不思議な本
それは、突然のことだった。
僕達三人は、人気のない小さな林を潜り秘密基地に向かったっていた。
向かう最中に色々な障害物などを潜り抜けて向かう。
「よっと。 二人、とも大丈夫か?」
障害物を難なく避けていくのは、体力のあるスティーデンス、それにつづいて彩芽が歩く。
その後ろには、僕が林の坂道を歩いていた。 二人は、ドンドンスピードをあげて坂道を歩いていく。
置いていかれそうになってしまった僕は、
「二人とも速いよ‼️ もっとスピード落としてよ……」
スティーデンは後ろを振り向き呆れた様子で見ていた。
「リア、お前体力無さすぎ。 部屋に 篭 もり過ぎて身体を全然動かして無いから、こんな坂道で疲れるんだぞ。」
そんなこと言われても、とスティーデンを皮肉に思いながら睨んだ。
「きみは、普段から体力作りしてるからキツくないのかもしれないけど、僕の専門は脳みそを使うことだから、体力作りしても筋肉はつかないと思うよ。」
「秘密基地を作る場所を間違えたようだ……」
ボソッ、と小さな声でリアは、言った。
「喋れる体力あるなら歩こうぜ。もうすぐ着くしな。」
そう言って心配したのか、スピードを落としてくれたスティーデン。 彩芽は後ろを向いて、僕がいる所まで来て背中を押してくれる。
「リア、もう少しだから頑張って! 引っ張ってあげるから。」
そう言って彩芽は、背中に手を回して僕と同じスピードで歩いてくれた。
おかげで、秘密基地に到着できたのである。
「到着。お疲れ様」
「ハァ……スティーデン、君の体力は底なしかい? 早いよ……」
「お前が体力無さすぎなんだよ。流石に呆れるわ、彩芽が後ろから引っ張ってこれか……。あいつ全然疲れてないじゃん」
呆れた様子で見るスティーデンにちょっとイラついてしまったリアは、拗ねて三人で作ったツリーハウスのハシゴを使って登っていく。
その様子を見ていた彩芽は、スティーデンを見て
「あーあ、拗ねちゃった。スティーデン、あんた言い方考えなさい。」
「……体力ないあいつが悪い、それにお前は俺の母親か? 」
彩芽は、呆れて口からため息をついた。
「まぁ、いいや。リアくんが休憩している間に、私達は、この本を開ける方法を考えましょう」
「無視すんなよ。まぁ……確かにそうだな」
二人はツリーハウスに登る。
中は少し小さいが、私達は、ここで色々な機材などを置いたりしている。 その奥には、リアが小さなクッションに横になって休憩していた。
彩芽は、その様子を見て心配したが、そっとしておこうと考え、小さなバックから本を出し木の板の床に置いた。
「てか、この本どこで見つけたんだよ。図書館? 」
「いや、私がランニングするルートで、川の近くを通ったら、この本が川の沖に落ちてたから 拾った 」
スティーデンはびっくりしていた。
「ちなみに、この本は交番に届けたか? 」
「届けたわ。けど1ヶ月近く交番に渡したけど持ち主見つからなくって、私のになったわ。」
そう言う彩芽にスティーデンはとても安心していた。
彩芽は、昔から少し犯罪臭い事を無意識でやってしまっているため、今回の件でスティーデンは少しだけ成長したのだと思ったのである。
そして、彩芽とスティーデンはこの本を見て関心していた。
どんな職人が作ったのだろうか、頑丈そうな本で、本の真ん中には少し大きな赤いクリスタルがはめ込まれてある。
そして、クリスタルの回りには、凝ったデザインの歯車などが飾られてあり、装飾品の下には鍵穴がある。 持ち主は、本当に勿体ない人だ。
どうしてこんな高そうな本を売らなかったのか不思議でしかたなかった。
二人は、見た感じだとこの鍵穴から開けることがわかったのである。
「いや、どうやって開けるんだよ……」
スティーデンは本を持って他に開けれる方法が無いのか色々な所を手で触って探していた。
「フフフ、ここは、任せなさい!! 私、この日のためにいっぱい練習してきたのだから!! 」
「……練習? 何を練習したんだよ? 」
疑問に思ったスティーデンに、彩芽は、ドラ〇もんの秘密道具でも出すかのようにポッケからある物を出した。 それは、
「……(成長したかと思ったら……)」
絶句する様子を見せるスティーデン。
それを、そっちのけにする彩芽は、スティーデンに自慢するかのように説明する。
「フフン!! 私この為だけに買った『ピッキング!』私、ピッキングとかした事なかったから、最初はうちの家で開けたり閉めたりして練習してたんだ!! 」
もう、犯罪内容を自慢している様にしか聞こえないスティーデンは、この【天才子役】が今、犯罪まがいなことを言うので一番聞きたくない質問した。
「……ちなみにだけど、近所とかそこら辺の家とかピッキングしてねえよな? 」
「えっ、するに決まっているじゃん色々試したかったし、」
ハァー……と深いため息を吐くスティーデンに彩芽は、
「?」になっていた。
その時スティーデンはこの【天才子役様】が今、犯罪をやった事を聞いてしまったことに大人で言う、『胃が痛く』なってしまったのだ。
てか、『ピッキング工具』持ってる自体、犯罪じゃ……。 スティーデンは彩芽がマスコミでこのことを報道されないか心配していると、
「? まぁ、いいからさっさと開けましょ。」
「良くない」と思うスティーデン。
たが、ピッキングの腕前はどのくらいなのか気になってしまったスティーデンは、黙ってその様子を見ていた。
自分も結局止めないのだから自分で呆れながらも、彩芽が作業するところを黙って見ていた。
彩芽の腕前は、確かに練習してきたのか器用に鍵を開ける作業をしている。 それをジッと見ていたスティーデンは、苦戦しているのか眉にシワを寄せている彩芽を見ていると、 ガチャリ そんな音が聞こえた。
この音に反応した彩芽は、慎重に鍵穴からピッキング工具を抜こうとすると、 ボッン‼️ と小さな爆発音と煙が出た。
びっくりした二人は黙って抱き合った状態になってしまい、気まずくなった二人は、すぐに離れる。
その音に反応したのか、休憩していたリアが起きてその様子を見ていた。
「おや、見事な腕前だったが、これでは開けられなかったか、」
そう言って、ソファーに座って彩芽の『ピッキング』の腕前を見ていて待っていた。 その様子を見てスティーデンは、
「……さっきはごめん、言い過ぎた。」
謝る姿を見てリアはスティーデンの目の前に来る。
「いいよ、体力が無いのは本当なのだから。仲直りしよう。」
そう言ってスティーデンスとリアは握手をかわした。
リアは上機嫌になったのか、リュックを二人の近くに置いて中をゴソゴソとあさって何かを探していた。
「仲直りもできたことだし、早速お待ちかね。僕の『秘密道具』の紹介をしよう!!」
そう言い、リュックから変な液体が入ったフラスコを出した。
「テッテレー!!! 『ドロドロがすぐに固まっちゃうの液』!!! 」
ドラ〇もんが出す効果音を言うリアだが、二人はネーミングセンスが壊滅的なことと、その何とも言えない危なそうな液体にスティーデンと彩芽は固まってしまう。
「この液体は、ドロドロの液体が固まって型をとってくれるというまさに『便利グッズ』なのさ!!!」
その『便利グッズ』はスティーデンにとっては【危険】と言うことにしか聞こえなかった。
が、彩芽はこのネーミングセンス壊滅的の液体に頼るのである。
「リア、この本『ピッキング』しても開かなくてさ。 その液体で型とって貰ってもいい? 」
照れる彩芽を見て、リアは
「任せてよ!! 実はこの液体、父さんの考えたメモ帳の中に書いてあったから性能は大丈夫だと思うよ。多分! 」
多分! て、なんだよ! 全然信用出来ねーよ! まぁ、気になるからから止めねーけど。
「よし、じゃあ早速、鍵穴に入れるよ。」
「「……うん」」
そう言う二人を見てリアは、液体を流し込んだ。
すると本当に効果が出たのか、液体はすぐに個体になって固まっていく。
それを見たリアは急いで長い棒とか言いながら探していたら、近くにあった『ピッキング工具』を鍵穴に刺したのである。
それを見た彩芽は少しびっくりして焦っていたが、すぐに何事も無かったように見ていた。
「出来た。」
そう言って慎重に鍵穴から固まった鍵の型を抜こうとすると、 カチッ と、音が聞こえた。
三人は、鍵が開いたのだと思い(ドキドキ)と緊張感が漂う中、リアは本を開ける。
だが、開かなかった。 スティーデンと彩芽は、残念そうな顔をする。
するとリアは、本を持って無理やり開けようとした。
それを見たスティーデンは急いで止める。
「何やってるんだよ!! 壊れるだろ」
「もう一度液体を流し込んで次こそ成功させる! 」
そう言って両手でまた無理やり液体を入れようとするリアを見て流石の彩芽も、止めに入った。
「リア!! やめて、本が壊れたら元も子もない!」
と言いかけたその時、 ピカッ と装飾品の赤いクリスタルが光だした。
びっくりしたリアは持っていた本を投げてしまう。
すると、本はいきなりカチッカチッと動き出し、装飾品だと思っていた歯車がぐるぐると動き出し鍵がかかっていた本が開き始めたのだ。
本が開いた瞬間に足元に大きな魔法陣の様なものが浮き出て来た。それを見たスティーデンは、
「はぁ!? なんだこれ! 足が動かねー! リア‼️ お前何した! 」
「僕は何もしてない!! 雑に扱ってしまったが、何も触っていない!! 」
それ言うが、リア達の足元の魔法陣は、ドンドン大きくなっていき、ついに秘密基地の大きさになった。 それを見た彩芽は興奮したかのように、
「これって!! もしかして!! 【異世界召喚】じゃ!!!」
と言うと、私達三人は魔法陣が消えると同時に、消えてしまった。 そして、僕達の秘密基地には、もぬけの殻となったのだった。
【ドロドロがすぐ固まっちゃう液】
リアの父親が開発した液体で、結構非現実的な危ない液体。