試作品0
超短編小説です。落書きXD
warning:鬱・人死に表現・意味不明
夜の闇に音はなく、近くの高速道路から、救急車のサイレンがよく聞こえた。遠くで、かすかに赤いランプがともっているのが見える。僕は、寂しい気持ちを抑えて、苦し紛れに足元の小石を蹴った。
町の街灯。車の音。コンビニの明かり。すべてが僕の心を置き去りにし、居場所を与えてくれないことを示している。街灯で星すら見えない街の中、涙が頬をつたった。
家には帰れない。あそこに僕の居場所はない。戻れなくなってしまった居場所を想うと、後悔の念が胸をつまらせた。
諦めるのが一番駄目なことだというのは分かっていた。それでも、どうしてもあそこに戻る勇気は出せない。足はずっと、家とは逆の方向を向いている。もはや自分の力では、現状を何も覆せそうに思えなかったからだ。赤信号で止まっても、工事現場に遭遇して引き返すことになっても、僕の家から離れたいという気持ちはおさまらなかった。
あてもなく歩く。自分のいる場所もわからなくなったころ、街灯が途絶え始めた。この辺りにはもう、人はいないらしい。
―――――人がいない。
その事実に、僕は少し安堵した。姿を見られないことは、僕にとって最後の使命だった。
どうしたって戻れないのだ。後戻りはできない。―――したくもない。
―――殺し損ねたからといって、家にいる瀕死の両親を助ける気にはならない。
遠くから、救急車のサイレンが聞こえる。そこまで時間もたっていないというのに、もう僕に残された時間は少ないらしい。周りに人がいないのがせめてもの救いか。
まわりは静かでとても暗く、木々のざわめきと水の流れる音しか聞こえない。橋の下をのぞくと、闇の中、かすかに水の流れが見えた。黒々としていて、吸い込まれそうに醜い。何か得体のしれない巨大生物のように脈打っている。目をそらすと、頭上の夜空に月は無かった。
思い出されるもののすべてが、湿った黒に溶けていく。
―――――こんなことになるなら、産まれてくるんじゃなかった。
橋にのせた手に、力がこもる。
夜の闇に紛れて、橋の上からひとつ、命がこぼれ落ちた。
最後まで読んでくれてありがとう!




