99.魔剣
「そういや気になってたことがあったんだ。」
ベッドで寝転がっていたエルドが体を起こしながら言う。マリーはグローブの縫い合わせの手は止めなかったがモイラは魔剣ヒーリングを拭く手を止める。
「モイラは魔剣ヒーリングと対話が出来るの?」
それを聞いてマリーは手を止めてモイラを見た。モイラはそんなことかとヒーリングを拭くのを再開する。
「そうね。私はこの子と対話できるわ。そうじゃなきゃ魔剣同士の魔力の受け渡しなんかできるなんて思わないもの。」
「やっぱそうなんだ。じゃあテンペラやメテオも対話できるのか?」
「…いえ、それは無理みたい。」
モイラがヒーリングを拭く手を止める。
「そうなの?」
マリーが聞く。
「ええ、この子がそう言ってる。でもあなたと他の二つと何が違うの?」
モイラは優しくヒーリングを撫でる。
「え…それってどういう…黙っちゃった…」
モイラは困惑しながら2人を見る。
「自分は最初に作られたから意識が残ってるって言ってるんだけど、それってどういう事だろう…」
「…元々意識のあるものを使って造られたってこと…としか思えないよね。」
自分から聞いておいてなんではあるが、エルドはこれ以上詳細を聞くのが怖くなった。それはマリーもモイラも同じだったのかそれ以上口を開かない。
しばらくの沈黙の後マリーがグローブを完成させて手にはめた。
「よし、いいかんじ。」
両手にグローブをはめて手を閉じたり開いたりしてフィット感を確認している。
「エルド、魔法陣がちゃんとできてるか確認したいから明日付き合ってくれない?」
「別にいいよ。じゃあ久しぶりに中央ギルドに行くか。あそこの訓練場なら空いてるでしょ。」
「ねえねえ。私も一緒に行っていい?」
モイラがマリーに聞く。
「それはもちろん構わないわよ。」
「一度マリーの攻撃を受けてみたいから私もマリーの相手してみたかったの。」
「え?死ぬ気?」
モイラの言葉にエルドが呟く。
「私とこの子の結界魔法がどれくらいの強度か確認したいの。マリーならかなり強い攻撃を放ってくれるでしょ?」
「ああそういう…いやいや、それでも危ないと思うんだけど。」
エルドは一度納得しかけたが、かなり危ないことをやろうとしているのを黙って見逃すことはできない。
「大丈夫大丈夫。まずエルドが受けるのを見るし、いきなり最大火力で攻撃してだなんて思ってないから。」
モイラは笑いながら言う。
エルドとマリーは顔を見合わせ、あまり危なくないようにやるしかないなと頷き合った。
日も沈み3人が夕食を食べに行こうと部屋を出るとちょうどトランクを持ってきてくれた男性がそこにいた。どうやら着払いの代金を受け取りに来たようだ。エルドは財布を出し男性に代金を支払い、3人はそのまま外食に向かった。
その後モイラがマリーの眼鏡と同じものを探すと言って10件ほどはしごしたが見つけることが出来なかった。