解決編
その後、数々の物的証拠が発見されたことにより、赤ずきんの母親は逮捕された。2日前の夜、介護のために老婆の家に訪れた時に口論となり、突発的に殺害してしまったのだという。元々老婆の介護と仕事に追われて一人親だった母親は、精神的にもかなり追い詰められていたらしい。
そして老婆を殺したことを隠ぺいするために、オオカミに襲われたように見せかける計画を思いついた。さらに老婆を殺害した時刻を偽装するために、娘の赤ずきんに老婆がまだ生きていると思い込ませ、偽証するように仕向けた。娘の寄り道癖を知っていた母親は先回りして老婆の家を訪れ、老婆に化けてベッドに入ったのだ。
母親が逮捕された後、泣きじゃくる赤ずきんの身柄を狩人が引き取った。けれどあの小さな娘が、これからどうやって生きていくのかはわからない。きっと赤ずきんの目には、母親を連れ去った刑事たちが悪い大人に見えていただろう。
「......悲しい事件だ。子供を利用してまで自分の親殺しの罪を隠そうだなんて」
馬車の中で、刑事はつぶやく。
「だがこれが俺たちの仕事だ。世の中にはオオカミのように狡猾で残忍な人間がごまんといる。そいつらを捕まえることが、例え誰かの悲劇になろうとも、誰かの悲劇は食い止められるんだ」
そう言って刑事は、森の村を後にした。