第一話 ひとりかくれんぼ
「......以上で帰りのHRを終わります。号令!」
「起立!ありがとうございましたー」
『ありがとうございました~』
「先生話長すぎ~」
「それな~」
「お前今日部活来んの~?」
「面倒だからサボろっかな~w」
「お前昨日もサボってたじゃんww」
「だってめんどいし~w」
「今日帰りカラオケ行こー!」
「ごめん!今日彼氏とデートなの~次行くとき誘って~」
「マジで!?前言ってた人?いいなぁ~私も彼氏ほし~」
「結」
クラスメイト達の会話をBGMに帰る準備をしていると不意に名前を呼ばれ、振り返ると幼馴染が立っていた
「...なに?輝夜」
「今日、オカ研来る?」
「行くつもりだけど、どうしたん?今日行く気分じゃない?」
「ううん、行くか確認しただけ...一緒に行こ?」
「そのつもり、それじゃあ行こうか」
彼女は神朱 輝夜。私のクラスメイトでさっきも言った通り幼馴染だ
「お疲れさまでーす」
「って誰もいないじゃん...」
「珍しいね、いつも先輩たちの方が早いのに...」
「ばぁーーーー!!!!!!!!!!!」
「!?!?!?!!??」
「...わぁ」
「...あれ?」
「...あらら、後輩二人を驚かす作戦失敗みたいだよ~?」
「ちぇー、つまんないの!」
「私はともかく、輝夜はビビッてますよ。ビビりすぎて声出なかっただけです」
「.....」
「...か、輝夜ちゃん!?」
「マッジでごめん!そんなにびっくりするとは思ってなくて...」
この人は、暁月 ゆり。オカルト研究部部長だ
「だ、大丈夫です、暁月先輩...」
「ゆりちゃんが輝夜ちゃんいじめたー!さいてー!」
そしてこの人は、立花 海月。副部長だ。そして、この二人は、同クラスで中学からの仲らしい。
「ぇ、ぁ、い、いじめられてない、です...」
「先輩方、輝夜いじめないでください。最低です」
「「そんなことないもん!」」
「...相変わらず仲良しですね、今日は何するんですか?学校の七不思議でも調べます?」
「あ!そうだそうだ、今日はやりたいことがあったんだ!」
「ん~?何すんの~?」
「みんなは...『ひとりかくれんぼ』って知ってる?」
「あぁ...」
「なんすか?それ?」
「聞いたことはあるね~」
「三者三様って感じだね!結ちゃん以外は知ってる感じ?」
「私はまぁ、はい」
「私は聞いたことあるだけで、中身はあんまり知らなーい!」
「私は全く知らないです」
「OK~!一応説明するねー!ひとりかくれんぼは~...」
暁月先輩が一通り説明してくれた。
(※ひとりかくれんぼのルール知ってる人は読まなくてもいい)
ひとりかくれんぼとは日本の近代怪談の1つで、都市伝説である。降霊術の一つとされる。
用意するもの
・手足があるぬいぐるみ
・ぬいぐるみに詰めることができる程度の米
・縫い針と赤い糸
・自分の爪(髪の毛や皮膚、血でも可)
・刃物(包丁、カッターナイフ、錐など鋭利なもの)
・コップ一杯の塩水
進行方法
下準備としてぬいぐるみに名前をつけ、詰め物を全て出して代わりに米と自分の爪を入れて縫い合わせる。余った糸は、ある程度ぬいぐるみに巻きつけて結ぶ。(中に入れる米はぬいぐるみの内臓を、糸は血管を表しているらしい)
次に隠れ場所を決めておき、そこに塩水を用意しておく。
午前3時になったら以下の順に行動する。(今回は自分の名前=○○、ぬいぐるみの名前=△△とする)
1,ぬいぐるみに対して「最初の鬼は○○だから」と3回言い、浴室に行き、水を張った風呂桶にぬいぐるみを入れる。(浴槽、洗面台でも可)
2,家中の照明を全て消してテレビだけつけ、砂嵐が出ている状態にし、目を瞑って10秒数える。
3,刃物を持って風呂場に行き、「△△見つけた」と言って用意した刃物で刺す。
4,「次は△△が鬼だから」と3回言い、自分は塩水のある隠れ場所に隠れる。
終了方法
塩水を少し口に含んでから出て、ぬいぐるみを探して、コップの残りの塩水、口に含んだ塩水の順にかけ、「私の勝ち」と3回宣言して終了となる。必ずこの手順によって、2時間以内に終了させなければならない。なお、ひとりかくれんぼに使用したぬいぐるみは、最終的に燃える方法で処理する必要があるとされている。
とのこと。要するに原理は不明だが、ぬいぐるみとかくれんぼすると怪奇現象が起こるらしい。
「へ~面白そーじゃん!やろやろ!」
「だよね!気になるよね!?」
(この二人はやる気満々だな...)
「でも、これってひとりでやらないといけないのでは?」
「一人じゃなくてもできるんだってー!複数人でやる場合は『最初は○○と××が鬼だから』みたいな感じで言えばいいらしい!」
((ひとりの意味...))
「それひとりかくれんぼじゃなくな~い?」
「細かいことはいいの!」
「...このタイミングで言うのもなんですが、やめておいた方がいいと思います。...私は...」
「えーなんでー?いいじゃん!明日休みなんだし!」
「そういうことじゃなくて...」
立花先輩がなんでなんでと輝夜に詰め寄る
「...はぁ、じゃ私ん家でやります?」
「「良いの!?」」
「結!?」
輝夜が心配そうに私を見る
「大丈夫。それに輝夜の家に近いから、何かあった時でも安心でしょ?」
「...分かった」
渋々という感じだが、なんとか納得して貰った
「でも結ちゃん親は?ひとりかくれんぼは参加者以外家にいちゃダメなんだけど...」
「大丈夫です。私親いないんで」
中学の時に他界しました、と付け加えると
「なんかごめん」
「大丈夫です、もう慣れましたから」
「...なおさらごめん」
...なんかこっちまで申し訳なくなってきたんだけど私悪くないよね?
「でも、どうする~?一回家帰る?それともこのまま直で結ちゃん家行く?」
「私は直でいいよー」
「私は一回家に帰ります」
「私も一回帰ろっかな~」
ということで、立花先輩と輝夜が一旦帰宅、暁月先輩が私と一緒に私ん家に来るということになった
「分かりました。では各々準備できたら私の家集合でいいですか?」
「あ、立花先輩!あとで住所送りますね」
「うん!よろしくね~」
「じゃ!今日は帰ろー!一旦解散~」
「おつかっれしたー輝夜帰ろ」
「お疲れ様でした。ごめん結、私教室に忘れ物したから先帰ってて」
「分かった。では、行きましょうか暁月先輩」
「うん!」
雑談しながら帰路につく。
途中で家の近くのスーパーによって晩ご飯の材料などを買いながら今日の献立を考える。
「先輩、晩ご飯なにが良いとかあります?」
「なんでもいいよ!私好き嫌いとかないし」
「なんでもいいが一番困るんですケド...」
わざとらしくおちこむと
「じゃ、じゃあカレー!カレーがいい!」
「お!いいですね、一人だと量多くてあまり作んないんですよ」
他にもお菓子やひとりかくれんぼに必要な物などを買った。(買ったものは暁月先輩に持ってもらった)
家に着いたら早速ご飯の準備を始めた。暁月先輩も手伝ってくれたが...
「先輩そんな風に包丁持たないでください?!」
「先輩火力強いです。もっと弱めてください...」
「でも強火の方が早くできるでしょ?」
「先輩そういうタイプなんですね...」
ってことになったので、これ以上大変なことになる前に退散してもらった
ちょうど出来上がったタイミングで輝夜と立花先輩が来たのでカレーを食べたり、ゲームをしたりして時間をつぶした
午前2時
「そろそろ事前準備しよっか」
「必要な物は一通り買ってきたんで...」
「えー!ぬいぐるみも買っちゃった?」
「え、うん。買ってきたけど、ダメだった?」
「念がこもってる方がいいかなーって思って私がせっかく準備したのに―!」
「え!そうなの!?ごめんごめんじゃあせっかく用意してくれたなら、そっち使おっか!確かに念がこもってる方が良さそうだし!」
「...ねぇ、実際のとこどうなの?」
「?なにが?」
「念がこもってるほうが危険とかあるのかって」
「うーん、場合によるかな。負の念がこもってるとかなり危険だよ」
「あれはどうなん?負の念?とか感じる?」
立花先輩が持ってきたぬいぐるみを指す
「今のところはなんとも言えないかな」
そういうものなのだろう、へー、と返事をしながら先輩二人を横目に見る
そんなこといってるあいだに二人はほぼすべての準備を終えていた
「はい!後は二人の爪を入れて縫うだけだよ~」
爪を切りぬいぐるみの中に入れる
「はい、輝夜」
「ありがとう」
輝夜も同様に爪をぬいぐるみに入れ、暁月先輩に渡す
「ん、じゃ縫っちゃうよ!」
「...できた!」
「裁縫はできるんですね」
料理はできないのに、と付け足すと「アハハ...」とバツが悪そうに笑っている。笑いごとじゃないんですけど...
次に隠れ場所を探すことになった
隠れ場所は物置になっている屋根裏部屋の一番奥に大きなダンボールや置いてあった物で4人が隠れられるくらいの空間を作り、そこに塩水をコップ4つ分用意し置いておいた
そして、最後に風呂桶に水を溜めた
「これで前準備はおしまい?」
「そうだね!時間もちょうどいいし、はじめようか」
「私ぬいぐるみ持ってきますね」
と言いながら輝夜がリビングにぬいぐるみを取りに行った
「じゃあ私は電気消してきます」
「輝夜ー!ぬいぐるみ取ってくるついでに砂嵐にして、リビングの電気消してきてー!」
「分かったー!」
「消してきました」
「よし!それじゃあ、さっそく」
『最初の鬼はゆりと、海月と、結と、輝夜だから』『最初の鬼はゆりと、海月と、結と、輝夜だから』『最初の鬼はゆりと、海月と、結と、輝夜だから』
と4人で言い暁月先輩は桶にぬいぐるみを入れる
「じゃ、リビング行って10数えよ!」
「そういえばぬいぐるみの名前どうしたんですか?」
「『まーくん』にした!」
「そうですか」
その後特に会話を交わすことなくリビングに着いた
「じゃ、数えるよ。1、2、3....10!」
「よし、行こうか!」
風呂場までの道中さすがに皆緊張してるのか無言の時間が続くなか、静寂を破るように
「...本当にやるんですか?やめるなら今ですよ」
と輝夜が呟いた。続けて
「私には霊感があります。でも見えるだけであってなにかあった時お祓いなんてできm...」
「やるよ、私は」
輝夜の言葉を遮るように暁月先輩が続ける
「私は霊感なんてないけど、幽霊はいるって信じてる。そして、自分の目で見てちゃんといるってことを証明したい」
「...分かりました。この先何がおこるか分かりません、憑り殺されたりしないでくださいね?」
「もちろん!まだまだ長生きしたいしね」
「...着きましたよ。覚悟はいいですか?やめるなら今しかありませんよ?本当にやるんですね?」
「うん!せーのっ!」
『まーくん見ーつけた』
と言いみんなでカッターをぬいぐるみに刺す
『次はまーくんが鬼だから』『次はまーくんが鬼だから』『次はまーくんが鬼だから』
と言い屋根裏部屋に急いで向かう
特にトラブルもなく屋根裏部屋に着く。ここで一時間ほど隠れ、一時間後風呂場に戻り勝利宣言をして終了だ
30分ほどたったころだろうか、かすかに聞こえていた砂嵐の音が聞こえなくなった
「...?」
と思ったらまた聞こえだした
どうやら一定の間隔で点いたり消えたりしているようだ
誰が?
この家には今私達以外いない、泥棒か?いや、戸締りはしっかりしたはず。そもそも泥棒だとしてこんなことをやる意味が分からない...故障か?
など考えていると、急に腕を引っ張られた。驚いて固まっていると
「私がいいって言うまで息を止めててください」
ぎりぎり聞き取れるくらいの声量で輝夜がささやく。私達はわけも分からぬままうなずき大きく息を吸い込み、息を止める
いつの間にか砂嵐の音は途切れることなく聞こえている。どうやら壊れたわけではなかったようだ
ほんの数分がとても長く感じる、そろそろ息も限界だ
「...もう大丈夫です」
勢いよく呼吸を再開する。酸欠で少しくらくらしている
「終わらせましょう。これ以上続けるのは危険です」
「どうして?」
「あとで説明します。とりあえず行きましょう」
異様な雰囲気が漂う中、塩水を口に含み風呂場へ向かう
『!?』
風呂場に戻る途中、なぜか脱衣所にぬいぐるみが落ちていた
『.....???』
訳も分からず互いに見つめ合う。そんな中、輝夜は何でもないかのようにぬいぐるみを風呂場まで持っていく
風呂場に着くと、口に含んでいた塩水をぬいぐるみに吹きかけ、持っていたコップに入っていた塩水もぬいぐるみにかけた
それに続いて、口に含んでいた塩水をぬいぐるみに吹きかけ、持っていたコップに入っていた塩水もぬいぐるみにかけた。そして
『私の勝ち』『私の勝ち』『私の勝ち』
これにてひとりかくれんぼは終了だ
「はー、終わった~」
「お疲れ様でした」
「...さっきのあれ、どういうこと?」
問い詰めるように輝夜に聞く
「...まずは電気点けよっか。大丈夫ちゃんと説明するから」
「...分かった、ちゃんと説明してよね?」
「...電気点けるだけで気持ちに余裕ができるね!さて、輝夜ちゃん説明してくれる?」
「...どこから聞きたいですか?」
「んーまずは、息止めさせたのはなんでなの?」
暁月先輩が一番気になっていることの一つを聞いた
「そうですね、あれは霊に気づかれないようにするためにしてもらいました」
「え?ん?ちょ、ちょっと待って輝夜ちゃん、ストップ!」
「あ、はい」
拍子抜けするほど淡々と答えられ、逆にこちらが困惑してくる
「...つまり、あの時屋根裏部屋には霊がいたってこと?」
「はい」
「なるほどね~つまり、屋根裏部屋に霊がいて、霊に気づかれないように息を止めたってこと?」
と立花先輩が一言でまとめてくれた
「そういうことです。一応ひとりかくれんぼ中は見つかってはいけないって聞いたことがあったので、見つからないに越したことないかなと」
「へーそうだったんだ。知らなかった..」
「...ほかに聞きたいことはありますか?」
「なんで、ぬいぐるみが脱衣所にあった?」
なぜぬいぐるみが脱衣所にあったのか、それは私が一番気になっていたことだ
「それにさっきまで気づかなかったけど、階段や廊下、いたる所に小さな水たまりがある。これはなに?」
ぬいぐるみが移動しているということは、当たり前だけど誰かが動かしたということ
...私が見ていた限りでは、ぬいぐるみを移動させた人はいなかった、そもそも誰もあの部屋から出ていないのだ、ならなぜ移動していた?
「ぬいぐるみに憑りついていた霊が私達を探すために動き回っていた、で納得してくれる?」
「私は自分の目で見るまで幽霊なんて信じない」
「だよね...う~ん、ごめん私には科学的根拠に基づいた説明ができないや」
輝夜が申し訳なさそうに私を見る
「...でも、そのうち結も知ることになるよ。科学だけでは説明できないこともあるって」
「はいはい!そこまでーー!他にも聞きたいこといっぱいあるんだから!みんなー!今夜は寝かさないからね?輝夜ちゃん!引き続き説明よろしくね!」
「もちろんです」
「____?」「_______。」「______!______?」
いずれ分かるようになる、か
まあ、自分に言い訳ができる間はとことん否定し続けてやろう。例え本当にいたとしても
ひとりかくれんぼ 完




