護。自己弁護を重ねていたら遂にここまできてしまった。

 地球があと10日で終わってしまう。

 原因はやはり環境問題ではないだろうか。良くわからないが、環境問題だと思う。地球が10日後に爆発してしまう。そうしたら、人類も何もかも全て終わりだ。


 あなたは終わりの瞬間を、誰とどうやって迎える? 


1.10日前


 学校は休みだ。昨日の、最後のホームルームで、先生はこういった。

「今日の宿題は、『最後の時間を悔いなく過ごす事』だけだ。みんな、気をつけて帰るように」

最後の時間か…。誰と、どうやって過ごそう。

「ねぇ、最後のときさ、うちに集まってみんなで終わらない!?ハッピーエンド!みたいなっ!」

「それいいねぇ!」

クラスメイトの黄色い声。提案を出したのはクラスの中心的存在の美代だった。ルーズソックスはいて、化粧して、髪はキャラメル色で、いかにも女子高校生!って感じの女の子だ。事実、あたしたちは高校生だけど。

 最後の時間まで愛想笑浮かべて過ごすなんてまっぴらだ。みんなと過ごす時間が楽しいなど、一度だって思ったことがない。友達いないって見られるのが嫌だから、とりあえず、仲良くしてたけど。

「ねぇ、綾音も来るよね?」

いきなり話しかけられたからビックリした。美代だ。

「え…あたしは…いいや。あたし行かない」

「えぇ〜つれないなぁ。もぉ!」

愛想笑浮かべるなんてまっぴらなんだ。断るに決まってる。そんなことを、思い出した。

 さて、今日をどう過ごそう?

 とりあえず、あたしの好きな場所に行く事にした。学校の屋上。授業をサボったりだとか、お昼のお弁当を食べたりだとか。たまにカップルの見ちゃいけないシーン見ちゃったりもしたなぁ。あの屋上は時間つぶしには最高の場所だ。雲を眺める。そして飽きたら下にいる人の数を数えたり。誰もいない学校にまで校則を守る必要はないのかもしれないけれど、ブレザータイプの制服を着た。スカートは少し短い。故意に短くしたわけではなく、あたしの場合、成長期が高校生で訪れたのだった。紺のハイソックスをはいて、ローファーはいて、後ろに良く友達を乗せた自転車にのり、学校へ向かう。季節は冬へ向かっている。日差しだけは、オゾンの破壊のせいか、強いかったが、すこし肌寒かった。

学校へは自転車で30分弱。近いから、という理由で選んだ、都立高校。道では誰も見かけなかった。きっと、みんな最後の時間を個々で選んだベストの場所で過ごしているのであろう。そういえば、クラスのみんなは美代の家にいるのだろうか。少し、みんなの顔が脳裏をよぎる。しかし、みんなとの思い出なんて薄いのだ。関係ないに等しい。そんなことを考えているうちに、学校へ着いた。

学校の門をくぐる。鍵なんてかかっちゃいない。今更何を盗まれようがどうなろうが関係ないのだ。学校は静まり返っていた。当たり前だ。誰もいないんだから。ギュッギュッと、靴底のゴムが擦れた音だけが響いた。なんかちょっと不気味。階段をゆっくり上っていった。エレベーターもあるけれど、階段を上るってゆうのも悪くない。

 日頃の運動不足か、多少の息切れ。屋上にやっとついた。ギィと軋む扉を開けた。風があたしの髪をなびかせる。空けた瞬間、かすかな排気ガスの臭いが鼻についた。

 屋上を見回すと、先客がいた。

 細身の背の高い男。歳は…大学生?あたしより、少し上みたい。こげ茶のペンキがはがれてサビが見えている柵に手をかけて、遠くを眺めている。すごく自然な茶色い髪がなびいて、横顔がなんだか少しだけ、色っぽい。大人っぽいっていうのだろうか。

「あのっ…」

気付いたら声をかけていた。気だるそうにこっちをみて、彼は答えた。

「誰?」

当然な答えなのかもしれない。誰?という答えは。

「あたしは、白川 綾音です。あなたは?」

「名前…ねぇ」

彼は小さく笑ってから、イタズラにこっちをみて、

「知りたい?」

といった。こういうの、少し困る。

「うそ。困ったでしょ?」

「うん」

「俺はね、片岡 直人。よろしくね。っていっても、あと10日もないんだけど。そっちは何歳?」

なんかとってもフレンドリー。ちょっと安心した。変な人じゃないみたい。

「あたし、16歳。そっちは?」

自分の口調がタメ語になっていた。別に相手も気を悪くしていないみたいだし、別にいいか。

「俺は、19。綾音より、3個上だね。俺のこと、直人って呼んじゃって良いから」

笑った顔がすごくかわいい。幼い笑いじゃなくて。同級生の男子にはない、ちょっと大人な微笑み。ヤバイ。カッコイイ…。

「じゃぁ、直人。こんなとこで何してるの?」

「え?何って、数えてるの」

「数えている?何を?」

「いろいろ」

確かにあたしが屋上に来た時から直人は遠くを見つめていた。あたしと同じ目的かもしれない。あたしも、人や車や鳥を数えに来た。もちろん、暇つぶしだが。しかし、今や鳥も車も人もいやしない。鳥は強烈な紫外線にやられてしまったのか?そんなことを思った。

 話によると、直人はこの近くの大学に通っているという。今はやはり大学も休講で、暇を持て余しているらしい。この高校の卒業生だったみたいだけど、あたしが入学した時には卒業していたのだった。直人も屋上が好きで、在学当時はよくきたのだという。ちなみに彼女はいないらしい。今になっては彼女がどうだとかどうでもいいのかな。

「俺、こう見えて、実はこの高校の学年トップの成績だったんだぜ」

と、得意気に言っていた。少し、無邪気な所もあって、それがとても可愛かった。

「綾音、明日暇?」

会話が途切れ、辺りが少し暗くなり始めたころ、直人がいった。

「うん。暇ぁ」

「じゃぁ明日もここで会わねぇ?」

「うん。いいよぉ」

暇な事は事実だった。嬉しかった。こうやって、最後の時間を過ごせることを嬉しく思った。

「明日、お前に俺の秘密話してあげる」

はにかんだ笑いが、直人に良く似合った。

「ん。わかったぁ。じゃぁ明日!」

そして、あたしは家路に着いた。

初めまして。藤原由香里といいます。

これからどんどん書き足していくので、感想ありましたら、メールください。

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