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事件編

 とある森の奥の小さな村で、老婆がオオカミに食い殺される事件が起こった。事件現場は村から半時間ほど離れたところにある老婆の家の中であり、町の刑事が調査のために派遣された。


「......ひどいものだな。内臓や骨まで食いちぎられている」


 刑事はベッドの上の白髪の老婆の死体を見て顔をしかめる。

そして振り返ると、部下たちに命令した。


「村の者たちから証言を集めろ! 何かわかったら俺に報せるんだ!」


 その後調査が始まり、3人の人物から証言が得られた。

内容は以下の通りである。



●狩人|(第一発見者の男)


「ああ、本当に驚いたよ。まさかあの善良なばあさんがあんな惨い死に方をするなんて。


 死体を発見した時のことを教えてくれ? わかったよ。

俺は今朝の7時ごろ警邏けいらの仕事で、いつものように病気のばあさんの家の前に通りかかったんだ。そしたら閉まっている扉の中から、何か変な物音が聞こえてきたから、気になって扉を開けてみたんだ。


 そしたら何と、オオカミがベッドの上のばあさんを食ってる最中だったんだよ! 俺は『この野郎!』って叫んで猟銃を撃った。


 けど弾が外れて、オオカミはあの家でひとつしかない窓を突き破って逃げていったんだ。

俺もすぐに窓の鍵を開けて、そこから飛びだしてオオカミの後を追った。


 それから5分ほど追いかけまわした後だったかな? ついに俺はオオカミに追いついて、猟銃をぶっぱなして奴を殺したんだ。今死骸は俺の納屋の中に置いてある。


 ......全く、2日前の夜、村でボヤがあって大騒ぎになった件といい、この村は最近悪いことばっかり起こるよ」



●赤ずきん(村に住む7才の少女:被害者の孫)


「ええ、わたし、昨日のお昼の1時ごろ、お母さんに頼まれておばあさんの家に食事を届けに行ったわ。わたしの家は村の中にあって、30分ほど歩いた所におばあさんの家があるんだけど、わたし、おばあさんの家に行くときはいつも寄り道をするから、着いたのは3時ごろだったわ。


 それで扉を開けて『こんにちは』って挨拶して、部屋の隅のベッドで横になってるおばあさんに近づこうとしたの。そしたらおばあさん『近づかないでおくれ! 病気が伝染うつったらいけないから!』って大声をあげたから、わたしびっくりしてピタって足を止めちゃったの。


 病気の具合が気になったけど、窓のカーテンが閉め切っていたから部屋も暗くて、おばあさんは頭巾を目深に被ってたからよく顔が見えなかったわ。声だって、この前聞いたときよりもすごいだみ声になってたし。


 その後おばあさんは怒鳴ったことを謝って、わたしとしばらくおしゃべりしたわ。それから30分ぐらい経ったころかしら? おばあさんが『そろそろお帰り。食事はテーブルの上に置いていけばいいから』って言ったから、その通りにして出てったわ。ちゃんと扉もしっかり閉めたのよ。


 ......本当に残念だわ。まさかおばあさんが、あんなことになるなんて」



●赤ずきんの母|(村の仕立て屋:被害者の娘)


「......はい、私は3日ほど前から編み物の依頼があったので、ずっと家に引き篭もって仕事をしておりました。徹夜で四六時中作業して忙しかったので、昨日のお昼の1時ごろに、代わりに娘の赤ずきんに私の母へ食事を届けてもらいました。


 母は1ヶ月ほど前から体の具合が悪くなり、村のお医者さまに診察してもらっても、原因がわからないと言われました。それで母は家族に迷惑をかけたくないからといって、昔住んでいた村はずれの家に住むようになったのです。


 けれど母はそれから寝たきりになってしまい、ずっとわたしが定期的に家に訪れては看病する日々を送っていました。


 ですがまさかあんな最期を迎えるなんて......。


 えっ? 他に何か変わったことはなかったかですって? いえ、特に変わったことはなかったと思いますが......」




 さて、3人の証言を聞き終えると、刑事は4つの奇妙な点に気づいた。

読者のあなたは3人の証言の中の矛盾に気づけただろうか?


 

 次のエピソードに移る前に、是非この問題に挑戦してほしい。

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