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作者: 蒼井伽
掲載日:2026/04/12

超短編小説です。落書きXD

warning:鬱・人死に表現・意味不明

 夜の闇に音はなく、近くの高速道路から、救急車のサイレンがよく聞こえた。遠くで、かすかに赤いランプがともっているのが見える。僕は、寂しい気持ちを抑えて、苦し紛れに足元の小石を蹴った。

 町の街灯。車の音。コンビニの明かり。すべてが僕の心を置き去りにし、居場所を与えてくれないことを示している。街灯で星すら見えない街の中、涙が頬をつたった。

 家には帰れない。あそこに僕の居場所はない。戻れなくなってしまった居場所を想うと、後悔の念が胸をつまらせた。

 諦めるのが一番駄目なことだというのは分かっていた。それでも、どうしてもあそこに戻る勇気は出せない。足はずっと、家とは逆の方向を向いている。もはや自分の力では、現状を何も覆せそうに思えなかったからだ。赤信号で止まっても、工事現場に遭遇して引き返すことになっても、僕の家から離れたいという気持ちはおさまらなかった。

 あてもなく歩く。自分のいる場所もわからなくなったころ、街灯が途絶え始めた。この辺りにはもう、人はいないらしい。

―――――人がいない。

 その事実に、僕は少し安堵した。姿を見られないことは、僕にとって最後の使命だった。

 どうしたって戻れないのだ。後戻りはできない。―――したくもない。


―――殺し損ねたからといって、家にいる瀕死の両親を助ける気にはならない。


 遠くから、救急車のサイレンが聞こえる。そこまで時間もたっていないというのに、もう僕に残された時間は少ないらしい。周りに人がいないのがせめてもの救いか。

 まわりは静かでとても暗く、木々のざわめきと水の流れる音しか聞こえない。橋の下をのぞくと、闇の中、かすかに水の流れが見えた。黒々としていて、吸い込まれそうに醜い。何か得体のしれない巨大生物のように脈打っている。目をそらすと、頭上の夜空に月は無かった。


 思い出されるもののすべてが、湿った黒に溶けていく。


―――――こんなことになるなら、産まれてくるんじゃなかった。


 橋にのせた手に、力がこもる。



 夜の闇に紛れて、橋の上からひとつ、命がこぼれ落ちた。


最後まで読んでくれてありがとう!

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